ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

「敬老お楽しみ会」準備中

2013-09-30 07:57:33 | 日記


 地元の公民館では明日開催される「敬老お楽しみ会」に向けて、多くの人が忙しく働い

ています。運営担当は地域代表の実行委員会メンバーです。公民館の職員もサポート

しています。


利用者:おっ、明日の準備ですね。お疲れ様!今年も参加申し込みをしましたよ。

     今年で何回目の開催なの?

職員 :お陰さまで、9回目です。今年も実行委員会の皆さんのご尽力で開催することが

     できます。

     私たち職員は例年通り、皆さまをお迎えする飾りつけを担当しています。

利用者:そういえば毎年、玄関先がきれいに飾りつけられていますが、職員の方が担当

     していたのですか。

職員 :そうなんです。ここの玄関は吹き抜けになっているお蔭で、とても明るいでしょ。

     ですから飾りつけをすると、とても見栄えがいいので、やりがいがあるんです

     よ。

利用者:私の記憶では、年ごとにテーマを決めて飾りつけをしていたように思うのです

     が。

職員 :そこまで気付いてくれる人がいるとは思いませんでしたよ。とても嬉しいです。

     昨年は「海」でした。今年はやはり「世界文化遺産登録の富士山」ですよね。

     そこで「山」をテーマに選びました。

利用者:どんな飾り付けになるの?

職員 :富士山の周りに「ようこそ敬老お楽しみ会へ」という横断幕を持った七福神を配

     置して、2階の廊下部分から折り紙で作った鶴や亀を垂らす予定です。

     ご期待に添えるかどうか、あまり自信がありませんが・・・

利用者:分かりました。明日は皆さんの労作をゆっくり鑑賞させていただきますよ。

     今年は落語家さんや弾き語りの人を呼んでいますが、ゲスト探しは大変でしょ

     うね。

職員 :まぁ、人脈以外に方法はありませんね。多くの実行委員さんの中には必ずゲス

     トを紹介してくれる人がいらっしゃるので、今年もその線で行きました。

利用者:そうなんですか。私はプログラムに載っていた「子供たちとの会食」が楽しみで

     す。小学生の孫が遠くに住んでいるので、同じ年代の子どもたちと話す機会が

     あることはとても嬉しいです。

職員 :ありがとうございます。小学生の合唱を楽しんだあと、その子供達と一緒に地域

     のお爺さん、お婆さんが歓談しながら食事をする。これこそが、この公民館で

     の「敬老お楽しみ会」で一番やりたいことなのです。そこに、一人でも多くの

     高齢者の皆さまが参加して喜んでくだされば、私たちは最高に嬉しいのですよ。

利用者:お忙しい中、手を止めさせて申し訳ありませんでした。では明日、伺いますね。

職員 :お声をかけていただき、ありがとうございました。明日、お待ちしています。

     さてと、そろそろ玄関の飾り付けを仕上げようかな。大きなウェルカムボードは

     落とさないように気を付けなきゃならないし、折り鶴が絡まったりしないように

     慎重に運ばなきゃ。

実行委員:ちょっと、メイン会場に来てくださ~い!


何やら奥からお呼びがかかりました。落語家さんの高座をどこに設置するかについて意

見が分かれているようです。一所懸命になればなるほど、議論が沸騰するのは恒例の

ことです。開催日を目前にして、実行委員の皆さんも一段と力が入っている様子。

「敬老お楽しみ会」の準備は今が佳境といったところです。
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幻の赤いバレーシューズ

2013-09-23 07:06:01 | 日記





あれから何年経ったのだろう。思い起こせば、ひと昔も前の話だ。


窓を全開にして、信州の爽やかな空気を楽しみながらのドライブ中。

突然、霞か霧がかかったような白い群落が目に飛び込んできた。

近くの空き地に車を止めて、カメラ片手に駆け寄った。


ソバ畑のようだ。

初めて見るソバの花。小さな白い花がたくさん付いている。

これが実になって、あの旨い蕎麦に変身するのか・・・

米や麦など穀類の花は全く目立たないのに

ソバの花はどうしてこんなに可愛くてきれいなのだろう。

もしかしたら、科目が異なるのかもしれないな?

そんなことを考えながら、カメラを向けていると

白い花々の中に、チョコンと小さなバレーシューズが。


何? これは何だ?

どう見ても赤くて可愛いバレーシューズだよ。

アングルを慎重に決めて3枚だけ写した。

何しろフィルムカメラだ。残り枚数が気になる。



他にもあるのかな?実になる直前の姿かもしれない。

目が届く範囲を探してみるが、見当たらない。

いとおしいものを発見した高揚感を引きずりながら、走り去る。

すると、今度は赤いジュウタンが見えてきた。


またしても車を止めて、歩み寄る。

さっき見たソバの花とそっくりだけど、赤い。

これも初めてだから、しっかり写しておかなくちゃ。

探してみたけど、あのバレーシューズは見つからない。


近くの蕎麦屋に入店すると、「赤ソバの十割蕎麦 有ります」の張り紙。

迷うことなく注文し、初めての赤蕎麦をじっくりと味わった。


今でも、蕎麦を食べるたびに思い出すのが、あのバレーシューズだ。

あれから一度も出会えていないせいで、恋しくて仕方がないんだよ。

あの「幻の赤いバレーシューズ」が・・・・・
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のど自慢大会 in カエル池

2013-09-16 07:28:21 | 日記





ここはカエル池。今日は「のど自慢大会」です。会場は満席で熱気ムンムン。舞台の

ソデには自慢の歌を聞かせようと、番号札を持った出場者たちが控えています。


司会者 :大変、長らくお待たせ致しました。只今より恒例の「のど自慢大会」を始め

      ます。本日の出演者はどんな美声を聞かせてくれるのでしょうか?

      それでは早速、一番さん、ど~ぞ。

ピョンタ:一番。大葉下村、アマガエルのピョンタです。早口言葉を歌にしました。

      「かえるぴょこぴょこ」を歌います。

      ♪かえるぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ 合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ

      ♪どじょうにょろにょろ三にょろにょろ 合わせてにょろにょろ六にょろにょろ

審査員 :カ~ン、カ~ン、カ~ン!鐘三つ、合格です。難しい歌詞をカマずに歌えたこと

      を評価します。リズムに乗ってすばらしかったですよ。

ピョンタ:毎日、お父さんと特訓してきたんだ。お父さん、やったぞ~。うれしいな。

司会者 :おめでとうございます。素敵な賞品を受け取ってください。次の方、ど~ぞ。


ケロン :二番。岩陰村、トノサマガエルのケロンです。筑波山麓合唱団を歌います。

      仲間がバックコーラスを担当してくれます。

      ♪筑波山麓男性合唱団 マウントツクバのフロッグコーラス 

          コンダクターはガマ蛙 ガマはガマでも四六のガマ 

       セカンドテナーはアマガエル ケロケケケケケケケケケロケロケロケロ 

           ベースはガマ蛙 グワグワグワグワ グワグワグワグワ ♪

審査員 :カ~ン!鐘ひとつです。

ケロン :アレ~、残念だな~。

審査員 :グワグワグワグワはワを小さくしてグヮグヮグヮグヮにするとキレイに聞こえ

      ますよ。バックコーラスもハーモニーが乱れてしまいましたね。

ケロン :練習が足りなかったのかな~。本番では上手く息を合わせられると思ったけ

      ど、甘かったな。もっと練習してきます。

司会者 :そうですね。また次回、挑戦してください。次の方、ど~ぞ。


ケロイチ:三番。川上村、カジカガエルのケロイチです。ケロニ、ケロサン、ケロヨンの

      4兄弟で輪唱をします。歌は「かえるのうた」です。

       ♪ かえるのうたが きこえてくるよ。クヮ クヮ クヮ クヮ、

          (かえるのうたが きこえてくるよ。クヮ クヮ クヮ クヮ)

         ケケケケ、ケケケケ、 クヮクヮクヮ。

          (ケケケケ、ケケケケ、 クヮクヮクヮ)♪

審査員 :カ~ン、カ~ン、カ~ン!鐘三つ、合格です。カジカさんたちの歌声はいつも

      本当にきれいですね。輪唱もピッタリと息が合って、とても良かったです。

ケロイチ:やったぞ~、みんな、ありがとう。僕たちは練習の成果が出せたね。

司会者 :おめでとうございます。素敵な賞品を受け取ってください。次の方、ど~ぞ。


ガマ子 :四番。泥沼村、ガマガエルのガマ子です。歌は「おたまじゃくしは蛙の子」、

      踊りも見てね。

        ♪おたまじゃくしは蛙の子  なまずの孫では ないわいな

           それがなにより証拠には  やがて手が出る 足が出る ♪

審査員 :カ~ン!カ~ン!鐘二つです。踊りで会場が盛り上がりましたね。

ガマ子 :鐘が二つって微妙ね。どうせなら三つにしてよ。踊りもバッチリだったでしょう?

審査員 :ガマ子さんは歌の選曲を間違えましたね。この歌はあなたの声には合わない

      と思いますよ。もっと可愛く歌って欲しかったな。でも踊りは良かったです。

      抱腹絶倒。会場は笑顔に包まれて、最高に盛り上がりました。

ガマ子 :歌はダメだったってことね。踊りで褒められたようだけど、抱腹絶倒って、

      ホメ言葉なの?笑顔で盛り上がったですって?私にはお腹を抱えて笑ってい

      るだけのように見えたわよ。これも何だか微妙よね。まっ、いいか。

司会者 :残念でしたね。練習して、また来てください。次の方、ど~ぞ。


かえる池の「のど自慢大会」を毎年楽しみにしているのは、出演者と観客だけではありま

せん。天上界に住む「カエル天国」の住人たちも楽しみにしているのです。

でも、何やら不満げな声が聞こえてきました。


住人A:歌の質がずいぶんと落ちているようだね。練習が足りないんじゃないのかな。

住人B:俺たちの頃は予選があったのに、今は誰でも出られるみたいだ。

住人A:参加者が減っているんだってね。質の低下はこの辺が原因かもしれないよ。

住人B:この間、天国に来た新入りの話では住環境がどんどん悪くなっているらしいよ。

     このままだと、子孫の数がどんどん減ってしまいそうで、心配だね。

住人A:昔のような質の高い歌声を聞くには、まず、カエル池の住環境を整備しないと

     いけないのか。こりゃ、簡単なことじゃないよな。

     人間たち、何とかしてくれ~!
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姫ネコ・アメリの気まぐれツイート―その5 <恐怖は突然やってくる>

2013-09-09 08:32:23 | 日記




 ホントは教えたくないんだけど、負けず嫌いな私にも弱点はあるのよ。笑わないで聞い

てね。自尊心があるから、少しだけカッコつけて話すわ。


その1 カミナリ

 ピカピカ、バリバリ、ドカン!「ミャ~~~オ」。もう、怖いのナンノって。カミナリほど

恐ろしいものはないわね。突然、平穏を乱すこの光と音が来たら、まずは安全な場所に

駆け込むことにしてるの。というより、思わず飛んで逃げてるだけなのだけどね。

ひとまず隠れる場所は冷蔵庫と壁の間が一番多くて、たまに下駄箱の中も使っている

わ。最近は洗濯機の後ろに逃げ込むこともあるの。なんてったって相手が見えないんで

すもの。何か得体の知れないものが襲いかかってくる感じで身の毛がよだつわ。

気ままなマンション生活は快適なのに、雷鳴が聞こえると、パニックになってしまうのよ。

飼い主夫婦も怖がっているようだから、全く頼りにならないの。とにかく窓から離れた場

所に避難するのよ。

最近はカミナリの回数が増えているから、このマンションのどこかに住み着いているんじ

ゃないかと心配だわ。えっ、住み着いていないって?本当?それなら安心なんだけど。

あの光と音、勘弁して欲しいわね。


その2 インターホン

 マンションでは1階のエントランスに呼び出し用ボタンがあって、それが押されると私の

住む部屋のチャイムが鳴り、モニターテレビが映るの。このチャイムの音が嫌なのよ。

突然「ピンポ~ン」と大きな音がするでしょ。びっくりしてパニックになっちゃうの。

モニターの下を何気なく歩いていた時に、急に頭の上でチャイムが鳴ると、飛び上がる

ほどびっくりするわよ。予告無しなんだもの、驚いて当然よね。訪問者があるたびに鳴

るの。

地震の揺れと同じで、この音にもなかなか慣れないわ。お~、嫌だ!


その3 お皿

 先日のことよ。私、台所で食事の後片付けをしていた女主人の足元で、うたた寝をして

いたの。そしたら“ガシャン”と大きな音がして、私のすぐそばにお皿が落ちてきたの。

「寝ぼけまなこ」の私は女主人の大きな声とお皿の割れる音、さらに飛び散る破片でパ

ニックになっちゃった。私はその場から逃げようとしたんだけど、足がすくんで動けなか

ったわ。

仕方なしに危険を感じた時の奥義。例の死んだ真似をしたのよ。そしたら、女主人がや

さしく私を抱き上げたの。彼女は私に破片が刺さったのじゃないかと心配したのね。

危険な場所からは脱出できたけど。続きがあるのよ。実は私の体に血がついていたの。

女主人は慌てて怪我の場所を探してくれたけど、私は怪我などしていなかったわ。

血は女主人の指から出ていたのよ。大した怪我ではなかったから良かったけど、こんな

の初めての経験でしょ。ほんとに私、ビビッてしまったわ。


それにしても、平穏な日常の中にも恐怖を覚える悪夢の瞬間は潜んでいるのね。

まさに「恐怖は突然、やってくる」クワバラ、クワバラ。
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「龍のなみだ」と六人の僧

2013-09-02 08:01:41 | 日記



昔、布教と修行のため、托鉢をしながら全国を行脚している六人の僧がいました。

ある山里の集落に足を踏み入れた時のことです。目がくらむばかりの稲妻と大音響の

雷が鳴ると同時に、大粒の雨が降り出したのです。雨足のあまりの強さに六人の僧は、

近くの大きな屋敷に飛び込みました。


一の僧:ごめんください!急な雨で難儀をしています。雨が小降りになるまで、軒先

     で雨宿りをさせてください。

二の僧:返事がないが、留守なのかな?待てよ。この屋敷には何やら悲しい雰囲気が

     漂っているぞ。何かあるに違いない。

三の僧:雨音にまぎれて人の泣き声が聞こえるな。

四の僧:無断で悪いが、軒先伝いに庭の方に回ってみることにしよう。


広い庭越しに僧たちが目にしたのは、座敷で数名の男女が泣き崩れている姿でした。


五の僧:突然、おじゃまして申し訳ありません。雨宿りをお願いしようと思ったの

     ですが、深い悲しみに打ちひしがれているご様子を見て、声を掛けさせ

     てもらいました。

六の僧:皆さんのお悲しみの原因はその小さな棺にあるのですか?私たちは6人の修

     行僧です。もしかしたらお役に立てるかもしれません。

     差し支えなければ、お話ください。

屋敷主:まずは座敷にお上がりください。さて、私どもは子宝に恵まれなかったのです

     が、15年前、屋敷の前に可愛い女の赤児が置かれていたのです。

     添えられていた手紙には15年後の今日、受け取りに来るので大事に育てて欲

     しいと書かれていました。村一番の器量良しで、気立ての良い娘に育ったの

     に、今更返すことなどできません。

     そこで、ここにいる親族と相談して、眠り薬を飲ませて今日一日をやり過ご

     そうと考えました。娘を取り返しに来た者に「娘は死んだ」と思わせたかっ

     たのです。

一の僧:手紙に親の名前は書かれていなかったのですか?

屋敷主:「龍」と書いてありました。先ほど、私どものところに龍神が舞い降りてきて、

      棺を見たとたん、「大事に育てて欲しいと頼んだのに、娘を死なせてしま

      ったのか。お前たちの罪は重いぞ、この村に大雨を降らせ、土砂崩れで村

      を埋め尽くしてやる!」と言って姿を消したのです。

      そのすぐあとに、この大雨が降りだしました。娘は龍神の子だったのですよ。

      私どものわがままで村が全滅してしまいます。娘を揺り起こそうとしました

      が、目を覚ましてくれないのです。本当に死んでしまうのではないかと心配

      でたまりません。私たちが浅はかでした。

      このままでは村も娘も失ってしまいます。どうしたらよいのかわかりません。

二の僧:龍神様は、ほかに何か言いませんでしたか?

屋敷主:そういえば、「お前たちが救われる道はひとつだけだ。六人の修行僧を探し出

     せ」と言いました。そうだ!皆さまは六人の修行僧ですね。

     もしや、龍神が皆さまをここへ導いたのでは・・・私どもが間違っていました。

     どうか娘を眠りから覚まし、龍神のもとへお連れください。

     私どもはどのようなお手伝いでもいたしますから。

三の僧:分かりました。では、棺の中を見させて頂いて良いですか?何か手立てが見つ

     かるかもしれません。



六人の僧は棺を開け、何やら話し始めましたが、その言葉は周りにいる親族たちには

理解できないものでした。成り行きを見守るばかりです。突然、まばゆい稲妻と雷鳴

が響き渡りました。やがて静寂が訪れた時、ようやく棺から僧たちが離れ、かたずを

飲んで見守っていた人たちに語りかけました。


四の僧:棺の中には、もう娘さんはいません。娘さんは実の親である龍神様のもとに

     帰りました。あなたがたが注がれた深い愛情に対し、娘さんは心から感謝

     していましたよ。

五の僧:娘さんは自分の身代わりとして玉を置いていかれました。今、棺の中にあり

     ます。

六の僧:これは「龍のなみだ」という玉だそうです。この玉を娘さんだと思って、

     大切にしてくださいね。

屋敷主:そうですか。娘は実の親の元に戻ることができたのですね。本当に良かった。

     私どもの愚かな考えで、娘を死なせてしまったのではないかと不安でなり

     ませんでした。「龍のなみだ」を娘だと思って大切にします。

     ところで、娘はいつ龍神の元へ帰ったのでしょうか?せめて、お別れの言

     葉をかけたかったのですが。

一の僧:先ほどの稲妻と雷、あの瞬間に戻られたのです。みなさんは稲妻が光った時

     に、その光の中に娘さんを見たはずですよ。

     あの時、娘さんがお別れの挨拶をしたのです。

二の僧:その時に流した涙がこの「龍のなみだ」になったのです。

屋敷主:そうだったのですか。ちゃんとお別れの挨拶をしてくれたのですね。

三の僧:龍神様は怒りを収め、こちらに新しい娘さんを授けると言っていましたよ。

     この雨も、まもなく降り止むでしょう。土砂崩れも起きずに済みそうですね。



外はいつの間にか青空になっていました。六人の修行僧たちは屋敷の人たちに見送ら

れて旅立ちました。それから数日後、屋敷の前に元気な女の赤ん坊が置かれているの

が見つかりました。赤ん坊が入ったカゴに手紙は入っていませんでした。

屋敷の主人たちは六体のお地蔵さんを村の入口と屋敷の庭に建立し、お参りを欠かさ

なかったそうです。
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