いま読んでいるキティー・ケリー著「ナンシー・レーガン」が終わりに近づいた。
嘘いつわりだらけの履歴書に始まり、夫が米国大統領を務め終える1989年1月までのナンシーの姿を克明に追った伝記だ。自己中心的で権力を笠に着た言動、公費を私物化する行為、ホワイトハウス内の人事から夫である大統領が打ち出す政策にまで首を突っ込むようすを細かく具体的に描いている。
70歳で大統領に就任したレーガンは、耳が遠くなり前立腺癌を患い、2期目の選挙戦のさなかに大腸癌を宣告される。非公表で手術を受けたロナルド・レーガンは、さらに軽い認知症の徴候も見られた。もちろんそれらの弱点は公にはひた隠しにされ、その分、側近とファーストレディーへの負担が増していく。
2期目が後半に入った1987年10月、こんどはナンシーの左胸に乳がんが見つかる。医師団は腫瘍部を摘出し、その後、週2回の放射線治療を繰り返す案を提示したが、ナンシーは全摘出を選んだ。それには夫が大統領として、その職務を最後までぶじに遂行させるためにはたえず自分がそばについてアドバイス、フォローをしていく必要があるとの強い理由があった。もはやレーガンは夫人の支えなしでは大統領職を全うできないほど精神的に衰弱していた。数週間後にはソ連のゴルバチェフと中距離核協定を結ばなければならないレーガンにとって、支えである夫人が週に2回も放射線治療を受けていては仕事が進まなくなる。ナンシーはそれを考えて、医師団が薦める治療案をかたくなに拒否し、乳房全摘を選んだのだった。ナンシーの悪口ばかりを書き並べた伝記のなかでは異色の章といえる。ただ大統領夫妻は何度か顔の整形手術を受けており、外科手術には慣れていたが放射線治療については恐怖心を抱いていた、ともつけ加えてある。
さて手術を受けたあとのナンシーは、ソ連との交渉、条約締結の日程を、お抱えの占星術師の助言を受けながら決めていく。もちろん占星術師に頼っていることなどメディアにはいっさい内緒にしていたのだが・・。