大槻雅章税理士事務所

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№159 相続税:広大地評価の更正の請求

2022-05-07 | ブログ
2022.5.7

相続した土地の評価額が最大65%減額される「広大地評価」は平成29年12月31日以前の相続に適用されていましたが、税制改正によって廃止されました。
ただし、平成29年12月31日までに広大地を相続し、広大地評価をせずに相続税を払ってしまった場合は、更正の請求をして相続税が還付される可能性があります。
更正の請求ができる期間は申告期限後5年以内(相続発生日から5年10か月以内)です。例えば平成29年12月31日に相続が発生した場合は、令和5年10月31日までが更正の請求期間となります。

1.広大地の評価

広大地とは、
①その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で(※1)
②都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行う(※2)とした場合に、公共公益的施設用地(※3)の負担が必要と認められる宅地をいいます。
③ただし、大規模工場用地(※4)に該当する宅地は該当しません。
④また、中高層の集合住宅等の敷地用地に適している宅地(※5)は除かれます。

(※1)
「著しく地積が広大な宅地」とは、
(1)市街化区域、非線引き都市化計画区域(次の(2)に該当するものを除く)
市街化区域 三大都市圏… 500㎡
市街化区域 それ以外の地域 … 1,000㎡
非線引き都市化計画区域… 3,000㎡
(2)用途地域が定められている非線引き都市化計画区域
市街化区域に準じた面積

ただし、上記の基準の広さであっても、周辺の宅地の標準的な面積がそれ以上の広さであれば広大地として認定されません。
(※2)
主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更を行うこと。
(※3)
道路、公園等の公共施設の用に供される土地および教育施設、医療施設等の公益的施設の用に供される土地のこと。
対象となる住宅分譲地内に出入りするための道路をつくらなければならないケースがあります。これが公共公益的施設用地の開発に該当する代表的な例です。
(※4)
一団の工場用地の地積が5万㎡以上のもの(路線価地域においては、大工場地区として定められた地域に所在するものに限る)。
ただし、工業地域や準工業地域に所在する工場用地で、実際に戸建ての分譲事例がある場合は広大地判定の対象となりえます。
(※5)
その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるもの。「中高層の集合住宅」とは原則として地上階数3以上のマンション等が該当します。

2. 路線価地域に所在する広大地の評価方法

広大地の価額=広大地の面する路線の路線価×広大地補正率(※6)×地積
(※6)広大地補正率=0.6-0.05×(広大地の地積÷1,000㎡)

(注1)
上記2の広大地の面する路線の路線価が2以上ある場合には、原則として、その広大地が面する路線の路線価のうち最も高いものとします。
(注2)
広大地として評価する宅地は、5,000㎡以下の地積とされるので、広大地補正率は0.35が下限となります(地積が5,000㎡超の広大地であっても、広大地補正率の下限である0.35を適用できます)。
(注3)
広大地補正率を適用して計算した価額が、その広大地を財産評価基本通達11(評価の方式)から21-2(倍率方式による評価)までおよび24-6(セットバックを必要とする宅地の評価)の定めにより評価した価額を上回る場合には、その広大地の価額は同通達11から21-2までおよび24-6の定めによって評価します。
(注4)広大地補正率は、端数処理を行いません。

3. 倍率地域に所在する広大地の評価

その広大地が標準的な間口距離および奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額を、上記2の算式の「広大地の面する路線の路線価」に置き換えて計算します。

次回は、広大地評価に代わって、平成30年1月1日以降の相続から適用されている「地積規模の大きな宅地の評価」について解説します。

(完)