TOBA-BLOG 別館

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「タイラとアヤコ」1

2017年05月16日 | T.B.1961年


「ただいま」

帰宅したタイラをアヤコは出迎える。

「おかえり~」
「はい、今日の取り分」
「お疲れ様」

疲れた、と言いながら
タイラは席に着かず、
狩りで使用した道具を持って裏手に回る。

洗って、磨いて、
道具は手入れをしてから仕舞う。

一通りの作業を行う背中に
ふふっと
思わず漏れた笑い声が届く。

「どうした、アヤコ?」

振り返ると窓からアヤコが
こちらを覗いている。

「姉ちゃん、でしょ」
「どっちでも一緒だろ」
「一緒じゃないわよ、ちょっと違う」

それで、と続ける。

「何か良いことあった?」
「……なんで?」
「鼻歌」
「え?マジ!?」

どうやら無意識に歌っていたらしい。

「今日、ニコと同じ班だった」

タイラは若者の間で人気の
彼女の名を挙げる。
狩りの班分けはその時の指示役が決めるので
運任せな所がある。

「そうなの?
 良かったね~」

「なんか、良い香りした」

今日は良いことありそう、と
タイラが言うが、もう昼を回っている。

彼女はとても素敵だが、
タイラは別に恋人になりたいとは思わない。
今日は同じ班になれて良かった。それだけ。

自分に相手がつとまる訳では無い。
相応しい人がいる。

自分たちは、
特別狩りが上手い訳では無く、
かといって、狩りに行けないほど体が弱い訳でも無い。
中途半端。
位置付けると中の下。
頑張って、真ん中に居れられるかどうか。

「俺達みたいな平凡な奴は
 何事も無く一生を終えるんだろうな」
「あら、みんなそうよ。
 飛び抜けた人達が目立っているだけ」

沢山いる。村人その一。

「タイラって名前からして、なぁ」

平凡の平だし。と
皮肉って笑うタイラにアヤコが返す。

「何言ってるの、
 特別な事なんて
 なにもないのがいいの。
 普通が一番じゃない」

なる程ねぇ、とタイラが答える。

「今日はやけに
 姉っぽいことを言うな」
「そりゃそうよ、姉だもの」


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