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【私説・論説室から】

2016年12月23日 | Weblog

【私説・論説室から】

事実を記録する大切さ

 新聞が事実を記録することの大切さは分かっていたつもりだったが、あらためて痛感した。年末に予定されている安倍晋三首相の米ハワイ真珠湾訪問が、現職首相として初めてかどうかについて、である。

 結論から言えば、一九五一年に吉田茂首相の訪問例があり、安倍首相が初めてではないのだが、当初は本紙を含めて、政府の説明に沿って「現職首相が真珠湾を訪問するのは安倍首相が初めて」と報じていた。

 廃棄したのか、外務省にも詳細な記録が残っていないようで、菅義偉官房長官が吉田首相の訪問を確認したのは「当時の報道などの資料」。当時の報道がなければ、安倍首相こそ初めて真珠湾を訪問した現職首相かのように、歴史が「改変」されていたに違いない。

 本社はどう報じていたのか。同年九月十三日発行の「夕刊中部日本新聞」は、吉田首相が十二日午前「全権団および随員一行とともに約二十分にわたって真珠湾一帯を視察、十年前日本海空軍の奇襲攻撃の犠牲となった米陸海軍将兵の霊に心からの祈りをささげた」と報じていた。真珠湾を見下ろす米海軍司令部を非公式に訪問したのはその後だ。

 ほかの全国紙と比べても、最も詳細に報じている。新聞報道が第一級の歴史的史料となる好例だ。吉田首相ら一行の行動記録を克明に本社に送り続けたのは、ホノルル通信員の泉さん。ただ感謝、である。 (豊田洋一)


今日の筆洗

2016年12月23日 | Weblog

 先週の水曜日の夜、パリでちょっとした異変が起きた。今の季節なら、美しく輝くクリスマスツリーのように花の都を彩るエッフェル塔の照明が消され、塔は闇に沈んだのだ▼五年余も続くシリア内戦で、激戦の地となったアレッポ。街の灯が消え、恐怖にさいなまれながら、逃げることもできない。そんな中東の古都の住民に、思いを寄せるための消灯である▼歴史の歯車が少しずれて回れば、パリは現在のアレッポのように、廃虚になるところだった。第二次世界大戦中、ヒトラーは連合軍のパリ進攻を前に、その徹底的な破壊を命じた。凱旋(がいせん)門もエッフェル塔も、爆破される計画だったが、パリは救われた▼この史実を題材にした映画『パリよ、永遠に』で、中立国スウェーデンの外交官は、エッフェル塔を望む部屋で、ドイツ軍の司令官を静かな口調で、説得する。「破壊する将軍は多いが、何かを築ける者は少ない。パリの存続は君次第だ。征服者と同じぐらいの名誉に値すると思うがね」▼ここ一週間で、アレッポから数万人が脱出したとされる。しかし、人々を待っているのは、飢えや寒さだ。国連UNHCR協会(電話0120-540-732)や国境なき医師団日本(0120-999-199)は、緊急支援のための寄付を呼び掛けている▼何かを確かに築くため、遠い日本からでもできることはあるはずだ。