「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

静岡市清水区の病院と市庁舎の移転問題を考えるための視点(その4)

2017-03-23 22:59:25 | 駿河トラフ・南海トラフ巨大地震津波対策
8:
電気、ガス、水道と横並びで表現されるライフラインの中で、三番目にまわされてしまったガスについて。
熱源としてのガスについては、いざとなれば何とでもなる、と、どこかで思ってしまっている。

阪神淡路大震災の発生直後に現地に入った時、
側溝用のU字コンクリートの中に倒壊家屋から得た木材を入れて火をつけ、
同じく側溝用の金属製の格子状の枠
(注:業界での言葉を知らないが、雨水は流すが木の葉等はひっかけるためのもの)を五徳代わりに置き、
そこに薬缶や鍋を置いてお湯を沸かせていた光景を思い出す。

気密性の高い鉄筋コンクリート造か鉄骨造の建屋の中で、木材を燃やして暖を取るなど、
確かに現実的とは言い難いところはあるが、それでも、相違工夫で何とでもなるのでは、と思ってしまう。
(大石英司さんの小説を読み返せば、その種のサバイバル技術についての記述&アイディアは幾つも出てくる。)
いざという時のため、LPガスのボンベと、それに相応したコンロ類は、
上層階に置かれた防災倉庫にストックしておくべきかもしれない。
(そもそも、熱源としてのガスについては、都市ガス系で組むのだろうか?それともLPガス系で?)

課題となるのは医療用のガス、つまり呼吸補助用の酸素や麻酔用の笑気ガスのストックの話。
この時代に病院を新設するとなれば、ベッドサイドに、酸素、笑気ガス、痰の吸引等のためのエアー、
3種類の配管はしておくことになるのだろう、とは思う。
短く見積もっても大津波警報が解除されるまでの間(48時間程度?)、
ガレキ等がピロティーを埋め尽くしていたならば、高台からアクセス路を作り、さらにピロティーを片付け、
しかるべき数のボンベを上層階にある病棟や治療ブースに持ち込むまでの間(一週間程度?)、
入院患者への医療の継続に必要な量に一定係数を掛けた分(1.2倍?1.5倍?)、
ストックしておくことは求められるのだろう。

浸水を覚悟しておかなくてはならない場所に医療機関を新築する、ということは、
浸水を考えなくてよい場所にある医療機関に比べ、
相当量の「プラスアルファ-の」備蓄をしておかなくてはならないことを意味する。
それでも、病院経営的には、大した問題ではない、ということ、なのだろうか。

現在位置で今まで病院経営が成り立っていたことを、しっかり受け止める必要があると思う。
平常時の利便性が高くなる場所=病院経営的にもプラスになる立地を求める、と言うことは理解出来る。
しかし、防潮堤に100%(120%)の信頼度を置けない以上、
地震・津波防災の原理原則からして、津波浸水域という災害リスクのある場所に、わざわざ移転して、
医療機関を新築するという選択肢は、
何度考えても愚策という言葉以外には見つからない……。

(3月27日 記す)


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