岡本太郎美術館に出かけた。生田緑地内にある。岡本太郎の作品からエネルギーをもらえるかと思ったのだが、そのエネルギーのすごさに圧倒されて帰ってきた。いやはや凄い。美術、造形など合わせれば1000点を超えるかもしれない。どの作品からも溢れんばかりのエネルギーを発散している。美術作品には必ずといってよいほど原色の赤が入っている。「芸術は爆発だ!」が岡本の芸術に対する気構えだったが、さすがに「爆発」を感じさせるものばかりだった。
しかし岡本太郎という人、心が安らぐ時間などあったのだろうか。平和に人生を送ることを標榜しているものにとっては、対極に位置する人だ。
きゅうに岡本太郎の作品を観たくなったのは、大阪万博開催が決まり、1970年の万博を思い出す機会が増えたからだ。大阪万博には開催されていた半年の間に数回、足を運んだが、岡本の作品である「太陽の塔」を実際に自分で直接、観た記憶がない。屋根から頭部が突き出ているのをテレビ・ニュースや写真でよく観るが、あれを直接、観たことはない。中央の入り口から出入りしなかったからだろう。並んで長時間、待つのがせっかちな私の性に合わないので、出入りは中央ゲートでなく脇のゲートを利用したはずだ。当時、人気ナンバーワンを競っていたアメリカ館にもソ連館にも入らなかった。アメリカ館にはその前年にアポロ11号が持ち帰った「月の石」が展示されていたため、入館するためには3時間待ち、4時間待ちなどの長蛇の列に並ばなければならない。そのようなことをする気はさらさらなかった。アジア、アフリカなど小さな国のパビリオンに入っただけだった。万博に行っただけ、その場の雰囲気を味わっただけ、というのが正直なところだった。
では、2025年の大阪万博でもおなじような行動ですませることになるか。ただ1970年のときよりは、もう少し賢明になったような気がする。大阪府は万博会場を埋め立て地、夢洲につくるといっているが、ここはもともとカジノを誘致する場所だった。ただそこへ人を運ぶ鉄道や道路を整備する費用がバカにならないので躊躇していた。今回、万博のためという大義名分を得て、万博準備の予算ですべてのインフラ整備を執行できることになった。めでたし、めでたしと大阪府の幹部も日本政府も胸をなでおろしているに違いない。万博会場建設でわいわい騒いでいる間に、公認賭博の最たるものであるカジノ建設がひそかに同時進行するかもしれない。成り行きを注視していきたい。
写真は生田緑地にあるメタセコイアの木。スギ科の木で、高さ80メートルぐらいか。下の写真は美術館前の庭にある「母の塔」と、館内で唯一、写真撮影を許された場所。