<宇津木・矢倉神社 うつぎやぐらじんじゃ>
本来神社というのは、
「神様と人」とが着かず離れずの距離感で、
共存できる場所に作られるのが最善だと思います。
神様の住処である山と、人間の住処である集落の
ちょうど境目のあたりに位置する地域の氏神は、
その土地に住む人々が神社を守るだけでなく、
神様の側からも人々を見守ることができるため、
お互いの存在を意識しながら生活できるのです。
もちろん、山頂や人里離れた場所にある神社が、
よくないというわけではありませんが、
修験道などによって山が開かれる以前、
日本に根づいていた古い信仰というのは、
未開の自然の中に分け入ることや、
力のある自然物を拝むことではなく、
「今いる場所から」目の前にある自然に
手を合わせることだけだったのでしょう。
人と神とが寄り添うような形で置かれた
熊野地方の無社殿神社の姿を見ておりますと、
私たちが守るべき「人と神との距離感」を、
無言で教えられたような気がしました。