スペインの街中の落書きは以前に比べてずいぶん減った。ポルトガルの首都リスボンに比べてもマドリッドの落書きは少ないという印象を受けた。それでも日本に比べると多い。とくに電車の車窓から外を眺めていると、防音壁などは落書きで埋まっている。そのようすたるや労力と根気とペンキ代などの費用と、そして企画力のすべてを傾注し、精魂こめて書き上げたに違いないと思われるものばかりだ。車庫に駐車している電車の車体が落書きでおおわれているのを見ると哀れさえ感じる。しかしさすがにスペイン国鉄RENFEの名誉にかけて、高速列車の車体にだけは落書きさせていない。
こんなところにまで落書きが、と驚いたのは地下鉄のトンネル内の壁だった。地下鉄に乗っていると暗いなかでも落書きが見えることがある。いったいいつ書くのだろう。夜、電車が走らない時間帯にトンネル内に侵入して書くのだろうか。
落書きに命を懸けている人がいるのかもしれない。