<田並・矢倉神社 たなみやぐらじんじゃ>
串本町・田並上の無社殿神社を探すべく、
集落のあちこちを探索してみたものの、
熊野の地に入ったばかりで土地勘が鈍っているせいか、
いつものように「神社臭」を嗅ぎ分けられません。
道に迷うたびに、地元の方に行き方を教えてもらい、
あれこれと周囲を歩き回ってはみたものの、
まるで突破口のない状況が続きます。
今振り返ってみても、今回の旅はひたすら
「人に聞くこと」の繰り返しでした。
まるで昔話のひとコマのように次々とあらわれる、
4人のお年寄りたちのバトンリレーを経て、
ようやくたどり着いた矢倉神社(矢倉さん)は、
集落と山との境目にある簡素な佇まいの神社でした。
麓の広場から舗装された狭い道を山のほうへと向かうと、
すぐにコの字型に並べられた石垣が見えてきます。
祭壇の中央には、塗装が剥がれた貯金箱と榊立て、
そして一本の御幣と丸い手向け石が置かれ、
この場所が確かに祭祀の場であることを示していました。