「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

「静岡市清水区の病院と市役所庁舎の移転と火発新設を考えるふじのくにDIGセミナー特別企画」

2017-03-19 23:47:28 | 駿河トラフ・南海トラフ巨大地震津波対策
3月19日(日)、月例開催の「ふじのくにDIGセミナー」の今年度最終回。

東日本大震災から1年余が経過した、5年前の今頃だったと記憶している。
何かのきっかけで、静岡県地震防災センターに勤める親しい友人と飲んでいた時、
「静岡でDIGのセミナーを継続的にやらなくては!」という話になった。

で、若干の準備期間を経て、2012年6月にスタートしたのがこの「ふじのくにDIGセミナー」。

「始めるからには(しんどくても)5年間は続けないと!」との思いはあったが、
意外と息切れを意識することもなく、区切りの5年目を終えることが出来た。
(「もっとやれたはず」との思いは常に抱えているが……。)

この記念の回では、レギュラーメンバーからの要望もあり、
現在進行形の静岡市清水区の桜ヶ丘病院と静岡市役所清水庁舎の移転、さらにLNG火発の新設を取り上げ、
標記のような特別企画を行った次第。

去る3月7日、静岡市の田辺市長と桜ヶ丘病院を傘下に持つ「独行・地域医療機能推進機構」の尾身理事長が、
「桜ヶ丘病院の移転先を清水庁舎(の跡地)に決定した」との共同記者会見を行った。

実のところ、この「決定した」という意味が、私には全く理解出来ない。

奇しくも現在、静岡市議挙の真っただ中。
市が所有している不動産の処分について、市議会の議決を経ずして決定などということがあろうはずがない。
(ということは……、ということ、なのだろうか……、と、想像することは出来るが……。)

この日のDIGは、その種の「政治的な議論」は一切せず、

「災害時であっても機能する医療機関に求められる要素」
「災害時であっても機能する行政の拠点に求められる要素」

これらの、要素を洗い出すことに専念した。

前者については、
東日本大震災の教訓を踏まえるならば、石巻市立雄勝病院の悲劇は当然のこととして
(注:入院患者40名全員と、医療人30名中24名が死亡した、悲劇の病院。)
私自身が撮影した、公立志津川病院と岩手県立高田病院の写真を見せつつ、
これらの病院がどのような立地にあり、どのような被害を受けたのかを、まずは確認した。

その後、12年前の中越地震の被災翌日に撮影された小千谷総合病院の中の映像を参考にしつつ、
災害時でも機能する病院に求められる要素について洗い出した。
南海トラフ地震発生時、電力供給一つとってみても、
月単位での「時間給電」(注:計画停電に非ず!)が余儀なくされる可能性は相当高い。
加えて、自家発の燃料をしっかり配送できる状況にもない。

そのことを、十分覚悟しているのだろうか???

後者については、
行政の拠点が、防潮堤で守り切れる「かもしれない」場所にあるとして、
津波は第○波が最大波とは事前には言えず、かつ、防潮堤で守り切れる保証もない以上、
「大津波警報が解除されるまでは、当該行政の拠点に行ってはならない!」が大原則となる。
ということは、当該行政拠点は、大津波警報が解除されるまでは現有勢力で戦わなくてはならない、
ということを意味する。

そのことを、十分覚悟しているのだろうか???

この日の議論を総括するならば、

「逃げてはならない人」(≒行政等災害対応機関の実務担当者)がいる場所は、
災害リスクがあるような場所にあってはならない。

「逃げられない人」(≒医療機関や社会福祉施設に入院・入所している方々)がいる場所も、
災害リスクがあるような場所にあってはならない。

この2文に集約されるように思われた。

とはいえ、まだまだ議論は浅い。
というので、このテーマについての第2弾を、本年7月の第2土曜日(7月8日)に実施すべく、
調整を始めたところ。

具体的な内容が固まりましたら、拙ブログでもPRさせてもらいますので、
その節はよろしくお願いします。

(3月22日 記す)


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