「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

静岡市清水区の病院と市庁舎の移転問題を考えるための視点(その1)

2017-03-20 22:51:50 | 駿河トラフ・南海トラフ巨大地震津波対策
「証文の出し遅れ」感は否めないが、去る3月19日(日)、
現在進行形?の静岡市清水区の桜ヶ丘病院老朽化に伴う建て直し?移転話と、
それに絡むことになる?静岡市役所清水庁舎の建て直しをテーマに、
DIGの手法で考えるワークショップを行った。

当然、1回だけですべての論点を議論しきれるはずもなく、
今のところ、3か月余の準備期間を持った後、7月8日(土)開催の7月期のDIGセミナーで、
再度、議論する方向で、現時点では考えている。

それに向けて、どのような論点を検討しなくてはならないか。
それを、可能な限り具体的に、かつ、数字も用意した上で議論の場に乗せなければ、
まともな議論になるはずもない。

というので、18日の議論も振り返りつつ、具体的な論点とそれに関する数字について、
少しずつでも積み上げていきたい、と思っている。

手始めに、大規模災害時であっても機能する医療機関の条件を考えてみる。

1:
阪神淡路大震災では、神戸西市民病院、宮地病院など、医療機関の建物が物理的に破壊されることにより、
医療機関としての機能を失い、西市民病院では入院患者がお亡くなりになるという事態も起きた。
物理的に丈夫な建物を作ることは、しかるべき対価はかかるが、技術的には当然可能なこと。
建築費が増額すればその分、回収に時間がかかるのは当然のことだが、
医療機関(病院)においては、医療資機材購入費のほうが高額になるのが常と聞く。
というので、この点については大きな問題になるとは思われない。
まぁ、桜ヶ丘病院の移転候補のうち、現在地での建替ないし桜ヶ丘公園への移転のほうが、
軟弱地盤である清水庁舎所在地に建てるよりは、基礎工事にかかる経費が少なくて済むだろう、とは思うが。

2:
ピロティー構造を導入すれば、1階が浸水する程度の浸水深であれば耐えられる、というのは、半分は正しい。
しかし、ピロティー部分にたまったガレキの処置が終わるまでは、いわば「高松城水攻め」状態となり、
外部との人員・物資のやり取りは、著しく制限される。
医療機関がガレキに囲まれるゆえ、病院を目指して傷病者が殺到するような事態は考えられないが、

(1)大津波警報が解除されるまでの間(24時間?48時間?)は、発災時間帯に医療機関内にいた人員で
  外来患者と入院患者をケアする。彼ら彼女らを院外の安全な場所に運ぶ、あるいは転院搬送させる航空輸送力の余裕はない。
(2)大津波警報解除後も、行方不明者の捜索をやりつつの道路啓開が終わるまでは(1日や2日で何とかなるのだろうか???)、
  上記状態が続く、

ということになる。

3:
建物が物理的に破壊されなくても、揺れによる医療器具の転倒等での機能破壊ないし機能低下は、
程度の差こそあれ避けられない。
固定の必要性は明らかとしても、普段使いを考える時、すべてのものの固定は現実的とは言えない。
ただ、致命的な事態を引き起こしかねないものについては(例:ベッドサイドの人工透析器)、
ベッドと一体化させるなどの工夫は求められることになる。

4:
免震構造の導入は、しっかりした地盤に建つ低層構造物への短周期地震については絶大な減衰効果を持つが、
病院移転の候補となっている沿岸部の軟弱地盤の場合、期待しているだけの効果が発揮できない事態、
あるいは、むしろ軟弱地盤と長周期成分の相乗効果によるマイナス効果も考えられる。
この効果の判断には地震応答解析の専門家の力を借りなくては判断が出来ないだろうが、
それでも、免震構造を導入しない、という選択肢はないとは思うが。

まだまだ続く、否、続けなくてはならない。
それにしても、想定しておくべき論点って、一体、幾つあるのだろう……。
それらを一通りでも検討しておくことは、本当に出来るのだろうか……。

(3月25日 記す)


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