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海外のメディアから得た情報を書こうと思います。

5巻44ー46章

2024-02-20 14:26:03 | 世界史

【44章】
カミルスは次のように述べた。
「アルデアの皆さん! ローマはあなた方の古い友人です。私はローマ人でしたが、現在はアルデアの市民です。私に話す機会を与えてくださり、感謝します。どうしようもない事情により、話さずにはいられません。私は自分の立場を忘れてはいません。状況が切迫しており、共通の危険を前にして、誰もが自分にできることをして、国家に貢献しなければなりません。現在の危機において私が何もしないなら、皆様に恩返しする機会を失うことになります。戦争においてこそ、私は役に立ちます。ローマにいたとき、私は戦争で負けたことがないので、何度か司令官に選ばれました。平和な時代になると、ローマの人たちは私を追放しましました。アルデアの皆さん! ローマはこれまでアルデアを助けてきました。今度はあなた方がローマを助ける番です。戦争に勝利する喜びを皆さんは覚えてており、私が説明するまでもありません。ローマとアルデアの共通の敵に勝利し、偉大な名声を獲得しようではありませんか。今アルデアに向かっているガリア人はまとまりがなく、バラバラです。彼らの強みは体が大きいことと人数が多いことだけで、決意も忍耐力もありません。恐ろしい外見で、不気味な声を上げても、彼らは見かけだけで、実際の戦闘力はありません。ローマとの戦い方を見ればわかります。彼らがローマを占領できたのは、門が開いていたからです。しかし砦とカピトルの丘の少数の守備隊によって彼らは撃退されました。彼らは包囲を続けるのが面倒になって、途中でやめてしまった。今は、少数のグループに分かれて、野原をうろついている。彼らは野獣のようにがつがつ食べ、ワインを飲みすぎて酔いつぶれてしまう。夜になると、一か所に野営せず、あらゆる方向に並んで眠る。検問所はなく、見張りも守備兵もいない。ローマで成功したので、これまで以上に油断している。もしあなたたちがアルデアを守りたいなら、祖国の土地をガリア人に奪われたくないなら、直ちに武器を取り、私とと一緒に全力で戦ってほしい。戦いといっても、一方的にガリア人をやっつけるだけだ。もし敵が眠りこけていなかったら、敵を羊のように殺すことができなかったら、ローマから追放された私が今度はアルデアから追放されても仕方がない」。
【 45章】
友人も敵も、アルデアの市民全員が、カミルスほど偉大な将軍はいないと確信した。議会が解散し、一休みすると、アルデアの市民は軍隊を招集する合図が出るのを待ちきれなかった。夜の静けさの中、合図が出た時、兵士たちはすでに市門の前に集結しており、彼らはカミルスを待った。カミルスが現れ、すぐ出陣した。間もなく彼らはガリア人の野営地を発見した。カミルスが説明したように、ガリア人は無防備で、あちらこちらに横たわっていた。アルデアの兵士たちは大声で叫んでから、襲いかかった。戦闘というより、単なる虐殺が始まり、無防備で熟睡していたガリア人は目が覚める間もなく死んだ。野営地のはずれで寝ていたガリア人は驚いて起き上がり、敵がどこから現れたか、また何者であるかもわからず、慌てて逃げ出した。アルデア兵の中に逃げ込む者さえいたので、ガリア人のうろたえぶりがわかる。相当な数のガリア人はアンテイィウムの近郊に逃げ込んだが、同市の市民に包囲された。
同じ頃、ヴェイイの郊外でエトルリア人が虐殺された。これまでヴェイイの市民はローマに同情していた。四百年間隣人であったローマが、見たことも聞いたこともない蛮族に滅ぼされるのを見て、彼らは哀れんだのである。しかし今やローマを憐れむ気持ちを忘れ、彼らははローマの郊外に侵入し、誰からも罰せられずに多くの物を獲得した。略奪を終えると、彼らは遠くからヴェイイを眺めた。ヴェイイはローマにとって最後の要塞であり、希望だった。ヴェイイに逃げ込んでいたローマ兵たちは、ヴェイイの市民がローマの郊外を動き回るのを見ていた。略奪を終えたヴェイイ人は集結し、略奪品を先頭に歩き出した。ローマ兵は絶望して見ていたが、次第にヴェイイの市民に対して怒りが込み上げてきた。「ガリア人がローマを標的としたおかげで、ヴェイイは攻撃を免れたというのに、彼らはローマの災難を見て喜んでいるのだ」。
ローマ兵は略奪者たちを懲らしめる気持ちを抑えられなかった。ヴェイイに逃げ込んだローマ兵たちは百人隊長のカエディキウスを指揮官に選んでいた。カエディキウスは怒り狂う兵士たちをどうにか抑え、襲撃を日没まで引き延ばした。カエキリウスはカミルスに遠く及ばなかったが、攻撃を夜まで待ったのは適切だった。略奪者たちに対する攻撃は成功した。攻撃はさらに続いた。生き残ったヴェイイ人を案内人とし、市外の製塩場に行き、そこにいた大勢の市民を突然襲撃し、虐殺した。ローマ兵は勝利に満足し、ヴェイイに帰った。
【46章】
この時期、誰もローマを訪れなかった。ガリア人の包囲は不完全で、抜け道があっても気にしなかったが、彼らは包囲を続けた。戦闘はなく、ガリア人は封鎖線を出入りする人間を見張っているだけだった。ある時ローマの戦士の振る舞いが敵と味方の賞賛の的となった。ファビウス家は毎年キリヌス神(戦士の神で、サビーニ族がローマに伝えた神)へ生贄を捧げていた。C・ファビウス・ドルスオが長衣にガビンの帯をしめ、両手に聖なる器を持って、カピトールの丘を降りてきた。彼はガリア人が見張る中を平然と歩き、キリナル神殿に向かった。ガリア人たちはファビウスを威嚇したり、挑発したりしたが、彼は動じなかった。神殿に着くと、彼はしきたりに従い、厳粛に儀式を執り行った。儀式を終えると、相変わらず平然とした表情と物腰で帰っていった。神に対する聖なる務めをいかなる人間も妨害できない、とファビウスは深く信じており、死の恐怖さえ彼を押しとどめることはできなかった。勤めを終え、彼はカピトルの丘の仲間のもとへ戻った。ガリア人はファビウスの異常な大胆さに恐れをなしたのか、あるいは宗教的な畏怖を感じたのか、どちらかだろう。いずれにしてもガリア人は野蛮な民族であり、神を恐れる気持ちが深かった。
(日本訳注:ガビンの帯は長衣のすそをまくりあげ、腰に止めるもので、歩きにくい長衣を短衣に変える帯。ガビンは不明。おそらく外国の地名で、帯の発祥の地)。
ヴェイイのローマ兵は次第に勇気を取り戻し、再び戦力になろうとしていた。またローマが占領された時逃げ出したローマ人もヴェイイに集まってきた。さらにラティウム各地の志願兵もローマの勝利と戦利品をを期待してヴェイイに集まってきた。ガリア人からローマを奪回する機運が熟したのである。ただし、身体は頑健になったが、頭脳となる指導者がいなかった。現在彼らがいるヴェイイを奪取した指揮官カミルスを、人々は思い出した。カミルスの作戦と指導力のもとで、ほとんどの兵士が果敢に戦った。百人隊長カエディキウスは次のように言った。「神々の命令がなくとも、仲間に要望されなくても、私は指揮官を辞任する。私は自分の地位を忘れていない。我々には本来の司令官が必要だ」。
全員一致で、カミルスをアルデアから招くことが決定された。しかし元老院の承認が必要だった。非常時にあっても、ローマ人は国家の法律を忘れなかった。ローマ市内の大部分が失われていたが、元老院を尊敬する気持ちは失われていなかった。ガリア人の検問を突破するのは非常に危険であり、恐ろしかったが、ポンティウス・コミニウスという名前の元気な兵士が元老たちに会いに行く役目を買って出た。彼はコルク材の小さないかだでテベレ川を下り、ローマに向かった。対岸に上がると近道を選び、断崖をよじ登った。この崖は絶壁だったので、ガリア人は見張りは不要とみなしていた。コミニウスは無事にカピトルの丘を登った。彼は国家の指導者たちの前に案内されると、ヴェイイのローマ兵の要望を伝えた。元老院は以下の決定をした。「部族会議がカミルスを呼び戻す決定をすれば、彼を独裁官に任命できるだろう。そして兵士たちは希望する司令官を持つことができる」。
ヴェイイから来た使者は同じ道を通って急いで帰った。元老院の代表がアルデアに行き、カミルスをヴェイイに連れてきた。部族会議はカミルスの国外追放を解除し、彼を独裁官に任命した。昔の記録はこう述べているが、実際には、部族会議の決定の後に、カミルスはアルデアを出発したのだろう。ローマ人民の決定がなければ、彼は帰ることができない。独裁官に任命されることもないし、軍隊を指揮すこともできない。


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