TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

2018年末

2018年12月28日 | イラスト





2018年

今年の目標は、新作2作品!でしたが
新作は1作品のみの掲載でした~(^^;

でも「山一族と海一族」が無事に完結したので、よしとします!

来年も引き続き
新作2作品の掲載を目指します!

が、ん、ばるぞ!!


イラストは、戌年のヨツバ。

水辺ノ世界に干支があるのかはさておき(笑)


来年も、TOBAをよろしくお願いいたします。




TOBA by ばしょ&ともえ

「律葉と秋葉と潤と響」16

2018年12月25日 | T.B.2024年

その日、狩りを終えても
律葉達はそのまま広場に残り続ける。

「結構冷えてきたね」
「秋葉、大丈夫?
 こっちにおいでよ」

律葉はたき火の側に
秋葉を呼ぶ。

「今日はもう一枚上着が必要だったなぁ」
「ねえ」

さむさむ、と言いながら
響も帰ってくる。

「報告ありがとう」
「もうそろそろ
 全員揃うみたいだよ」

最後の班が帰ってくるまで。

他の皆もどこか落ち着かないように
そわそわとしている。

その最後の班も
狩りを無事に終え、
進行役に今日の成果を報告する。

「よし」

記録を付けた進行役は
冊子を閉じると
広場に集まった皆を見渡す。

「今年の狩りはこれで終了。
 みんなお疲れ様」

わぁ、と
広場に安堵の声が小さく広がる。

冷え込む時期になると
獲物である動物達は
山奥に籠もってしまう。

それに併せて
狩りもしばらくお休みとなる。

その日だけ準備されるスープを
皆で飲みながら
一年の狩りの成果をねぎらう。

「昔はこう言うの無かったんだって」
「そうなの?」
「北一族から入って来た
 行事だろうって父さんが」

言うこといちいち古くさいのよ、と
律葉は困った様に言う。

ふふふ、と笑いながら
秋葉は続ける。

「でも、こういう行事なら
 どんどんやって欲しいよね」
「十年後ぐらいには
 もっと盛大なイベントになっていたりして」

感謝祭とか言って、
みんなでケーキ食べたり、
チキン食べたり。

「なにそれ響。
 それじゃあ年越しも近いのに
 何度もごちそうになるじゃない」
「お祝いは何回あっても
 いいと思うけどな」

そうだ、と秋葉は2人へと向き直す。

「律葉、響」
「うん?」
「なあに?」

温かくなるまで
暫く狩りは行われないが、

「時々、遊びに行ってもいいかな?」

「もちろん」
「ウチにも遊びに来てね」

「俺は秋葉の家、結構入り浸ると思うけどな。
 律葉もおいでよ」

兄さんの家だし、と響が律葉を誘う。

「そうね、折角だから。
 私達だけでお疲れ様会をしない?
 さっき響が言っていた様に食べ物を持ち寄って」
「わぁすてき。
 わたし、なにを準備しよう!!」
「それなら、我が家でしてもいいわね。
 私、ベーコンポテトとか作るわよ」
「律葉の家!?
 行きたい!!!」
「年明けたら、
 潤も帰ってくるよ」
「そうなの!?」

「お疲れ様会と
 おかえりなさい会だね」

不思議だな、と律葉は思う。

班が同じで無ければ
彼らと話すことも無かっただろう。

それがこうやって
狩り以外の時でも
会おうと約束をしている。

班の采配なんて、
偶然の巡り合わせ。

でも。

「秋葉と響と、潤と
 皆と同じ班で良かったわ」

また、会うのだろうけど
一つの区切りとして
律葉は2人に声をかける。

「今年はお疲れ様。
 来年も、よろしくね」


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「涼と誠治」25

2018年12月21日 | T.B.2019年


「今日の狩りは、長居は出来ないな」
 その言葉に、もうひとりが頷く。
「雨が降るわね」
「遠出はやめるか」

 涼がひとりで狩りをした日から、しばらく。
 また、狩りに出ることになる。

 けれども、空の雲行きは怪しい。

 涼も、判ったと頷く。

「いや、」

 と、そこで狩りの班長、誠治が声を出す。

「ぎりぎりまで、獲物は追うぞ」
「え?」

 狩りの班は顔を見合わせる。

「誠治、危険だわ」
「そうだ。ある程度で引き返そう」
「大丈夫だって!」

 誠治は首を振る。

 涼はその様子を見る。
 不安に思うふたりと違い、誠治は長く狩りをするつもりなのだ。

「さあ、山に入るぞ」

 納得がいかないふたりをよそ目に、誠治は荷物を持つ。

「今の時期は、食糧が足りないからな!」
「そうだけど……」
「雨が降ったらすぐに中止しよう?」
「判ってるって!」

 狩りの班は、山へと入る。

 連日の雨。

 4人は、足場の悪い道を歩く。

 途中から、道がなくなる。
 背の高い草が生い茂っている。

「天気も怪しいのに、この先は無理じゃない?」
「誰も近寄ってないぞ、こりゃ」
 誠治が首を振る。
「だからこそ、この先の獲物は油断をしているだろ?」
「まあ、……」
「そうだろうけど……」

 誠治は草をかき分け、進み出す。

 ほかのふたりは息を吐く。
 それに、続く。

 涼は一番後ろを歩く。

「近くにいるか?」
「いる」
「武器は持っているわ」
「油断するな」

 なるべく音を出さないように、進む。

 誠治はひとりで先を歩く。

 草だらけの道。
 途中途中で、帰りの目印を付ける。

 4人とは違うところから草木の揺れる音。

 やがて

 山間の川へとたどり着く。

 川は大きい。
 真ん中は深く、流れが速くなっている。
 川岸は、石場になっている。
 大きな岩が転がっており、身を隠すことも出来る。

 武器を持つ。

 4人は二手に分かれる。

 手慣れたように、狩りをする。
 獲物を捕る。

 そんなに大きくはないが
 それでも、短時間で十分な量。

「もう、いいだろう、誠治」

 遠くの空から音がする。

「降り出す前に下りはじめましょう」

 ふたりは支度をはじめる。

「まだだ」

「誠治!」
「何を云うの」

「ここで待ってろ」

 誠治は走り出す。

「ちょっと!」
「おい誠治!」

 誠治の姿はあっと云う間に、消える。

「おい!」
「誠治ったら!」

 …………。

 …………。

「誠治……」

 取り残された3人は、その場に立ち尽くす。

「この獲物じゃ足りないのかしら?」
「他のやつより秀でていたいんだ、誠治は」
「でも、……何だか落ち着かなかったわね」
「心配だな」
「どうしましょう?」

 ふたりは、涼を見る。

 でも、涼と視線は合わない。

 涼が云う。

「降り出したら、山を下りよう」
「ええ」
「そうだな」

 涼は頷く。

「俺は、誠治を追う」

「え?」
「でも」

「降り出したら、ふたりで先に下りてくれ」
「ひとりは危険だって!」
「大丈夫」

 涼が云う。

「誠治を連れて、すぐに行く」



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「律葉と秋葉と潤と響」15

2018年12月18日 | T.B.2024年

「はい、休憩~」

セナの声に
律葉は安堵のため息を吐く。

「十五分程休んでおけよ」
「セナさん、どっか行くの?」

あれ?と問いかける響に
セナは答える。

「俺は自分の腕ならしに」

すぐ戻るから、と
更に奥へと向かっていく。

響と律葉のペースに合わせていては
彼はいつも通りに狩りが出来ないと言う事。

「はー、緊張した」

律葉は響にお茶を差し出す。

「響は慣れたものじゃないの?」

なんたって、
彼から狩りを教わったのだから。

「慣れないよ。
 いつまでたっても
 セナさん凄いな~ってばっかり」
「確かにね、あの腕なら」
「本当に凄いんだ。
 逸れたと思った矢も
 必ず命中させるんだ」

矢を放つ時の
ひねり方とかあるのだろうけど、と
響は話す。

「まるで、魔法みたいっていうか」
「………へえ」

それはそれは、と律葉は答える。

「魔法、使えたら良いわよね。
 私達西一族も」
「そうだね。
 まぁそれはそれ、これはこれだけど」

水辺を囲む八つの一族。
その中で唯一魔法を使わない西一族。

「私達の自慢は狩りの腕なのだから、
 それを磨くしかないわ」
「律葉は真面目だねぇ」

む、と響の言葉に少し引っかかるが、
潤との事もある。
いちいち気にしないようにしよう、と
律葉は言葉を飲み込む。

「それにしても、
 響って英才教育よね」

基本的には狩りは親から、兄弟から習う物だ。
わざわざ先生を付けるというのは
あまり見られない。

さすが村長の息子と言った所か。

「ウチは、父さんが忙しくて」
「………村長だから、仕方無いわよ」
「本当は兄さんから習いたかったのだけど
 流派が違うから
 きちんとした人に習った方が良いってさ」

律葉は片親だが
忙しいながらも狩りは父親から習った。

響は確かに恵まれている。
全ての事を専門的に指導され、
本人にもそれを活かせるだけの能力がある。

性格も穏やかで、
自分の立場を鼻にかける事も無い。

きっと

そういう風に育てられた。
村長の息子として恥ずかしくないように。

「大変、よね」

自分ならば息苦しくて
投げ出してしまいそうだ、と律葉は思う。

英才教育だなんだと
言ってしまった事を訂正したい、と
バツが悪くなる。

「うーん。
 多分、律葉が思っている程
 真面目にしている訳でも無いんだけど」
「そうかなぁ」
「手抜きも多いし」
「……当たり前よ」
「村長の息子で得している部分もある」
「それなら良いけど」
「今、結構楽しいよ」
「そうなの?」

「うん。
 これから、やりたい事も沢山あるし、
 考えるとワクワクする」

「??」

「よし、それじゃあ。
 続き始めるぞ」

そこでセナが戻ってきたので
話はそれでおしまい。

「え、セナさん。
 あの時間で1匹仕留めたの!?」

響がセナに駆け寄る。
律葉もさてと、と立ち上がり後を追う。


本人が苦に思っていないならそれで良い。

けれど、

こんな立場投げ出したいと
言ってくれた方が良かった。

そう言って欲しかったと
律葉は思う。


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「琴葉と紅葉」29

2018年12月14日 | T.B.2019年

 琴葉は家のことを済ませる。

 機嫌よく、歌を口ずさむ。
 彼はいない。

 部屋の隅の棚を拭こうと、布を持つ。
 そこには、西一族の村では見慣れないものが並ぶ。
 外で働く父親からのおみやげ。

 谷一族の工芸品。
 南一族の工芸品。
 海一族の工芸品。

「ん?」

 琴葉は、一番手前にあるものを手に取る。

「何これ?」

 丸い、輪っか。
 こんなもの、あっただろうか。

「腕にはめるのかしら?」

 その縁には、模様が彫られている。
 何か文字も彫ってあるが、読めない。

 旧ぼけてはいるが、高価そうなもの。

「…………?」

 琴葉は考える。

 いや、これははじめて見るものだ。
 しかも、西一族のものではない。
 いつの間にか、父親が持ってきたのだろうか?

 でも、彼がここに住むようになってから、琴葉は父親に会っていない。

「変なの」

 琴葉は元に戻す。

 彼が帰ってきたら、一応訊いてみよう。

 琴葉は棚を拭き上げると、外を見る。

「お、雨降ってない!」

 琴葉は再度歌う。

 外へと出る。
 曇り空。

 足を引きずりながら、歩く。

 小さな市場で、芋を仕入れる。

 長雨で、食糧も育ちが悪い。
 細い芋だが、琴葉はそれを持つ。

 市場の者が何かを云う。

 どうせ
 狩りに行かず、ふらふらしている自分への嫌みだ。

 琴葉は聞かない。

 病院へと向かう。

「あら、何それ」

「芋」

「芋?」

 母親が首を傾げる。

「ここに置いておいて」
「どうするの?」
「明日、芋を焼こうと思って」
「あら、いいわね」
「いいでしょ」
「家に運ぼうか?」
「大丈夫」

 母親が訊く。

「お肉はあるの?」
「あるよ」

 琴葉は云う。

「でも、肉食べるの私だけだし」
「そうね」
「だから、芋を買ってきたのよ」
「へえ」

 母親は窓を見る。

 雨は降っていない。

「天気、保つかしら」
「平気よ」

 じゃあ、と、琴葉は手を上げる。

「明日、取りに来るわ」

 けれども、

 そのあと

 雨が降り出す。



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