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5巻50-52章

2024-03-19 21:48:15 | 世界史

【50章】
カミルスは宗教的な務めを厳格に果たさないと気が済まなかったので、不死の神々を敬う法律の制定を元老院に求めた。法律の条項は以下の通りである。
⓵ 敵が立ち入ったすべての神殿は修復され、清められねばならない。境内の境界は変更されねばならない。清めの儀式の作法について、執政官が聖なる書物を参照して確認しなければならない。
② エトルリアの都市カエレ(ローマの北西55km、ティレニア海沿岸)の市民と友好的な関係を築かなければならない。ローマの宗教的な宝物と神官たちがカエレに避難したからである。カエレの市民の親切な行為により、神官たちは神々への奉仕を続けることができた。
③ カピトルの丘で祝祭が開催されねばならない。最高神ユピテルが危機の中で御自身の丘と砦を守ったからである。独裁官である私は祝祭(=競技会)を執り行う神官団を、丘と砦に住む市民から選ぶ。
④ 蛮族の来襲を予言する夜の声が無視されてしまった。予言した心霊をなだめるために、新道に告知の神(アイウス・ロクティウス)の神殿を建てなければならない。
間もなく、告知の神の神殿が建てられることになり、神殿の建設費のために、ガリア人に支払う予定だった黄金と戦争前に神殿から運び出された黄金がユピテルの神殿に集められた。その他の神々にも感謝の奉納をする必要があったが、個々の神殿にどれだけ奉納すれればよいかわからなかったので。すべての神々が神聖であると宣言してから、これらの神々への奉納金を一括してユピテルの神殿の下に保存することにした。ところが資金が枯渇していたので、信心深い女性たちに頼ることになった。ガリア人に支払う平和の買い取り金が国庫に不足していた時も、女性たちの献金のおかげで神殿の宝物を渡さずに済んだ。女性たちは市民から感謝され、彼女たちが埋葬される際に弔辞が述べられることになった。埋葬の際弔辞が述べられるのは男性だけだった。元老院のもとに献金が集まり、神々へ奉納された。
護民官が繰り返し演説した。「廃墟となったローマを捨て、ヴェイイに移住しよう、ヴェイイは我々を待っている」。
カミルスはすぐに演説会場に出向いた。元老全員が彼に同伴した。
【51章】
カミルスは次のように述べた。
「市民の皆さん! 護民官に反対するのは私にとって心苦しいのです。アルデアでの亡命生活はつらかったのですが、護民官と争わずにすむのが唯一の慰めでした。たとえ元老院が1000回決議をしても、市民会議が決議しても、私は祖国に帰るつもりはなかったのです。現在も私の気持ちは変わりませんが、皆さんの運命が悪いほうに向かおうとしているので、私は黙っていられないのです。大切なのは、我々の祖国が同じ場所にとどまり、安定することです。単に私が現在の場所にとどまりたいというわけではありません。戦争が起きない限り、私は国家の問題に口を出さず、静かに暮らしたいのです。戦時に出征しないのは、他の人にとっては不名誉なことかもしれませんが、私にとっては犯罪です。年をとっても同じです。我々が、敵に包囲された祖国を奪い返したのはなぜでしょう。祖国を解放したのはなぜでしょう。今になって祖国を捨てるためですか。ガリア人がアリア川で勝利し、ローマを占領した時でも、ローマ人はカピトルの丘と砦に踏みとどまりました。神々もローマにとどまった。それなのに、ローマが勝利し、首都を奪回した今になって、カピトルの丘と砦を放棄しようとする。運命がローマに味方している時に、諸君はローマを廃墟にするのか。諸君がやろうとしていることはガリア人がやったことより、ローマにとって致命的だ。
ローマが建国された時、まだ宗教は確立していなかったが、新しい国家は次世代から世代へ受け継がれた。このころすでに天の摂理がローマに働いていた。今では神々を敬う気持ちのない市民はいないはずだ。ここ数年ローマでは繁栄と荒廃がめまぐるしく入れ替わった。これを見れば、神々の導きに従えばうまく行くし、それを無視すれば災難が降りかかることがわかるはずだ。何よりもまず、我々はヴェイイとの戦争を教訓にしわなければならない。我々は長い間ヴェイイと戦い、苦労してきた。神々の示唆に従い、アルバ湖の水を抜いた結果、やっと我々はヴェイイに勝利した。また我々に降りかかった未曽有の災難も同じ理由で起きた。ガリア人は突然やってきたのか。そうではない。天の声が彼らの襲来を予告したのだ。天の声を聴いた市民が報告したのに、ローマの最高官が彼の報告を無視した。ガリア人のところに派遣されたローマの使節が国際法に違反し、暴力をふるった。しかもローマの執政副司令官は宗教心が薄く、使節を罰せずに許した。このようないくつもの過ちが戦争を招いたのである。ローマ軍は破れ、首都が占領され、和平のために金を払うことになった。神々がローマに罰を与えたのだ。これはローマに対する教訓であり、、世界に向けての教訓だ。困難の中で、ローマの人々は神々への信仰の重要さを思い出し、最高神ユピテルが住むカピトルの丘に逃げこんだ。首都のすべてが破壊されたが、神殿の宝物だけは守られた。宝物の一部を地面に埋め、残りを近隣の都市に運び去った。神々と人間に見捨てられたにもかかわらず、ローマは神々への礼拝を中断しなかった。その結果我々はローマを奪回することができた。また、失われたローマの威信と名声を回復することができた。物欲で目がくらみ、条約を無視し、誠実さを失ったガリア人は獲得した金の量を確認していたが、そこで運が尽き、ローマ軍に敗北し、全滅した」。
【52章】
カミルスは話を続けた。
「神々を敬う気持ちがあるか無いかで、物事の流れはこのように変わる。市民の皆さん! 以前の罪と敗戦が招いた破壊からやっと立ち上がろうとしている時に、あなた方はなんと恐ろしい犯罪を計画しているのでしょう。我々の都市ローマは神々の承認と祝福により建設されました。天は神々の加護を我々に知らせました。市内のいたるところに、宗教的なゆかりのある場所や神の存在を示す場所が存在します。決められた日に、決められた場所で生贄(いけにえ)をささげなければなりません。市民のみなさん! あなた方はこれらの神々を棄てるのですか。国家の神々であると同時に市民の神々であり、日々神棚に向とかって拝んでいる神々を棄てるのですか。皆さんは C・ファビウスとなんと違うことか。カピトルの丘が包囲されていた時、偉大な若者、ファビウスは砦から出て、槍を構える蛮族の前を平然と通り過ぎ、キリナル神(槍と戦士の神、サビーニ族がローマに伝えた神)にいけにえを捧げました。蛮族も彼を称賛しました。あなたたちはファビウスと同じローマ人ではないみたいだ。戦時にあっても貴族の家は宗教的な勤めを中断しない。それなのにあなたたちは平和な時に神々と国家の神官たちを棄てるのか。大神官とそれぞれの神に仕える神官たちが任務をを放棄してもよいのか」。
カミルスは話を続けた。
「ヴェイイで神々に奉仕すればよい、と言う者がいるかもしれない。あるいはヴェイイからローマに通って今まで通り奉仕すればよいと言うかもしれない。しかし礼拝は正しくなされなければならない。すべての神々に定められた儀式に従って礼拝しなければなりません。カピトルの丘の主神ユピテルのために、長椅子と祝宴を定められた日に用意しなければなりません。ローマの支配権の象徴であるヴェスタ女神(かまどと家庭の神)のために火を燃やし続けなければなりません。ヴェスタの神殿で永遠の火が安全に守られていることは皆さんも知っているでしょう。剣の神マルスと父神キリヌス(槍の神)についても同じです。ローマの建国と同じくらい古く、中には建国以前から存在する神々を、耕作者がいないた土地に置き去りにするつもりですか。また聖なる盾を放置するのですか。
(日本訳注;第2代国王ヌマの時代に盾が空から降ってきた。神聖な盾が盗まれないよう、ヌマは同じような盾を11作らせた。この盾は統治の正当性を示す神器となった)
現在のローマ人は昔のローマ人とまるで違う。我々の祖先は古式の礼拝と儀式のやり方を我々に残した。最も古い儀式はアルバ山とラビニウムで続けられてきた。礼拝は神々のいる墓所でやらなければならない。もし長年我々の我々の敵であった都市で礼拝するなら、それは敵の神々に祈ることだ。神々を勝手に移動させるなら、天が怒るだろう。思い出してほしい。不注意や事故が原因で祖先が残した礼拝の細部を省略してしまった時、我々は礼拝をやり直してきたではないか。
ヴェイイとの戦争が長年続き、ローマは敗北するしかなかった。その時、アルバ湖に予兆が現れ、神聖な礼拝を復活させると今度は良い予兆が現れ、ローマは勝利することができた。祖先の神々を礼拝する一方で、我々は外国の神々をローマに移し、新しい神々とした。最近では、女王神ユノーをヴェイイから移っていただき、アヴェンティーヌの丘を住まいとした。ローマの女性たちは熱狂的にこの女神を歓迎し、大々的に祝った。また、蛮人の襲来を予言した不思議な声のために神殿を建てることにした。新道で声を発した霊は「アイウス・ロクティウス(明言する声)と命名された。また我々は毎年の祝祭にカピトルの丘での競技会を加えた。
以上、神殿について、また聖なる礼拝と儀式について話してきたが、神官についてはどうだろう。ヴェスタの神殿の巫女たちは他の場所に住むことができない。彼女たちを置き去りにしてヴェイイに移住することは忌まわしい犯罪である。ローマがガリア人に占領されるまでは、ヴェスタの神殿の何かが他所へ運び出されたことはなく、巫女が神殿から出ることもなかった。ユピテルの神殿の神官たちも市内から出ることはできない。神の法により、たとえ一晩であっても、市外に出ることは許されない。あなたたちは彼らの聖務をヴェイイの神官たちにやらせるつもりですか。ユピテルの神殿の神官たちがヴェイイに住み、ローマに通うことははできません。昼にローマで聖務をして、夜ヴェイイに帰るなら、彼は神と国家に対し、毎晩重罪を犯すことになります。その他の宗教的な行事も、天の啓示に従い、ローマの市内で続けられててきた。それらをすべて忘れ去り、捨て去るのですか。部族会議は最高指揮権を与え、兵士会では、執政官または執政副司令官が選ばれます。これらの会議をどこで開くのですか。また天がローマに与える予兆はローマ領内に現れるのであり、他の場所には現れない。市民会議をヴェイイでやることはできません。神々と市民に捨てられ、荒野となったローマにわざわざやって来て、会議するのですか」。


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