「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

「防災教育のあるべき姿と地震・津波防災DIG・土砂災害対策DIG」(その8)

2015-10-06 23:54:46 | 防災教育
掟破りのバックデータも、何とか一週間差まで取り戻してきている。
リアルタイムでの活動報告に戻るまで、あともう一息。

この日(10月6日)午前は、沼津市の子育て支援サークル「tasuki」のママさん方から依頼を受け、
防災についての座談会を行っていた。

拙ブログの堅苦しい文言を読むよりも、
「tasuki」との仲介役を果たして下さった沼津市災害ボランティア協会「VCはまゆう」の高良綾乃さんの秀逸なブログに、
この時の話が掲載されているので、そちらを紹介することで報告に代えたい。

「小村先生との座談会 with tasuki開催されました!」
http://ameblo.jp/vege-takarabako/entry-12081372061.html

一つ、本気で考えさせられたことがあった。
この秋、消費者庁が静岡県に業務委託をしている消費者教育のプロジェクトをお手伝いすることになっている。
「静岡で消費者教育を、というのであれば、やはり防災でしょ?」、これは間違いなく正しい。
で、「こういうアバウトなものならば、やはり小村さんでは?」という担当者の議論があったかどうかは知らないが、
有り難いことに声をかけていただいた。
防災の基本は、まともな立地、まともな構造、つまりは自宅をどこに構えるのがよいか、ということ。

tasukiの方々に聞いてみたところ、意外なほどすでに家を購入している人が多かった。
未就園児を持つママさんが中心のtasukiゆえ、持家の人は1/3程度、
つまりは多くは30代後半か40代になったら購入では?と勝手に思っていたのだが、
ざっと3/4ほどがすでに家を構えておられた。

ということは、自宅の立地と構造の重要さを説くには、もっと若いママさんに声をかけなくてはならない訳で、
とすれば、どのようなアプローチをすれば、そのような方々に情報(メッセージ)を届けることが出来るか、
そこが思案のしどころ、ということになる。

議論の中では、パパママ教室は子育て支援センターへのアプローチがあるのでは?となった。
大変重要かつ貴重なアイディアをいただいたように思った。

11月中旬、最初の委員会がある。それまでに、もう少し考え方を深められるだろうか……。

拙稿「防災教育のあるべき姿と地震・津波防災DIG・土砂災害対策DIG」の提示も、
各論その1である地震・津波防災DIGの後半まで来た。
以下にお示しする通りだが、拙ブログの読者各位には、すでにどこかで聞いた話かも。

*****

DIGを用いた防災教育のポイント(その1):地震・津波防災DIG
(3)3つ目の柱:地域の被害量を見積もりさせよ

地震防災のイロハのイは建物の耐震性確保。
とすれば、現時点で覚悟しておくべき被害を「当たらずしも遠からず」程度には見積もらせた上で、
「現状ではかくかくしかじかだが、これをどう変えて(少なくして)いくか」と問うことが、
地震防災の進展には不可欠である。
そこで、地域に残る古い耐震基準時代の家屋数を手がかりに、
建物倒壊による生き埋め者数(=要救出者数)、負傷者数、死者数を、簡単な掛け算のみで見積もらせる書式を導入、
参加者に被害量を算出させている。

子どもたちには「この分析はあくまで現時点での被害見積もりに過ぎない」という点を強調している。
建て替え(や二義的には耐震補強)により丈夫な家が多くなれば、地震の被害は減らせる。
この過程を通じて子どもたちには、「地震による被害は減らせるのだ!」という意識を持たせたい、
と思っている。

(4)4つ目の柱:残された時間を活かして地域をどう変えていくか
揺れのイメージを持たせ、全体状況を把握させ、個々の地域での被害量を見積もらせたからには、
残された課題は、残された時間を活かして地域をどう変えていくか、である。
ここではA0版程度の地域の地図を用いている。
地図は住宅地図メーカーのゼンリンがDIG用地図を販売しているのでそれを活用している。
版面はA0版、縮尺は1/1500なので、概ね東西1km、南北1・5kmが地図内に収まる。
中学校区程度と考えてもらえればよいだろう。
地域改善策の検討過程は模造紙に整理させている。
先に述べた被害量見積もりを①として、

②地域の強みと弱みの洗い出し、
③強みを活かし弱みを補うための提案を付箋紙で書き出させ、
④この地域を災害に強くするための参加者からのメッセージ、

としてまとめさせる、という具合である。

地震・津波防災DIGの標準的な流れはこのようなものだが、
これらの過程を踏むにはかなり切り詰めても3時間程度の時間を要する。
50分1コマや2コマでDIGをやってほしいという依頼もあるが、
まともな教育には相応の時間がかかるということは理解しておいてもらいたいと思う。

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(10月13日 記す)


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