TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「水辺よもやま話」

2020年12月08日 | 物語

人々が目覚め始め、
早い者はもう仕事に出掛ける時間。
圭はまだ夢の中。

僅かな稼ぎである西一族の民芸品を作っていて
昨日は遅くまで作業をしていた。

どうせ眠りを妨げる人も
遅い、と起こしに来る人も居ない。

意識は僅かに目覚めているが
体はまだ起きようとしていない。

誰が困るわけでもない。

もう少しこのまま。

このまま、ずっと、と
そんな時。

「ねぇ、外は良いお天気よ。
 寝ているのは勿体ないわ」

誰かに起こされるような感覚。

夢半ばの圭は、
それじゃあ仕方無いなと体を伸ばし
ゆっくりと起き上がる。

「………んん」

窓から差し込む光に

なるほど、
確かに今日は良い天気になりそうだ。

そう返事をしかけて気がつく。

今の自分を
起こしに来る人など居ないのに。

「夢、か」

あたりを見回して、
いつもなら少し虚しくなるけれど、

なぜか空気は澄んでいて、
急にお腹も空いてきて、
天気が良いなら
洗濯物もたくさん干そう、という気分もして。

そして、
本当に今まで誰かがそこに居て
圭の目覚めを待ってくれていたかの様な感覚。

「…………」

なぜそんな感覚がするのだろう、と
少し首を捻る。

今日は何かの節目の日だっただろうか。
思い出せないが
そうなのかもしれない。

出会った日だったか。
それとも
初めて手を繋いだとか、
逆に、口も聞かない大げんかをした、とか。

もしかしたら、
色々な困難が多かった自分達が

何事も無く、ゆっくりと、
心穏やかに過ごせた何気ない一日が
いつかの今日だったのかもしれない。

「ああ」

色んな事があったけれど、
きっとそう言う日もあった。

圭はベッドから這い出て、
もう今は居ない誰かに呟く。


「おはよう
 今日は、いい一日になりそうだ」



「マジダとモモヤとアヅチ」

2017年12月26日 | 物語

「………そう言えば、
 そういう事もあったわね」

ふ、とマジダが言う。

「いや、いやいやいや
 マジダ」

と、弟のモモヤがツッコミを入れる。

「急に前回の続きです風に
 言われても!!」

そこは、南一族、マジダの実家。
美味しい料理と飲み物が並ぶ
年末前の親族一同の集い。

の、準備中。

「大体、お前今、
 あちこち出演しているから、
 どの流れ??って思うだろ」

そうだぞ、姉貴と
下の弟も続く。

「本館?別館?
 このシリーズか??」
「アヅチはちょっと静かに!!
 本館とか言っちゃダメぇええ!!」
「兄貴も出演とか言ってたじゃんか」

騒がしい弟達に
何を言っているのよ、と
マジダが言う。

「すべての流れに置いて、
 に、決まっているじゃない!!」
「おお」
「すべてを統べる者、マジダっ!!」
「次期村長候補!!」

はいはい~、と
母親のヤヨイが通る。

「みんな、奥のお皿も運んでちょうだい」

おっといけない、と
三人が立ち上がる。

「ごちそうだな母さん」
「そうよう。
 今日はせっかく皆さんが我が家に集まるのだから
 おもてなししなきゃ」
「あれ?父さんは??」

「アスカくんはね」

ほら、あそこよ!!と
ヤヨイが
もう肌寒さもある庭を示す。

「ハイっ!!セイっ!!
 テヤアアアアアアア!!」

「あそこで、お客様用の魚を
 捌いているわ。
 刺身盛りを作っているのよ」

あれは、刺身を捌く時に
出る声だろうか?と思いつつ。

「刺身、って他の一族は食べるのだっけ?」
「まぁ東一族は食べるんじゃない?」
「西の人は、生魚食べないって言うよね」
「その時は私達が食べるのよ」

ところで、と
モモヤ。

「おい、アヅチ
 マツバはどうしたんだ?」
「もう来るんじゃないのか。
 一度実家に寄って、
 親を連れてくるとかなんとか」
「そうか、結構今回、初顔合わせ多いよな」
「………初?だよな?」
「えぇえまさか、
 他の所でお互い顔見知りとか、
 あるわけ」
「あるわけ無いよな」

「そこ、無駄話しない!!」

お皿を2つ重ね、
そこにグラスを置きながら、マジダが言う。

へーい、はーい、と
仕度を進める声を庭で聴きながら
頭を抱えるアスカの助手(臨時)。

「お、刺身捌き助手どうした!!」
「いえ、なんでも」
「気になることは言っておくんだぞ、
 助手もとい婿殿!!」
「……婿殿言うのやめて」

いやぁ、と
彼は呟く。

「そう言えば、
 そんな事あったなぁって」

「なんだ急に
 前回の続きみたいに!!!!??」


T.B.????

南一族の村で
少し先のお話