【マイナス成長でも軍事支出は拡大】
ウクライナ戦争で分かったことは、防衛費はその性質上、マイナス成長でも拡大する必要がある。国防こそ最大の福祉と言われるくらいだ。
■防衛費拡大に立ち塞がる財務省の壁
国際安全保障の変化に伴い、防衛省が防衛費拡大を主張した時、我が国では予算の増額を財務省に要求する。ここで防衛費拡大に伴う財務省対防衛相の対決が始まる。
だが「省庁の中で最強」と言われる財務省は、均衡財政の狂信者であり屁理屈をこねくり回す天才である。
その「優秀な財務官僚」が相手では、防衛省の敗北は目に見えている。
財務省に対決するため防衛相、外務省、デジタル省など国防関連省庁を束ねる安全保障省を設置し、首相代理の内閣官房長官を担当大臣に委ねる。
いわば「内閣省」である。アメリカで言えばペンタゴンともいえる省庁の軍団で対決すれば、いくら財務省でも内閣に逆らうのは躊躇するだろう。
財務省が防衛予算を出し渋る決まり文句は財源である。
防衛予算は将来に対する投資だと考えれば、建設国債と同じく国債発行で財源に充当することも可能だ.
だが、均衡財政狂信者の財務官僚を説得するのは困難だ。
そこで日露戦争当時、貧弱な財政基盤で大国ロシアを打倒した財務省の大先輩高橋是清の戦時国債の例で対応すべきだ。
■高橋是清、戦時国債で日本を救った男、世界の軍事費 271兆円 21年 最高額更新 ロシアも拡大2022-04-26
「資源インフレ」を止めるには原発再稼動が必要だ
岸田政権の「物価高対策」が発表された。「インフレ対策」とか「円安対策」といわないところがポイントである。3月のコアCPIでも0.8%と、日銀のインフレ目標2%に達していないのに、なぜ物価高対策なのか。
参議院選挙の前にバラマキをやるため、当初は使い残している予備費でやろうとしたが、公明党が「補正」という形を求めたので、6.2兆円の事業規模になった。経済政策としては無意味な補正予算である。
まず「資源インフレ」を止めよ
3月の企業物価上昇率は前年比9.5%。電気代は次の図のようにすでに20%上がっており、この資源インフレが今回の物価高の本質である。その最大の原因は、2021年にエネルギー価格が暴騰したことでもわかるように、脱炭素化で化石燃料への投資が削減され、供給不足に陥ったことである。

日本経済新聞より
そしてウクライナ戦争と経済制裁による原油・天然ガスの欠乏で、ヨーロッパでは40%も電気代が上昇した。日本も後を追うだろう。資源インフレを防ぐには、エネルギー供給を増やし、消費を抑制する必要がある。
ところが今回の補正予算の最大の項目は、石油元売りへの1.5兆円の補助金である。インフレの時代に、財政赤字を増やす政策はありえない。特に化石燃料の価格が上がっているとき、ガソリンの消費を促進する政策は、脱炭素化とも矛盾する。
円安と「輸入インフレ」の悪循環
物価高のもう一つの原因は、円安による輸入インフレである。アメリカの長期金利(10年物国債)2.8%に対して、日本は0.25%未満。日銀が指し値オペをやっているため、日米金利差は縮まらない。アメリカの予想インフレ率は2.8%と高いので、実質金利の差はそれほどないが、日銀が量的緩和をやめないかぎり、円安は止まらない。

財務省(時事通信より)
さらに化石燃料の値上がりで、図のように貿易赤字が拡大し、これが円安要因になっている。
資源インフレ→貿易赤字→円安→輸入インフレ
という悪循環が起こっているのだ。普通は円安になると輸出が増えて貿易赤字が減るが、今回は輸入インフレによる交易損失が大きいので、貿易赤字は今後も増えるだろう。
まず必要なのは、日銀の量的緩和をやめることだ。今月、携帯電話のマイナス1.5%がなくなったら、インフレ2%になることは明らかで、物価を抑制する局面である。指し値オペをやめるとともに、日銀当座預金のマイナス金利をやめ、金利を市場にまかせるべきだ。そうすれば為替レートは、120円台で安定するだろう。
資源インフレは脱炭素化や経済制裁による政治的現象なので、マクロ経済政策では止まらない。もっとも重要なのは供給のボトルネックの解消である。特に「特重」で止まったままの原発再稼動が緊急に必要だ。石炭火力を廃止する行政指導もやめ、火力を温存すべきだ。
重要なのは、安倍政権から続いてきたマクロ経済偏重をやめ、供給重視の経済政策に転換することだ。それはエネルギー政策や規制改革など政治的に困難なものが多いので、選挙前には無理だろうが、衰えた供給力を強化しないかぎり、インフレも円安も止まらない。
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