養虎自遺患也
項王少助食盡。韓信又進兵撃之。羽乃與漢約、中分天下、鴻溝以西爲漢、以東爲楚。歸太公・呂后、解而東歸。漢王亦欲西歸。張良・陳平曰、漢有天下大半。楚兵饑疲。今釋不撃、此養虎自遺患也。王從之。
項王、助け少なく、食尽く。韓信、又兵を進めて之を撃つ。羽、乃ち漢と約す、天下を中分し、鴻溝(こうこう)以西を漢と為し、以東を楚と為さんと。太公・呂后を帰し、解いて東に帰る。漢王も亦西に帰らんと欲す。張良・陳平曰く、漢天下の大半を有(たも)つ。楚の兵飢疲す。今釈(ゆる)して撃たずんば、此れ虎を養うて自ら患(うれ)いを遺(のこ)すなり、と。王、之に従う。
項王は援兵少なく食糧も尽きてきた。さらに韓信もまた兵を進めてこれを攻めた。項羽はしかたなく漢と約束して鴻溝で二分し、西方を漢の領土とし東を楚の領土とした。そして人質にしていた太公と呂后を帰して、戦闘態勢を解いて東に帰った。漢王もまた西に帰還しようとしたところ、張良と陳平が止めて言った。「漢は天下の大半を領有しており、楚の兵は飢え疲れはてています。ここでこのままゆるして撃たなければ、虎を育てて患いを遺すというものです」と。漢王はこの進言に従った。
項王少助食盡。韓信又進兵撃之。羽乃與漢約、中分天下、鴻溝以西爲漢、以東爲楚。歸太公・呂后、解而東歸。漢王亦欲西歸。張良・陳平曰、漢有天下大半。楚兵饑疲。今釋不撃、此養虎自遺患也。王從之。
項王、助け少なく、食尽く。韓信、又兵を進めて之を撃つ。羽、乃ち漢と約す、天下を中分し、鴻溝(こうこう)以西を漢と為し、以東を楚と為さんと。太公・呂后を帰し、解いて東に帰る。漢王も亦西に帰らんと欲す。張良・陳平曰く、漢天下の大半を有(たも)つ。楚の兵飢疲す。今釈(ゆる)して撃たずんば、此れ虎を養うて自ら患(うれ)いを遺(のこ)すなり、と。王、之に従う。
項王は援兵少なく食糧も尽きてきた。さらに韓信もまた兵を進めてこれを攻めた。項羽はしかたなく漢と約束して鴻溝で二分し、西方を漢の領土とし東を楚の領土とした。そして人質にしていた太公と呂后を帰して、戦闘態勢を解いて東に帰った。漢王もまた西に帰還しようとしたところ、張良と陳平が止めて言った。「漢は天下の大半を領有しており、楚の兵は飢え疲れはてています。ここでこのままゆるして撃たなければ、虎を育てて患いを遺すというものです」と。漢王はこの進言に従った。