ボクの名前はラブ。
ラブなんて名前で呼ばれているが、恥ずかしながらオスだ。
ジュニア宅で一緒に飼われていた一歳年下のデンが亡くなって1年以上が過ぎた。
ボクはその寂しさにも慣れてきたように思うが、何とデンと同じような色の子供のワンコが突然家にやってきた。
どうやらボクよりもジュニアと奥さんの方が寂しさに負け、ボクだけでは我慢できなかったのか何処からか連れてきたのだ。それもボクのためにかメス犬を。
しかしだ、この小さなワンコは遠慮と云うのを知らず滅茶苦茶なことをする。
先輩のボクを無視して家の中をビュンビュン走り回り、昼寝をしているボクを飛び越えて一緒に遊べと騒ぐので寝てなんかいられない。
ゴールデンレトリバーのボクは童貞のままで日々を過ごしていたが、最早老犬と云ってもよいので、メス犬にはあまり興味は無い。
でもメスと聞けば馬でも鹿でも丸いお尻を眺めてニタニタしていると聞いたことのあるタブタブ爺ちゃんが早速やってきて、大暴れしているメスの子犬を「可愛い、可愛い」と言いながら抱きしめた。
ところがだ、このメスには「嬉ション」と云う癖があると伝わっていなかった様子。
抱きしめたタブタブ爺ちゃんの服は、アッと云う間に濡れて大慌て。
「どんなに可愛くても美人でもワンコでも人間でも嬉ションはダメ」と云って爺ちゃんはワンコを下ろした。
爺ちゃんは情けない顔で服をティッシュで拭き、数分で帰った。
つまり爺ちゃんはメスの子犬よりオレの方が良いと云うことだ。
そうそう、大暴れして嬉ションする子犬には「姫」と云う名前が付いた。
きっとワガママ過ぎると云う意味があるのだとオレは思っているのだけれど、本当に何とか早く躾けて欲しいと思っているのがボクだけで無いのは確かだ。