だらだらと続く登り坂。俺は必死にマウンテンバイクのペダルを漕ぎ続ける。八月の熱帯夜。風はない。俺は滝のような汗をかく。白く大きな月が天上に浮かぶ。一番高い位置で、青白い光をはなっている。逢瀬にふさわしい夜だと俺は思う。「逢瀬」という言葉がこれほど似合わない年齢もないだろう。この言葉を使うには、俺は若すぎるかもしれない。俺は先月、十八になったばかりの高校生だ。この言葉を知っている同級生は少ないだろう。たとえ知っていたとしても、使うやつはほとんどいないだろう。俺だって、日常生活で使うことなんてない。使う場面が想像つかない。でも、今はそうとしか言いようがない。俺は恋をしている。密かな恋。恋しい人に会いに行くのだ。
高校三年生。受験まっただ中である。だが、俺は何の心配もしていなかった。それと同じくらい俺の周囲の人間ー両親、教師、友人、その他もろもろーも何の心配もしていなかった。なぜなら、俺は目標がはっきりしていれば、黙々と突き進んでいくからだ。計画を立て、それを実行する。これは自慢ではなく、単なる俺の性格だ。いろいろ考える前に、とりあえず目の前のことを片付けていく性格なのだ。それがいいか悪いかは別の問題なのだろう。というわけで、志望大学を三年になって早々に決めた俺は、必須の問題を片っ端から解き始めていた。
高校三年生。受験まっただ中である。だが、俺は何の心配もしていなかった。それと同じくらい俺の周囲の人間ー両親、教師、友人、その他もろもろーも何の心配もしていなかった。なぜなら、俺は目標がはっきりしていれば、黙々と突き進んでいくからだ。計画を立て、それを実行する。これは自慢ではなく、単なる俺の性格だ。いろいろ考える前に、とりあえず目の前のことを片付けていく性格なのだ。それがいいか悪いかは別の問題なのだろう。というわけで、志望大学を三年になって早々に決めた俺は、必須の問題を片っ端から解き始めていた。