新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

スペインへ行ってきました

2016年06月19日 | 日記

 スペインへ行ってきました。そのときの話を書いておきます。まずは面食らったこと、びっくりしたことを3つばかり。

 深夜に飛行機でマドリッド、バラハス空港に着いた。飛行機を降りてバッゲージクレームでスーツケースを受けとり、あとへは戻れないドアを出るとそこはもうタクシー乗り場だ。
「あれえ、パスポートチェックがなかった」
「しまった! 空港のどこかで経路を間違って、パスポートチェックを受けないまま来てしまった」
「このままではスペインへ密入国したことになり、出国のときに問題になるに決まっている」
 あせって、あちこちにいる制服姿の警備員やら腕章をまいた人に訊いてみても要領を得ない。インフォメーション嬢に訊いた。するとにこやかに教えてくれた。
「フランクフルトでパスポートに入国スタンプを押してあれば、おなじEU圏内なのでそれで十分です」
 という返事だった。たしかにフランクフルトの空港でパスポートチェックがあり、パスポートにスタンプを押してくれた。なぜこんなところでスタンプを押すのかと怪訝に思っていた。EU圏はひとつの国と思ってよいのだろう。私の不安はなんとか解消した。
 しかしまえにポルトガルへ入国したときにはロンドン経由だったが、ロンドンの空港でパスポートチェックがなく、ポルトガルの空港でパスポートチェックを受けた。なぜスペインとポルトガルで異なるのだろう。
 彼らはイギリスをEU圏とは見なしていないのではないか。イギリスは通貨としていまだにポンドを使っており、ユーロの使用をかたくなに拒否している。いまもEUに留まるか否かで国論が割れている。ヨーロッパの他の国の人たちはイギリスを一線を画して眺めているように思えた。
 正確にいえばシェンゲン協定に加盟している国かどうかで入国審査の扱いが異なる。イギリスはこの協定に加盟していない。

 マドリッドからトレドへ高速列車で行こうとアトーチャ駅へ出向いた。切符売り場はどこだろう。自動券売機がたくさん並んでいる。なんとかチケットオフィスを見つけたが、番号札をとって呼ばれるまで待つことになる。警察官だかガードマンだかの助けを借りて券売機を操作し、指定席券を入手した。そして列車に乗り込めばよいはずだが、列車が見えない。改札口はどこだろう。分からない。また人に訊いた。セキュリティを通るのだという。「I have to go through security?」と思わずききかえしてしまった。列車に乗るのにセキュリティ・チェックを受けることは予想していなかった。セキュリティを通過すると待合室に入り、ガラス越しに列車が見えた。改札が開くまで列車には乗り込めない。
 30数年まえ、この駅からリスボン行きの夜行列車に乗り込んだのだった。あのころのアトーチャ駅はヨーロッパではふつうのオープンな駅だった。だれもがプラットホームまで入れた。切符売り場で切符を買えば、あとはお目当ての列車に乗り込むだけだった。日本のような改札口がないのがヨーロッパの鉄道のやり方だった。検札は車掌の仕事だった。
 いまは改札口をつくり、指定席券のバーコードをカードリーダーでピッと読みとっている。セキュリティと改札を通過しなければプラットホームに入れない。いまのアトーチャ駅構内には店が並び、どこで切符を買ってどこから列車に乗るのかといういちばん基本的なことがとても分かりにくい。駅舎に入っても列車の姿が見えないのがいちばんの原因だ。

 もうひとつ変わったなあと思ったこと。地下鉄の駅や車内でスマホの小さな画面に見入る人が増えて、日本の状況とおなじになってしまった。スマホが普及するまえのガラケーの時代には、あの小さな画面に見入る人はいなかった。日本の電車内でみなが携帯の画面を眺めていたころ、ヨーロッパではバスや電車内で携帯を使って話す人はいたが、小さな画面に見入る人はまずいなかった。スマホの時代になり、状況が日本とおなじになってしまった。