新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

スペインのトランプ

2016年06月20日 | 日記

 スペインではトランプを買いたいとずっと思っていました。なかなか見つからずに苦労し、マドリッド滞在の最終日になってやっと見つかりました。デパートの文具売り場に並んでいるトランプはたいていイギリス、日本式の紋様のもので私が探していた古い紋様のものは1種類だけでした。

 4つの紋様は4つの社会階級を表します。

 スペード・・剣です。これは貴族、軍人を表します。剣はスペイン語でespadaといいます。英語のspadeと語源的につながることは明らかです。スペードのマークをよく見ると剣に見えてきます。

 クラブ・・・棍棒です。これは農民または労働者階級を表します。英和辞典でclubを引くと「棍棒」と「トランプのクラブつまり三つ葉」の意味が別項目で書いてありますが、これら二つの語釈はおなじところから派生したものです。棍棒のぶつぶつが三つ葉に変化したのかもしれません。

 ハート・・・聖盃です。聖職者、僧侶を表します。これがフランスで心臓のマークに簡略化され、イギリスに入ったようです。簡略化の理由は経済的なものでした。煩雑なマークを印刷するにはコストがかかります。

 ダイヤ・・・貨幣です。商人を表します。

 なお、このトランプはそれぞれ12までしかありません。絵柄は10から12までです。12がキングでクイーンはありません。なぜでしょうか。

 松田道弘「トランプものがたり」(岩波新書)にくわしく出ています。ドイツ、スイスのトランプ紋様もなかなか魅力的です。一読をおすすめします。









スペインへ行ってきました

2016年06月19日 | 日記

 スペインへ行ってきました。そのときの話を書いておきます。まずは面食らったこと、びっくりしたことを3つばかり。

 深夜に飛行機でマドリッド、バラハス空港に着いた。飛行機を降りてバッゲージクレームでスーツケースを受けとり、あとへは戻れないドアを出るとそこはもうタクシー乗り場だ。
「あれえ、パスポートチェックがなかった」
「しまった! 空港のどこかで経路を間違って、パスポートチェックを受けないまま来てしまった」
「このままではスペインへ密入国したことになり、出国のときに問題になるに決まっている」
 あせって、あちこちにいる制服姿の警備員やら腕章をまいた人に訊いてみても要領を得ない。インフォメーション嬢に訊いた。するとにこやかに教えてくれた。
「フランクフルトでパスポートに入国スタンプを押してあれば、おなじEU圏内なのでそれで十分です」
 という返事だった。たしかにフランクフルトの空港でパスポートチェックがあり、パスポートにスタンプを押してくれた。なぜこんなところでスタンプを押すのかと怪訝に思っていた。EU圏はひとつの国と思ってよいのだろう。私の不安はなんとか解消した。
 しかしまえにポルトガルへ入国したときにはロンドン経由だったが、ロンドンの空港でパスポートチェックがなく、ポルトガルの空港でパスポートチェックを受けた。なぜスペインとポルトガルで異なるのだろう。
 彼らはイギリスをEU圏とは見なしていないのではないか。イギリスは通貨としていまだにポンドを使っており、ユーロの使用をかたくなに拒否している。いまもEUに留まるか否かで国論が割れている。ヨーロッパの他の国の人たちはイギリスを一線を画して眺めているように思えた。
 正確にいえばシェンゲン協定に加盟している国かどうかで入国審査の扱いが異なる。イギリスはこの協定に加盟していない。

 マドリッドからトレドへ高速列車で行こうとアトーチャ駅へ出向いた。切符売り場はどこだろう。自動券売機がたくさん並んでいる。なんとかチケットオフィスを見つけたが、番号札をとって呼ばれるまで待つことになる。警察官だかガードマンだかの助けを借りて券売機を操作し、指定席券を入手した。そして列車に乗り込めばよいはずだが、列車が見えない。改札口はどこだろう。分からない。また人に訊いた。セキュリティを通るのだという。「I have to go through security?」と思わずききかえしてしまった。列車に乗るのにセキュリティ・チェックを受けることは予想していなかった。セキュリティを通過すると待合室に入り、ガラス越しに列車が見えた。改札が開くまで列車には乗り込めない。
 30数年まえ、この駅からリスボン行きの夜行列車に乗り込んだのだった。あのころのアトーチャ駅はヨーロッパではふつうのオープンな駅だった。だれもがプラットホームまで入れた。切符売り場で切符を買えば、あとはお目当ての列車に乗り込むだけだった。日本のような改札口がないのがヨーロッパの鉄道のやり方だった。検札は車掌の仕事だった。
 いまは改札口をつくり、指定席券のバーコードをカードリーダーでピッと読みとっている。セキュリティと改札を通過しなければプラットホームに入れない。いまのアトーチャ駅構内には店が並び、どこで切符を買ってどこから列車に乗るのかといういちばん基本的なことがとても分かりにくい。駅舎に入っても列車の姿が見えないのがいちばんの原因だ。

 もうひとつ変わったなあと思ったこと。地下鉄の駅や車内でスマホの小さな画面に見入る人が増えて、日本の状況とおなじになってしまった。スマホが普及するまえのガラケーの時代には、あの小さな画面に見入る人はいなかった。日本の電車内でみなが携帯の画面を眺めていたころ、ヨーロッパではバスや電車内で携帯を使って話す人はいたが、小さな画面に見入る人はまずいなかった。スマホの時代になり、状況が日本とおなじになってしまった。









1000円カットは便利だ

2016年06月03日 | 日記

 相模原市が1000円カットの床屋の出店を禁止する条例を定めたようだ。
 八王子市にはすでにたくさんの1000円カットの店があり、私はずっと利用している。安いし10分ぐらいで頭髪を刈ってくれる。待ち時間があったとしても10分程度ですむ。ふつうの床屋で散髪していたころは床屋へ行くこと自体が億劫だった。長い待ち時間のあとでやっと自分の順番がくる。髪をカットし、髭や髪の生え際、首筋などを剃刀ナイフでそり、洗髪して仕上げをする。その一連の工程に40分ほどかかった。いちど床屋へ入ると2時間近く自分の行動を束縛される。これがたまらなく嫌だった。1000円カットは、武蔵境駅のガード下にオープンした床屋に入ったのが初めだったように思う。その後、八王子や西八王子、高尾駅周辺に次々に同種の床屋がオープンし、私には便利になった。
 それらの床屋に共通している点は、剃刀を使わないことと洗髪しないことだ。剃刀で髭をそる点についていえば、そってもらった瞬間はきれいになるが、ひと晩寝るともう伸びてきて翌朝には自分でそることになる。つまり髭をそること自体にほとんど意味がない。洗髪については、どうせ夜、家で入浴するのだから、そのときに洗えばすむし、床屋で洗ってもらってもかゆいところに手が届かず、また自分で洗いなおすのが常だった。だから余計な工程なのだ。相模原市のこのたびの条例は、「洗い場」を設けない理容美容店は出店を認めないというものらしい。不要なものを省略する発想は既得権益者にはないのだろうか。
 1000円カットの店が東京にあるのだから全国どこにでもあるものと思い込み、兵庫に帰省したときにも同じような店を探したがなかった。いつだったか鹿児島駅周辺であまった時間を利用して散髪しようと思いたち、1000円カットの店を探したが見当たらなかったことがあった。東京にしかなかったのか。
 これほど便利な床屋をつくらせない条例をつくるとは、相模原市の理容美容業界は何を考えているのだろうか。自分たちの既得権益を守ろうとするのは当然の行為だが、手ごわい競争相手が現れれば、それに打ち勝てるだけの技術や方法を開発すればよい。
 かつてイギリス、ケンブリッジに1か月近く滞在したことがある。床屋に飛び込んで「Just cutting」というと散髪だけをしてくれた。髭剃りも洗髪もしない。このように客が望む工程だけを選んで提供する理髪店が日本にも増えるとよいのだが・・。