砂嵐が収まる。
辰樹は、そっと目を開く。
あたりは暗い。
「東はふたりじゃん」
砂一族が云う。
「砂もなめられたわー」
「宗主は来てないのか」
「来るわけないだろ!」
甲高い声で笑いながら、砂は話す。
辰樹と天樹がふたりだと判って、余裕。
天樹は辰樹を見る。
辰樹は頷く。
「おい!」
辰樹は声を上げる。
「東に毒を使ったな」
「おぉお」
「毒、ね」
「使ったけど」
「お前ら! 笑ってないで、浄化薬を出せ!」
辰樹の言葉に、おかしそうに砂一族は笑う。
「出せって」
「出すわけないじゃん!」
「おかしいー」
辰樹は、天樹を見る。
「来年、東の畑はどうなるのかなー」
「実験!」
「実験、実験!」
砂が動く。
天樹が叫ぶ。
「地点に気を付けろ!」
「判ってる!」
辰樹と天樹も動く。
「ひとり目っ!」
辰樹のすぐ後ろで、声。
辰樹は武器を握る。
そのまま、前へ。
辰樹の横を、矢が抜ける。
「うっ……!?」
辰樹の後ろの声は、倒れる。
天樹の矢が、打ち抜いている。
辰樹は走る。
「おい!」
「紋章術を使わせるな!」
「小さい方だ!」
砂は一斉に、針を投げる。
針の先には、砂一族特製の毒。
「お前か!?」
針を避け、辰樹はひとりの砂に当たる。
「俺かなー」
「浄化薬を持ってるのは」
「誰かなー」
「わっ!」
砂の針が、辰樹の腕をかすめる。
「危なっ!」
「ちっ」
「避けたか」
「おい、東の動きを止めろ!」
砂の魔法。
「神経毒だ! 伏せろ!」
爆発。
大量の砂が巻き上がる。
「おいおい、俺らも危ないじゃん」
「東は、どこ行った!?」
「探せっ……、て、うっ」
砂のひとりが倒れる。
砂埃の中、視界が悪い。
「どうした!」
「何があっ、……ぐっ」
「何だ何だ!?」
砂埃。
「!!?」
辰樹は、目をこらす。
天樹の方を見る。
天樹は、刀を握りなおす。
「お前ら、早く、浄化薬を出せ」
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