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「タイラとアヤコ」7

2017年06月27日 | T.B.1961年
「失礼しました」

その日、タイラは村長に呼び出されていた。

何をしでかしたんだ、と
散々家族に問い詰められたが
それはタイラ自身が一番知りたい。

部屋を退室しても
その謎が解けずに首を捻る。

尋ねられたのは
以前、北一族の村に行った時の事。

変わったことが無かったかと訊かれ
思い当たることは話したが
もういい、と帰された。

「売上金が、減っていた、とか?」

疑われているのなら嫌だなぁ、と
モヤモヤした気持ちで歩く。

「おい、タイラ」

そんな時に声がかかる。

「……アマネ」

一緒に、北一族の市場に行ったメンバーだ。
アマネはタイラより先に呼ばれていた。
その事について話したくて
出てくる人を待っていたのだろう。

「お前何か訊かれたか?」
「それが、さっぱりで」

訳分からん、と
タイラは自分が訊かれたこと
答えたことを話す。

「まぁ。
 タイラは違うって思われたんだろう。
 安心しろ」
「違う?」

アマネは辺りを見回しながら言う。
彼は、タイラ以上に
何かを聴いている。

北一族の市場に行ったあの時。

「東一族が死んだと」

「……死んだ?」

北一族の村には各地から人が集う。
東一族も沢山居たはずだ。

少しだけ会話を交わした東一族。

違うと良いけど、と思い
その事は村長には話していないと気づく。

「まずかったか?」
「何が?」
「あ、いや」

なんでもない、と
タイラは話を戻す。
多分、関係の無い事だ。

「東一族のやつらは
 犯人が西一族だ、と
 そう言っているらしい」
「そんな、言いがかりだ」
「でも」

タイミングが悪かった。

「よりにもよって
 俺達が北一族の村に居た日に」
「疑われているのか?」
「そうかもしれない。
 村長も何を知っていて
 何を聞き出したいのか分からないが」

売上金に手を付けた、どころの話ではない。

どちらにせよ、とアマネが言う。

「ますます
 東一族との関係が悪化するだろうな」

「争いが、起きるのか」

「今回の件が落ち着いても
 別の何かがきっかけでいずれ起きるさ。
 早いか遅いか、それだけだ」

西一族と東一族は
そんなものだ、と。



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