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オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「海一族と山一族」32

2018年01月30日 | T.B.1998年


突然の爆発が起こる。

裏一族の魔法。

「―――っ!!」

それを防ぐように
トーマ達の前に陣が現れる。

「アキラ」

山一族が使う紋章術。

だが、それも上手く相殺は出来ない。
アキラが叫ぶ。

「視界を奪われるぞ!!」

その言葉にトーマは目を覆う。
辺りに白煙が立ちこめる。

「相手は他一族の紋章術だ。
 山一族式では、
 相殺が難しい」
「無理、か」
「あちらが強力すぎる」

トーマは短剣を取り出す。

「離れよう」

それならば標的は分散した方がよい。
ふたりまとめて仕留められては意味がない。

「このままでは
 カオリにも戦いの被害が及ぶ」
「分かっている」

アキラが頷く。

「山一族式でも
 対抗出来ないわけじゃない」
「出来るのか?」
「大丈夫だ。
 トーマは、カオリのもとへ行けるか?」
「やってみる」

海一族は限られた一部の者しか
魔術を使用しないので
魔法に関してはアキラに任せるしかない。

ふたりは同時に走り出す。

「まぁまぁ、待てよ」
「悪あがきはみっともないぞ」

トーマの元へ来た裏一族はふたり。
海一族、西一族の格好をした者。

カオリの元に走り寄ろうとするトーマに
すぐに追いついてくる。

「生け贄には触れさせない」
「そいつを取り押さえろ」

ふたりに囲まれながら
トーマは短剣を構える。
2対1の接近戦となる。

「あちらは、魔法が使えるようだが
 お前はどうだ!?」
「言葉を返すぞ、西の裏一族」

どうやら魔法に長ける者は
アキラの側に回ったらしい。

右から左から
それぞれに攻撃が飛んでくる。

「魔法が使えない同士
 仲良くしようじゃないか」
「断る!!」

トーマの蹴りが、西一族の格好をした裏一族にきまる。

「おまえ!!」

逆上した海の裏一族の剣先を防ぐ為
トーマは自身の短剣を手放す。

「「………っ!!!」」

相手の手首を掴み、揉み合いとなる。

「っく、力はこちらの方が」
「その方が助かる」
「は?」

裏一族が体重を掛けてきた所で、
一気に後ずさる。

「なに!?」

バランスを崩したその瞬間に
手首を掴んだまま前に引きずり倒す。

海一族の護身術。

「俺は、剣術より
 こっちの方が得意なんだ」
「……このっ」

裏一族は腕を押さえて蹲る。
曲がらない方向に曲げたのだ
そうなるだろう。

と、

足元に魔法の陣が広がる。
元々の物とは違う新しい線。

「アキラか」

トーマはその場から離れる。

「待て、この」

魔法が発動して光り出す。
それを背に、トーマはカオリの元に駆け出す。


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「山一族と海一族」35

2018年01月26日 | T.B.1998年

 裏一族の魔法。

 爆発。

「――――!!!」

 とっさに、アキラは陣を張る。

 山一族式紋章術。

 相殺。

 が、出来ない。

「視界を奪われるぞ!!」

 その言葉に、トーマは目を覆う。

 白煙。

 ふたりは衝撃を耐える。

「相手は他一族式紋章術だ」

 背中越しに、アキラが云う。

「山一族式では、相殺出来ない」
「無理か」
「強力過ぎる」

 トーマは、短剣を取り出す。

「お互い離れよう」

 強力な魔法なら、ふたりともやられる可能性がある。

「気を失っているカオリにも被害が」
「判っている」

 アキラは頷く。

「山一族式でも対抗出来ないわけじゃない」
 云う。
「いくつか陣を張ってみる」
「出来るのか?」
「大丈夫だ。トーマは、カオリのもとへ行けるか?」
「やってみる」

 ふたりは、同時に走り出す。

「別行動か。感がいいな」
「こちらは東一族式だ」
「生け贄を奪われるなよ!」
「海を押さえろ!!」

 裏一族も動く。

 アキラのもとへ、ふたり。
 山一族の格好をした者と、東一族の格好をした者。

「2対1だ」

 東一族の格好をした裏一族が、前に出る。

 アキラは、自身の弓を握る。
「紋章術……」
 相手の手の動きをよく見る。

 先ほどの紋章術からするに
 自身の紋章術では、単純に対抗出来ない。

 裏一族が指を差す。

「お前も、矢に毒を塗っているのか」
「何を云う!」

 アキラは矢を放つ。

 裏一族をかすめる。

「矢が得意なら、」

 裏一族が云う。

「お前の視界を奪うのが、手っ取り早い」

 ――光。

 背を向け、アキラは走る。
 強力な光を見れば、目は効かなくなる。
 
 その背に、もうひとりの裏一族が矢を放ってくる。

「気を付けろよ!」

「――っっ!!」

 アキラは走る。

 毒の矢が飛んでくる。

「逃げてばかりだな!」

 面白そうに、山と東の裏一族が笑う。

 アキラは矢を避ける。
 裏一族を見る。

 裏一族に、強力な魔法を使われたくはない。

「弓で勝負するのか! 魔法で勝負するのか!?」

 再度、矢。

 アキラは走る。

「終わらせよう」
 裏一族が云う。
「俺たちもこれ以上、力の消費は不要だ」
 もうひとりも頷く。

「見ろよ。これが東一族式、」

「いや、その前に……」

 アキラは肩で息をしながら、云う。

「お前、東一族式と云いながら、東一族出身じゃないだろう」
「…………!?」
「何を云う!?」

「東一族の出身なら、もっと戦えるはずだ」

 アキラは地面を見る。

 そこに

「紋章術の陣!?」
「まさか、逃げ回りながら!?」

「これぐらい、気付けないのか」

 大きく描かれた、紋章術の陣。

「さっき入り口で見た陣よりかは小さいだろうが、」
 アキラは云う。
「お前らは捕えてある」

「くっ!!」
「何を!!」

 紋章術の陣が光る。

 裏一族は倒れる。



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「海一族と山一族」31

2018年01月23日 | T.B.1998年

「トーマ、右だ!!」

アキラの声にトーマは振り向く。

「っつ!!」

飛んできた矢が
トーマをかすめる。

見ると山一族の格好をした裏一族が
弓を握っている。

「気をつけろよ」

その裏一族が笑いながら忠告する。

「矢に毒を塗っておいたからな」

毒?と
アキラが目を細める。

「まさか、そんな事を」
「本当だ」

裏一族は矢をつがえる。

「砂一族特製の、な」

「砂」
「一族」

薬、とりわけ毒薬の製薬に関しては
右に出る者は居ないと言われる砂漠の一族。

「まぁ正確には
 元砂一族だけど」

声と共に
矢が降り注ぐ。

トーマとアキラは
それをなんとかかいくぐる。

「詳細を知られたんだ」
「生きて帰す訳、無いだろう」

だよなぁ、と
余裕を含ませて話す裏一族達に
トーマ達は息を呑む。

「安心しろ」
「お前達に関しては
 もっともらしい噂を流しておいてやる」

裏一族が
ふたりに近づいてくる。

「神隠しにあった、とか」
「永い旅に出た、とか」

永い旅。

トーマはふと思い出す。

以前、急に姿を消した者が居た。
それでも、誰も気に止めなかったのは、

―――あいつは旅に出たんだよ。
家の事情も色々ある奴だから。
思うところがあったんだろう。

なら、仕方無い。

そう思ったのだ。

込み入った事情なら、自分が口出しは出来ない。
詮索するのも野暮だろう。

自分だけではない。
大半の村人がそう思ったはずだ。

誰がそう言い出したのか
今となっては思い出せない。

が。

その当人は今戻ってきている。
それが
裏一族が儀式を急ぐ理由?

はたまた、
裏一族を仕切る者が
倒れでもしたのだろうか。

「それに、しても」

一族のふりをして
裏一族が見えないところで
事態をかき回していたと思うと
良い気分にはなれない。
戻ったら確認しないといけない事は
たくさんある。

だが

「アキラ」

背中合わせに立っているアキラに
トーマは声を掛ける。

「砂一族の毒は危険だ」
まずはこの状況を切り抜けねば。
「かすめただけでも、命取り、か」

砂一族の毒は
死すら許されない苦しみの毒だと言われている。

「つがえた矢の向きをよく見ろ」

アキラの言葉に
トーマは頷く。

「風は無い。避けられる」


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「山一族と海一族」34

2018年01月19日 | T.B.1998年

「トーマ右だ!」

 アキラが叫ぶ。

 トーマが振り向く。

 何かが飛んでくる。

 矢。

「――っうう!!」

 トーマを、矢がかすめる。

 山一族の格好をした裏一族が、弓を握っている。

「気を付けろよ」
 裏一族が笑う。
「矢に毒を塗っておいたからな」

「毒を?」

 アキラは目を細める。

「まさか、そんなことを」
「本当だ」

 裏一族は矢をつがえる。

「砂一族特製の、な」

「砂、」
「一族……」

「正確には、元砂一族!」

 さらに、矢。

 それらを、アキラとトーマは避ける。

「詳細を知られたんだ」
「生きては帰さない」

 アキラとトーマは息をのむ。

「安心しろ」
「お前たちの一族には、それなりの事情を流しておいてやる」

 裏一族が、ふたりに近付く。

「神隠しにあった、とか」
「永い旅に出た、とか」

 ふと

 消えた、ある山一族を、アキラは思い出す。

 そうだ。

 あのときも、誰かが云っていた。

 ――フタミの神隠しにあったんだと。

 だから、探す必要はないんじゃないか、と。

 そう、誰もが思っていた。

 それは、誰が云ったのか。
 どこから広まったのか。

 思い出せない。

 裏一族に連れ去られた、と、思われはじめたのは
 ずいぶんと経ってから、なのだ。

「あのときも・・・、そうか」

 アキラは呟く。

 裏一族が、そ知らぬふりをして、山一族に紛れ込み
 あらぬ情報を、流していたのだ。

 背中越しに、ふたりは立つ。

「砂一族の毒は危険だ」
 トーマの言葉に、アキラは頷く。
「かすめただけでも命とり、か」
「死すら許されない、苦しみの毒だと」

「つがえた矢の向きをよく見ろ」

 アキラが云う。

「風はない。避けられる」

 トーマは頷く。



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「海一族と山一族」30

2018年01月16日 | T.B.1998年

暗い森の中の開けた場所。
鬱そうと暗闇に
一筋の光が差し込んでいる。

滝が流れる水辺の側に
大きな石がある。
儀式に使われる神聖とされる場所。

そこに
カオリが横たわっている。

「カオリ!!」

アキラが呼びかけるが
反応は無い。

まさか。

「まぁ、落ち着け。
 まだ生きているよ」

カオリを連れ去った裏一族が
答える。
その姿はどう見ても海一族。

「まだ、だと」

「大丈夫だ。
 お前達も皆、
 同じく犠牲になるのだから」

そう答える別の裏一族は
山一族の格好をしている。

「こうやって、
 一族の中に入り込んでいるのか」

そこから、更に二人、
トーマとアキラの後ろから現れる。

四対二。

「いけるか?」
「やるしかないだろう」

その前に、と
トーマは問いかける。

「なぜ、お前達が
 俺達の儀式に関わっている。
 いつからだ!?」

「俺達の、儀式、だってさ」

裏一族はこらえきれず吹き出す。

「生け贄を横取りされたとでも
 思っているのか?」

そして、こう続ける。

「これは最初から
 裏一族のための
 裏一族が仕組んだ儀式だよ」

「死なない程度に
 毒を流すのも大変だったな」
「神がお怒りだと
 思わせるような自然な災いを起こすのもね」

そんな訳が、とアキラも言う。

「数十年に一度と
 続いてきた事だ!!
 それを仕組んだ、だと?」

簡単な事だ、と
裏一族は答える。

「数十年に一度の儀式だからだ。
 詳細を知るものは少ない」
「少しずつ、話しをすり替えていけば良い」

ほら、と
カオリを指し示す。

「自然と犠牲者がやって来てくれるから
 楽なものさ。
 どこかの村から攫ってくるより
 穏便で容易い」

「穏便、だと!?」

「だけど、今回は
 ちょっと待てなくてね」

裏一族達も
それぞれに武器を構えはじめる。

「手早く終わらせて貰うよ」


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