周勃職を免ぜらる
帝明修國家事。朝而問右丞相勃曰、天下一歳決獄幾何。勃謝不知。又問、一歳錢穀出入幾何。勃又謝不知。惶愧汗出沾背。上問左丞相平。平曰、有主者。即問決獄責廷尉。問錢穀責治粟内史。上曰、君所主者何事。平謝曰、陛下使待罪宰相。宰相者、上佐天子、理陰陽、順四時、下遂萬物の宜、外鎭撫四夷、内親附百姓、使卿大夫各得其職焉。帝稱善。勃大慚、謝病免。
帝益々国家の事を明修す。朝(ちょう)にて右丞相勃に問うて曰く、天下一歳の決獄(けつごく)幾何(いくばく)ぞ、と。勃知らずと謝す。又問う、一歳の銭穀の出入幾何ぞ、と。勃又知らずと謝す。惶愧(こうき)して汗出で背を沾(うるお)す。上(しょう)、左丞相平に問う。平曰く、主者(しゅしゃ)有り。即(も)し決獄を問うには廷尉を責められよ。銭穀を問うには治粟内史(ちぞくないし)を責められよ、と。上曰く、君の主(つかさど)る所の者は何事ぞ、と。平、謝して曰く、陛下、罪を宰相に待たしむ。宰相は、上(かみ)、天子を佐(たす)け、陰陽を理し、四時(しじ)を順にし、下(しも)万物の宜(よろ)しきを遂げ、外、四夷(しい)を鎮撫し、内、百姓(ひゃくせい)を親附(しんぷ)し、卿大夫をして各々其の職を得しむるものなり、と。帝、善しと称す。勃大いに慚(は)じ、病と謝して免ぜらる。
文帝は益々国のまつりごとに通暁しようと務めた。ある時、朝廷で右丞相の周勃に下問した。「一年に裁判の数はいかほどか」と。周勃は「存じません」と恐縮して答えた。帝は又、「一年に金銭・穀物の出入りはいかほどか」と問うた。周勃は又「存じません」と答えたが、恐れ恥じ入って冷や汗で背中がぐっしょりになった。帝は左丞相の陳平に同じことを問うた。陳平が答えて「それぞれ管掌というものがあります。裁判についてのご下問は廷尉に糺して下さい。また金銭、穀物のことは治粟内史にお尋ねください」と言った。帝は「それではそちは何を司っておるのか」と訊くと、陳平は「私は宰相として至りませず、陛下から罰せられるのを待っている身でありますが、そもそも宰相の職務は上は天子を補佐し、陰陽を整え、春夏秋冬を順調ならしめ、下は万物のよろしきを得て、外は四方の蛮夷を鎮め、内は人民を親しみなつかせ、卿大夫にはそれぞれふさわしい職務を得させること、でございます」と申し上げた。帝は「もっともである」といわれた。周勃は大いに恥じいって、病と申し出て、職を免ぜられた。
決獄 嫌疑のある事件を決裁すること。 惶愧 惶はおそれる、愧ははじる。
廷尉 裁判を掌る長官。 治粟内史 銭穀を掌る長官。
陛下、罪を宰相に待たしむ 宰相の重責ありながら何の功績もなく、ただ陛下から罪の来るのを待っているの意、宰相の謙辞。
陰陽を理し、四時を順にし 正しく政治を行えば天変地異が無く、四時が順調に推移するという思想があったから。
帝明修國家事。朝而問右丞相勃曰、天下一歳決獄幾何。勃謝不知。又問、一歳錢穀出入幾何。勃又謝不知。惶愧汗出沾背。上問左丞相平。平曰、有主者。即問決獄責廷尉。問錢穀責治粟内史。上曰、君所主者何事。平謝曰、陛下使待罪宰相。宰相者、上佐天子、理陰陽、順四時、下遂萬物の宜、外鎭撫四夷、内親附百姓、使卿大夫各得其職焉。帝稱善。勃大慚、謝病免。
帝益々国家の事を明修す。朝(ちょう)にて右丞相勃に問うて曰く、天下一歳の決獄(けつごく)幾何(いくばく)ぞ、と。勃知らずと謝す。又問う、一歳の銭穀の出入幾何ぞ、と。勃又知らずと謝す。惶愧(こうき)して汗出で背を沾(うるお)す。上(しょう)、左丞相平に問う。平曰く、主者(しゅしゃ)有り。即(も)し決獄を問うには廷尉を責められよ。銭穀を問うには治粟内史(ちぞくないし)を責められよ、と。上曰く、君の主(つかさど)る所の者は何事ぞ、と。平、謝して曰く、陛下、罪を宰相に待たしむ。宰相は、上(かみ)、天子を佐(たす)け、陰陽を理し、四時(しじ)を順にし、下(しも)万物の宜(よろ)しきを遂げ、外、四夷(しい)を鎮撫し、内、百姓(ひゃくせい)を親附(しんぷ)し、卿大夫をして各々其の職を得しむるものなり、と。帝、善しと称す。勃大いに慚(は)じ、病と謝して免ぜらる。
文帝は益々国のまつりごとに通暁しようと務めた。ある時、朝廷で右丞相の周勃に下問した。「一年に裁判の数はいかほどか」と。周勃は「存じません」と恐縮して答えた。帝は又、「一年に金銭・穀物の出入りはいかほどか」と問うた。周勃は又「存じません」と答えたが、恐れ恥じ入って冷や汗で背中がぐっしょりになった。帝は左丞相の陳平に同じことを問うた。陳平が答えて「それぞれ管掌というものがあります。裁判についてのご下問は廷尉に糺して下さい。また金銭、穀物のことは治粟内史にお尋ねください」と言った。帝は「それではそちは何を司っておるのか」と訊くと、陳平は「私は宰相として至りませず、陛下から罰せられるのを待っている身でありますが、そもそも宰相の職務は上は天子を補佐し、陰陽を整え、春夏秋冬を順調ならしめ、下は万物のよろしきを得て、外は四方の蛮夷を鎮め、内は人民を親しみなつかせ、卿大夫にはそれぞれふさわしい職務を得させること、でございます」と申し上げた。帝は「もっともである」といわれた。周勃は大いに恥じいって、病と申し出て、職を免ぜられた。
決獄 嫌疑のある事件を決裁すること。 惶愧 惶はおそれる、愧ははじる。
廷尉 裁判を掌る長官。 治粟内史 銭穀を掌る長官。
陛下、罪を宰相に待たしむ 宰相の重責ありながら何の功績もなく、ただ陛下から罪の来るのを待っているの意、宰相の謙辞。
陰陽を理し、四時を順にし 正しく政治を行えば天変地異が無く、四時が順調に推移するという思想があったから。