日本の外務省は海外向けのPRが下手だと言われて久しい。
その為かどうか外務省が外郭団体「日本国際問題研究所」を通じて「コメンタリー」という英文の冊子を出版しているという。 勿論その経費には税金が使われている。
普通の日本人なら当然日本政府の政策等をPRする機関だと思う。
ところがその「コメンタリー」に中国の立場に立った靖国参拝批判、つまり小泉首相批判の論文が載ったという。
それに気がついた産経新聞ワシントン駐在の古森記者が同研究所に抗議をし産経新聞の記事にした。
同研究所は記事の内容について謝罪し同論文を閲覧閉鎖にした。
ここまでだったら政府機関の言動の偏向を民間記者が指摘し是正させたということで、言論の自由を認めた日本の健全さを物語る例となるはずだった。
ところがワシントンポスト紙が「日本の思想警察の復活」と題する記事で産経古森記者の行動を「言論弾圧」と決め付けた。
虚偽と捏造に満ちた同記事は1930年代の軍国主義時代の思想統制と政治要人暗殺を例に挙げ、現在の日本を思想警察の復活やテロ横行の危険な時代の到来のようにミスリードしている。
あまりにも荒唐無稽な記事内容なので、日本人や少なくとも日本の実情を知る人なら誰も相手にしないだろうと思っていた。(ここまでは当日記の9月1日付けで≪ワシントンポスト 「日本における思想警察の復活」≫に書いた。
ところが8月27日のいささか古い記事を引用して「日本には言論弾圧がある」とミスリードする記事を書いた日本の新聞があった。 朝日新聞である。
朝日新聞はW・ポストの記事を援軍にして産経新聞・古森記者の行動を「問題あり」として宣戦布告をしたのだ。
◇
先ずWポスト紙の記事を知るきっかけとなった読者kkkさんのコメントとそれに対する当日記の反論から紹介したい。
◆Unknown (kkk)
2006-08-27 13:52:07
今日のワシントンポストにも、産経+古森の言論弾圧事件に付いて書かれてますね。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/08/25/AR2006082501176.html
これじゃ、自民党・靖国利権御用情報機関ですな。
◆言論弾圧 (狼魔人)
2006-08-27 21:07:35
kkkさん
コメントありがとうございます。
ワシントンポスト署名記事のSteven Clemons氏は日本の実情を知らない人か、或いは知らないそぶりをした人としか思えません。
加藤紘一氏実家の放火事件、前外務審議官・田中均氏宅への爆発物放置事件、そしてそれに対する石原都知事の“文学的”コメントを取り上げ日本が「1930年代の軍国主義に」(1930s-style militarism)に突入したかのように読者をミスリードしています。
現在の日本が1930年代の軍国主義とは遠い社会であること日本を知る人なら説明をまたないでしょう。
改めて言うまでも無いが暴力で言論を弾圧することは許されるべき事ではありません。
しかしW.P.紙記事はYoshihisa Komori 氏が暴力や威嚇で言論弾圧したかのような印象操作をしています。
Yoshihisa Komori 氏は言論でMasaru Tamamoto氏の偏向記事を攻撃したのだから、それに反論があれば外務省の下部機関の職を潔く辞して、言論で自己の正当性を述べるべきではないでしょうか。
どう考えても日本政府の補助金で運営される公的機関が英文で「反日宣伝」をしていたというのでは常識あるものなら呆れ返ります。
筆者のMasaru Tamamoto氏も公金を貰いながらでは反論しづらいでしょう。
Masaru Tamamoto氏や同組織(外務省下部機関)の責任者Yukio Satoh氏が早々に謝罪したのは放火や爆弾による言論弾圧があったからではなく「国民の税金」を貪りながら「反日宣伝」をする事に後ろめたさを感じたからでしょう。
日本はW.P.紙が危惧するような言論弾圧の国ではなく、世界でも最も言論が自由な国の一つだと思うのですが・・・。
これについては当日記の 8月20日「公費で国を売る人々」 、及び9月1日『ワシントンポスト 「日本における思想警察の復活」』を参照。
このW・ポスト記事の筆者は日本の実情を知らないのか、あるいは知らないそぶりをしている。
嘘と捏造に満ちた記事なので常識ある人は相手にしないだろうとも書いた。
ところが朝日新聞は、9月8日になってワシントンポスト記事を引用して更に針小棒大な記事を書いた。
≪米紙ワシントン・ポスト(電子版)は8月27日付で、自民党の加藤紘一元幹事長宅の放火事件とともに「ナショナリズムの高まりに後押しされ、思想統制が本流になりつつある」とする社外筆者の記事を掲載した。 ≫
≪過去にも靖国カルト(崇拝)を復活させようとした国家主義的な首相はいたが、中韓の反発ですぐに撤回した。 ≫
朝日の魂胆は産経ー古森ラインのきわめて正当な一連の行動に対してワシントン・ポスト記事を援軍にして反撃しようというのだ。
◇
日中関係の論文、「反日」批判で閲覧停止 国際問題研 (朝日新聞)
外務省認可の財団法人日本国際問題研究所が、ホームページの掲載論文を産経新聞のコラム欄で「公的な反日論文」と批判され、これを閲覧停止にして理事長の佐藤行雄・元国連大使が同紙上で反省を表明したことが問題化している。
研究所や外務省内にも「過剰反応」と異論があり、米紙は「言論封殺」とする寄稿を掲載。佐藤氏は朝日新聞の取材に「『靖国カルト』など不適切な言葉遣いがあった。
内容ではなく表現の問題だ。もう一度よく精査している」と語った。
批判の対象となったのは、研究所の英文編集長による「日本はいかに中国を想像し、自国を見ているか」と題した英語論文。
日中関係悪化の背景として日本国内の「タカ派ナショナリズム」の高まりを指摘したうえで、小泉首相や過去の首相の靖国神社参拝を「靖国カルト」(崇拝)と表現し、「日本の政治的見解は海外で理解されない」などとしている。
この論文を産経新聞記者が8月12日付朝刊のコラム欄で「中国などの日本攻撃をそのまま正しいかのように位置づける論旨」と批判。
「現在の日本の外交や安保の根本を否定するような極端な意見の持ち主に日本の対外発信を任せる理由はなんなのか」と問い、佐藤氏への公開質問状とした。
研究所によると、産経記事の掲載直後から批判や問い合わせが相次いだため、この論文を含むシリーズの閲覧を停止した。
さらに佐藤氏が産経新聞に対し「公益法人としての当研究所の立場にふさわしくない表現や、日本の立場や実情に誤解を招く用語などがあったのは指摘通りで、責任者として深く反省する」と回答を寄せ、18日付の同紙朝刊に掲載された。
研究所は外務省から補助金を受けるシンクタンクだが「活動自体は独立している」との立場。研究所関係者からは「正しい対応とは思えず、納得できない」との声が出ており、外務省にも「研究機関だから様々な意見があっていい。論文を閲覧できなくしたり佐藤氏が謝ったりするのは過剰反応だ」(幹部)と批判がある。
米紙ワシントン・ポスト(電子版)は8月27日付で、自民党の加藤紘一元幹事長宅の放火事件とともに「ナショナリズムの高まりに後押しされ、思想統制が本流になりつつある」とする社外筆者の記事を掲載した。 (以下略)
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◆問題の27日付「ワシントンポスト」(抄訳) http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/08/25/AR2006082501176.html
「日本における思想警察の復活」 Steven Clemons
(略)
・・・、著名な新聞論説委員が、首相の外交政策シンクタンク編集者に言論戦争を仕掛けるということには単なる警告以上の意味がある。(暴力による脅しにも匹敵するという意味?ー狼魔人)
それは公的人物を脅迫する右翼の最新の攻撃に匹敵する。(加藤紘一宅放火事件に匹敵するってこと?-狼魔人)
結局それは単なる警告ではなく、言論の自由を弾圧し市民社会を後戻りさせるようなものだ。
8月12日、古森義久(ワシントン駐在の超保守産経新聞の論説委員)は日本国際問題研究所が運営するオンラインジャーナル「コメンタリー」の編集者玉本偉の記事を攻撃した。
その記事は、対中脅威論の扇動や、戦死者を祀る靖国神社への中国の抗議を無視しての参拝に表れる日本の新しい声高な“タカ派ナショナリズム”の台頭を懸念するものだった。
古森は「コメンタリー論文」を「反日」と決め付け、主な執筆者を「極左知識人」と攻撃した。
さらに古森は、コメンタリー執筆者を税金を使って使用したことを謝罪するよう研究所の所長佐藤行雄に求めた。(当然のことと思うがー狼魔人)
執筆者は戦犯合祀を理由に反対する中国を無視しての靖国参拝に疑問を呈した記事を書いていた。
驚いたことに、佐藤はそれに応じた。24時間以内に彼は「コメンタリー」を閉鎖し、サイトの過去の掲載記事(「コメンタリー」が外交政策と国家アイデンティティ確立についての率直な討論の場であるとする彼自身の文章を含む)をすべて削除した。
(自分の行っている売国行動を後ろめたいと思ったからでしょうー狼魔人)
佐藤はまた先週産経の編集部に手紙を出して許しを乞い、「コメンタリー」編集部の完全な見直しを約束した。 呆気にとられるような屈服劇だ。
だが、日本を覆う政治的雰囲気を考えれば驚くことでもない。
最近のナショナリズムの台頭に勢いを得て、1930年代の軍国主義と天皇崇拝と思想統制を熱望する暴力的極右活動家グループが、更なる主流の中へと移動を始めた。
そして思想の違う人々を攻撃し始めた。
先週、そのような過激派が、かつての首相候補加藤紘一の実家に放火した。
彼は今年小泉の参拝を批判していた。(略)
2003年、当時の外務審議官田中均は自宅に時限爆弾を仕掛けられた。
彼は北朝鮮に対して弱腰だとして右翼の標的にされた。
保守派東京都知事石原慎太郎は演説で、田中は「当然の報いを受けた」と言った。
(この筆者は現在の日本が、一連の要人暗殺事件と憲兵暗躍があった2.26事件の頃と同じだと読者をミスリードしているー狼魔人)
( 略)
1932年5月、犬養毅首相は、満州の中国主権を承認し、議会制民主主義を擁護する彼の立場に反対する右翼活動家グループに暗殺された。
第二次大戦後右翼狂信者は影を潜めたが、日本の国家アイデンティティや戦争責任や天皇制に関する微妙な問題について率直過ぎる発言をした人には時折脅迫がされてきた。
(以下略)
◇
この記事が危惧するように、1930年代のようにテロの恐怖が政治や言論の世界を覆っている事実は現在の日本にはない。
事実は国の税金で活動する政府機関が発行している刊行物が政府批判を行っているという事だ。
執筆者や編集者は、政府の方針に批判があるならまず政府関係者に直接進言すべきだろう。
それがかなわぬのなら職を辞して自由な立場から政府を批判するべきだ。
日本では言論の自由は認められている。
日本国際問題研究所が批判を受けて記事を取り下げたのは当然の流れである。
筆者のclemons氏が古森氏の記事を指して、 「公的人物を脅迫する右翼の最新の攻撃に匹敵する。言論の自由を弾圧し市民社会を後戻りさせるよう脅かすものだ。」 と攻撃したことは大袈裟すぎて笑止の一言に尽きる。
言論活動と過激派のテロ行為とを意識的に混同している。
民間の言論機関である産経新聞が政府に属する組織である日本国際問題研究所を批判し、同研究所が批判を受けて偏向記事記事を取り下げた。
健全な言論活動の証拠ではないか。
更には民主主義が健全に機能していることの証明でもあり、間違ってもワシントンポストのいう「言論弾圧」ではない。
そもそもワシントンポストの記事は「日本における思想警察の復活」と題されているが、思想警察とは時の権力が民間の思想を弾圧するための組織であり、産経新聞の古森記者のような民間会社の個人が政府機関である日本国際問題研究所の思想を弾圧するものとは意味が根本的に異なる。
筆者のClemons氏は日本に思想警察復活の兆しはない事実には目を伏せて、一部の狂信者による暴力・脅迫事件を大袈裟に取り上げている。
そして強引に次のような「日本の実情」を創りあげる。
1930年代に思想統制とテロが同時に横行したことを取り上げて、現在の日本社会が暴力による言論弾圧が横行し同時に思想警察復活の兆しがあるかのように読者をミスりーどしている。
このような嘘と捏造の記事が一人歩きした例は枚挙に暇がないが、その新聞が影響力のある高級紙ワシントンポストなので朝日新聞がこれに飛びついたのだろう。
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