「裏の裏の表の表」
『ジョゼと虎と魚たち』 田辺聖子
男と女とおいしいものが合わさった時がすべてだなと思わせる短編集。
田辺聖子さんの小説は難しくありません。悲哀や苦悩や不条理だって描かれてますが、
「まあまあよろしいやん。ぼちぼちいきましょ。」
というふところの深さがあります。そこが信頼できるところなのです。
上段から構えて、正論をぶつけることもありません。
眉間にしわ寄せて痛みや苦しみを咆哮することもありません。
「さもありなん…」
というゆるさ。
だからこそ際立つ真実や毒っけ。それから生きることの甘露があますことなく描かれています。
この短編集は、ちょっぴりスパイシーかもしれません。人の奥ひだのはんなりとした、やんわりとした、しっとりとした裏を知ることになると思います。
けれどそれを知ることは、しょっぱくて甘い、豆大福のおいしさに気付くことでもあるのです。
好きなものばかりなのですが、特に『恋の棺』『ジョゼと虎と魚たち』『雪の降るまで』は特にお気に入りです。
たおやかでいながら、手折られない強さとしなやかさを持った女性たちの裏の裏の表の表。それを怖いと思うか哀しいと思うか慈悲と思うか旨みと思うかは人それぞれだと思います。
『ジョゼと虎と魚たち』 田辺聖子
男と女とおいしいものが合わさった時がすべてだなと思わせる短編集。
田辺聖子さんの小説は難しくありません。悲哀や苦悩や不条理だって描かれてますが、
「まあまあよろしいやん。ぼちぼちいきましょ。」
というふところの深さがあります。そこが信頼できるところなのです。
上段から構えて、正論をぶつけることもありません。
眉間にしわ寄せて痛みや苦しみを咆哮することもありません。
「さもありなん…」
というゆるさ。
だからこそ際立つ真実や毒っけ。それから生きることの甘露があますことなく描かれています。
この短編集は、ちょっぴりスパイシーかもしれません。人の奥ひだのはんなりとした、やんわりとした、しっとりとした裏を知ることになると思います。
けれどそれを知ることは、しょっぱくて甘い、豆大福のおいしさに気付くことでもあるのです。
好きなものばかりなのですが、特に『恋の棺』『ジョゼと虎と魚たち』『雪の降るまで』は特にお気に入りです。
たおやかでいながら、手折られない強さとしなやかさを持った女性たちの裏の裏の表の表。それを怖いと思うか哀しいと思うか慈悲と思うか旨みと思うかは人それぞれだと思います。