ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

茨城味自慢:行方(なめかた)市の「セリ」をご賞味あれ!

2022-02-21 08:15:56 | 日記

 

 

日本原産の野菜は独活(うど)や、三つ葉、蕗(ふき)、山葵(わさび)、自然薯など

十種類もありませんが、この仲間に芹(せり)があります。春の七草として正月料理に

は欠かせませんね。セリの国内生産量(2020年度)は1位宮城県(40.7%)、2位茨城

県(22.0%)、3位大分県(13.0%)で、3県合わせて約76%を生産しています。茨城県内では

霞ケ浦と北浦に挟まれた行方市が、湖の水と豊富に湧き出る地下水を生かしたセリ産地

であり、「茨城県銘柄産地」に指定されて、品質の高いセリを全国各地に出荷しています。

行方市では、水稲(すいとう、水田で栽培)やレンコンの後に栽培する水田の二毛作栽

培が主となっています。セリは夏に花をつける植物で、春先に柔らかい芽をグングン伸ば

します。セリが美味しいのは、その若く柔らかい茎葉の部分なので、旬の時期は2月から

4月の春となります。行方市では豊富な地下水のおかげで10月中旬から翌年の4月下旬ま

で出荷しています。

 

セリはセリ科の多年草で、日本全国の山野に自生しています。古く奈良時代にはすでに食

用とされていた記録が残されています。栽培も昔から行われ、水田稲を刈った後やアゼな

どにも沢山生えていたりします。現在は水耕栽培のセリが通年で出回っています。「セリ」

(競り)の名は葉っぱが密生して、競い合うように生長するのが由来と言われています。

セリも消費者が受け入れやすいように、香りも食感もやわらかいものを選抜してきたとい

う経緯があります。一方、野セリは香りが強く、セリらしい味がすると好む人もいますが、

個性が強すぎると他の食材との相性も難しくなり、セリ料理の主力は鍋物なので、香りが

強すぎるからと嫌がる人もいます。

 

<セリの収穫作業>

セリは僅かながら畑栽培もあるのですが、コメ作りの田んぼと比べて深い「セリ田」とい

う田んぼで栽培されるものが圧倒的に多いです。現在は完全水耕栽培のセリも市場に出回

っていますので、将来の勢力図は変わるかもしれませんが、ここでは行方市のセリ田栽培

の様子を紹介します。

1.種セリの植え付け

セリはランナーや、脇枝を除き、真ん中の葉を2~3枚だけつけて出荷します。残されたラ

ンナーを「種せり」として使います。ランナーは節ごとに発根しかけた突起がありますの

で、この突起の前後で切断して挿し穂とします。この挿し穂を、その突起が埋まるように、

田植えと同じ要領で植え付けます。種から育てるより品質が安定します。植え付けは4月

中旬から6月上旬です。

2.セリの収穫

7~9月頃になると、種せりが育って70~80センチぐらいに伸び、下にランナーがたくさん

生えている状態になります。セリの収穫は、ウェットスーツを着て、水に浸かったセリを

中腰になって根っこから引き抜き、ザブザブと水の中でゆすぎます。地下水は14~15度あ

るので、たとえ吹雪の中でも寒さはあまり気にならないそうです。それより、泥の中に手

を入れて、根をかき分けるようにして収穫するので、握力がなくなり、それが大変だそう

です。水の中でザブザブと泥を落としたら、更に豊富な地下水を使って収穫したセリ本体

をきれいに洗います。

3.出荷

ランナーや古い葉を外して調整し、太いせりは10~12本、細いと20本くらいをクイックタ

イなどで束ねて100gにして出荷します。正月に需要があるので、セリ農家さんは、12月31日

も元旦もセリ作りをしています。種セリの植え付けをずらす(暑い時期は30日で収穫できる)

ことで、長い収穫期間を確保しています。

 

<セリ田栽培と水耕栽培の違い>

(1)寒風下でも屋外のセリ田に浸かって作業するのと、快適なビニールハウス内での作業

   の違い。但し、暑さに弱く枯れやすいので水耕栽培の温度管理には苦労する。

(2)水耕栽培は通年で収穫できるから旬がない。大分県には東京にも出荷している日本一

   の規模を誇る大きなビニールハウスがある。

(3)水耕栽培のセリは苦みがなく柔らかいので、サラダやおにぎりに向いている。セリ田

   のセリはサラダもOKだが、どちらかというと鍋物が中心で食されている。

 

<セリの栄養価と効能>

生のセリ100gあたりのカロリーは17kcalですが、栄養素は豊富に含まれています。

①「β-カロテン」は抗酸化作用があるため、老化や生活習慣病の原因とされる活性酸素の害

  から細胞を守ったり、免疫機能を整えます。

②「ビタミンK」は 血液を凝固させ止血する、また、骨にカルシウムが沈着するのを助け、

  骨からのカルシウムの流出を防ぎ丈夫な骨を維持する。

③「葉酸」は、たんぱく質や細胞をつくるときに必要なDNAなどの核酸を合成する働きがあ

  り、胎児の細胞分裂が盛んな妊娠初期などにとくに重要な栄養素です。

④「カリウム」は細胞の状態を正常に保つ働きをします。細胞外液に存在するナトリウムと

  バランスをとり、浸透圧を調整します。また、ナトリウムを体外へ排出することで血 圧

  を下げる働きもあるので、高血圧やむくみの予防に役立ちます。

⑤「食物繊維」は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があります。善玉菌を増やして腸内環境

  を整えたり、糖の吸収を抑えたり、コレステロールを吸着して体外へ排出する働きがあ

  ります。また、食物繊維をバランスよく十分にとることで、便の量を増やしたり、排便を

  促して便秘を防ぐ効能もあります。

 

<セリの豆知識>

1.セリは生薬:生薬名を「水芹(すいきん)」。去痰、緩下、利尿、食欲増進などの効果が

  あります。神経痛やリュウマチ、小児の解熱剤、黄痘などに用いられます。

2.毒ゼリに注意:野生種には区別が難しい毒ゼリがあります。シクトキシンという猛毒があり、

   痙攣や呼吸困難で死に至ることもあります。

3.観賞用のセリがある:五色葉セリと言ってピンク、クリーム色のカラフルな斑入り品種で、

   繁殖枝で広がるように生育し、グランドカバーや寄せ植えに良い。特に春は 葉色が鮮や

   か、初夏頃に小さな白花を咲かせる。

4.香気成分はファイトケミカル(フィトケミカル)です。植物が持つ自分自身を守る力で

   強い抗酸化力があります。セリの香気成分には保温、発汗作用があり、冷え性に良い。

   又、鎮静効果、血栓予防、肝機能強化が期待できる。

5.セリは臭みをとる効果があるので鴨鍋やきりたんぽには欠かせない食材です。

 

<行方のセリ農家さん>

行方市のセリ栽培は50年ほど前の昭和の時代からです。セリ農家さんのお話しを紹介します。

「うちは40年前から始めました。基本は全てが手作業で、何十年も昔から変わらないです。

収穫できるセリは箱に入らなくなるから伸びすぎても駄目、でも南風が吹くと一晩で5cmも

伸びることもあるんです。12月から2月は葉先から伸びるから香りが爽やか。その後は茎が

伸びて、食感も香りも強くなる。セリは非常に傷みやすい野菜だけど、行方のセリは非常に

ハリが強く、色合いや香りも文句なしだ。セリの栽培は毎年毎年が勉強なんだ。セリの収穫

は10月上旬から翌年の5月いっぱいだ。でもセリは暮れが勝負だから、そこへ上手く収穫の

ピークを持って行くように育てないとお金にならないところが難しいね。天麩羅、胡麻和え、

卵とじ、サラダなど様々な料理に使うことができますよ。今年も美味しい行方のセリができ

ました。是非、皆さんに食べて頂きたいです」とお話しくださいました。

 

皆さんも香りがよく、シャキシャキ感覚たっぷりの行方のセリをご賞味ください。

 

    

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

茨城味自慢:純茨城の地酒「ピュア茨城」をご賞味あれ!

2022-02-10 08:57:11 | 日記

関東の中でも、農業県のイメージが強い茨城県は、あまり日本酒のイメージがある県

ではないかもしれませんね。でも、関東圏で1番の日本酒生産地なのです。酒造りにお

いて、水は日本酒の80%を超える重要な原料で、水の良しあしが日本酒の味を決める

要諦ですが、その水系が茨城県には5つ(久慈川、那珂川、筑波、鬼怒川、利根川)も

あり、しかも、それぞれの水系の水は個性の異なる味わいを有しているのです。この恵

まれた環境ゆえに、水系毎に酒造りが行われており、関東圏では最も多い41の酒蔵を有

し、おおらかな自然が育んだ美味しい銘柄酒が、各蔵元たちの努力と個性で磨かれて誕

生しています。その味は絶品!全国新酒鑑評会でも、多くの蔵元が金賞を受賞しています。

そんな茨城県で蔵元横断型プロジェクト(水系横断型といってもいいな)「ピュア茨城」

という酒造りが平成15年(2003年)にスタートしました。この酒造りプロジェクトでは

茨城県産にこだわった「酒米と酵母」を使い、各蔵元たちが自分たちの水系を使って、独

自の製法で地酒を製造して競っているのです。消費者からすれば、茨城ならではの味と、

各蔵ならではの味わいを飲み比べられるというわけです。今回は「ピュア茨城」という、

20年近い歴史を有する、もっとも「茨城県」を堪能できる地酒の紹介です。

 

<茨城県の地酒造りの歴史>

10世紀ごろに関西で日本酒の原型ができ上がったのが日本酒造りの元々の歴史ですが、

そこからさかのぼること百年後の平安時代に、この茨城の地で酒造りを始めた日本最古

の酒蔵が今も操業しています。平安時代の創業といわれる笠間市の須藤本家です。850年

を超えた現在も酒造りを続けているその歴史は、茨城の酒の味の保証人でもあります。

しかし、現在のような洗練された地酒造りが定着したのには大きなターニングポイント

がありました。それは徳川家康の息子の一人である結城秀康が茨城に拠点を置き、当時

の本場関西の技術を導入したことです。これにより、茨城県の地酒はより洗練されたもの

となったと言われています。そして現在においても蔵元数が関東圏随一の酒造りが続い

ているのです。

 

<茨城県を代表する酒蔵>

茨城県の蔵元たちは、それぞれの水系で独自の原料、独自の製法と言う形で個性を磨いて、

銘柄酒を世に送り出してきました。代表的な酒蔵のほんの一部を紹介します。

1.府中誉:石岡市に蔵を構える酒蔵。明治・大正期の酒米「渡船」を、筑波山麓の田ん

       ぼで復活栽培しているのが特徴。この酒米で仕込んだ吟醸酒「渡舟」を世に送り

    出しています。また「太平海」も府中誉の代表銘柄。

2.井坂酒造店:常陸太田市に蔵を構える酒蔵。江戸末期の文政元年(1818年)に創業。

    明治三十二年建築の蔵で、味のある日本酒を製造しています。名酒「日乃出鶴」

    や「里美人」を醸しています。

3.吉久保酒造:水戸市の酒蔵。約230年の歴史が紡ぐ、伝統と革新の酒造りが特徴。

    「水戸黄門も愛した」という水を仕込み水に使うなど、吉久保酒造独自の酒を醸

    しています。代表銘柄は「一品」「百歳」。

4.竹村酒造店:常総市に蔵を構える酒蔵。ピュアーウォーターで米の味を引き出すのが

    特徴。一度味わうと忘れられないような、竹村酒造店独自の味わいを実現してい

    ます。代表銘柄は「瑠璃」「京の夢」「富士龍」「必勝」。

5.武勇結城市に蔵を構える酒蔵。創業は慶応三年(1867年)。江戸時代・慶応年間よ

    り続く歴史を、蔵元自らが酒造りの先頭に立ち引っ張っています。名酒「武勇」

    を世に送り出しています。

 

<日本酒にまつわる豆知識>

1.日本酒を冬に仕込む理由:日本酒は、「寒仕込み」といって、11月から3月の厳寒期

   に仕込まれます。 この手法は江戸時代からです。徳川幕府が、米価を安定させるた

   め、寒造りを推奨したのです。理由は①原料の「お米」が秋に収穫されるから、

   ②働く人を集めやすかったから、③醗酵に向いているから、日本酒は麹菌の働きに

   よってつくられますが、低温でゆっくりと時間をかけて発酵させると、質の良いうま

   い酒になるのです。現在の大手酒造メーカーは温度をコントロールして四季で醸造

   しています。

2.日本酒造りのお米について:お酒造りに使うお米は普通に食べるお米(飯米)とは違

    って、酒米(酒造好適米)で造ります。外観の違いは、飯米は小粒で透明ですが、

   酒米は大粒で米の中心に心白(でんぷん)があります。タンパク質が少なく、水を

   吸収しやすく解けやすいという特徴があります。飯米は玄米の外側のぬかを精米し

   て白米として食べますね。酒米も削って(磨いて)使いますがこの削りの程度を表

   したものが精米歩合といわれています。つまり、「精米歩合40%」=玄米を40%残

   して60%磨いているということです。お酒造りの最初の精米工程の歩合でお酒の味

   が変わってくるのです。

3.日本酒の賞味期限:栓を開けなければ長持ちします。光に当たると変質が早いので、

   紙に包み温度の低い場所で保管すれば、1年ほどは美味しく飲むことができます。

   でも1年が過ぎたからと言って飲めなくなる訳ではありませんけど、1升ビンは開栓

   したら小分けして保存がおススメです。生酒に関しては賞味期限が明記されている

   ものが多いので、早めに飲んでください。

 

<酒造りプロジェクト「ピュア茨城」>

現在茨城県で操業中の蔵元たちは、懸命な努力でそれぞれの銘柄酒を世に送り出していま

すが、なんといっても、茨城県産・日本酒のブランド力の弱さが長年の悩みでした。そこで、

県と蔵元たちは「茨城県産の米、茨城県産の酵母を使った純茨城産の酒という独自ブランド

を造れば、茨城県産のイメージアップの底上げができ、販売の拡大を計れる」と考え開発に

着手しました。そして長い歳月をかけて開発した結果、ついに茨城県産初の酒造好適米とし

て認められた「ひたち錦」、そして県産の「ひたち酵母」が誕生しました。この「飛車」

「角」を手中にしことでプロジェクト「ピュア茨城」がスタートできました。「ピュア茨城」

を名乗れるのは、条件として「ひたち綿」と「ひたち酵母」を使うということ。そして参加

する各蔵元はそれぞれの水系の水と技で「純茨城の酒」を造り出すという企画です。ですか

ら、各蔵元は、水と技で個性を表現し、香味の違いを実現しなければなりません。この純国

産のブランド日本酒造りには県内の41の蔵元のうち20の蔵元が参加しています。当然のこと

ですが、蔵ごとに受け継がれる伝統の技術や使う水の違いが、味に個性を生み出します。

その地酒を「純茨城の酒」(特定名称酒)と呼んで茨城県内外に出荷を行っています。

 

(1)すっきりとした日本酒に最適な酒米「ひたち錦」の育種

これまで茨城県で栽培されていた「美山錦」「五百万石」などの酒造好適米は、熟期や耐倒

伏性など栽培特性および品質に難点がありました。一方、酒造組合から出ている「純茨城の酒」

造りの強い要望という背景から、茨城県農業総合センターが生産・実需の両方から、茨城県に

適する高品質で栽培しやすい酒米の育成を開始しました。こうして6年の歳月をかけて茨城県

で初めて育成された酒米品種の「ひたち錦」は誕生し、平成13年に奨励品種として採用された

のです。粒の大きさ、麹菌が破精込みやすい心白、雑味を生じさせるタンパク質の少なさなど、

酒米に向いた品質が特徴で、キレのある、スッキリとしたタイプの日本酒を造る際に適しています。

(2)茨城県にしかない「ひたち酵母」

茨城県工業技術センターが4年の歳月で、茨城県にしかない独自の酵母として平成11年にYS44号

(名称公募で「ひたち酵母」と決定)の名で開発されました。①発酵力が強い②バランス良い

香り③非常に使いやすい④アミノ酸も出にくいので、清酒の軽い仕上がりが期待できる といった

メリットが確認できました。そして杜氏の評判も良かったので、平成15酒造年度から参加した蔵

元に配布されました。この酵母は本格焼酎用酵母としても使用されています。

 

<ピュア茨城の参加蔵と商品名>

全てではありませんが、水系別に参加蔵元と商品名を紹介します。

1.久慈川水系:岡部(合名) 「松盛」・(株)剛烈酒造「剛烈」・檜山酒造(株) 「千姫」他

2.那珂川水系:吉久保酒造(株)「一品」・明利酒類(株)「副将軍」・木内酒造(資)「菊盛」

3.筑波山水系:廣瀬商店「白菊」・ 稲葉酒造場「男女川」・ 浦里酒造店「霧筑波」他

4.鬼怒川水系:(株)武勇「純米酒」・野村醸造(株)「紬美人」

5.利根川水系:愛友酒造(株)「愛友」・青木酒造(株)「御慶事」・萩原酒造(株)「徳正宗」

 

霧筑波のピュア茨城には「しずく」「蔵なま」「秋あがり」3部作の商品があり、季節ごとに

微妙に変わる風味を楽しんでもらえるように企画したシリーズ品がありますが、他の蔵元に

も独自の企画品があります。他にも水系別飲み比べセットなど、工夫した企画品もありますよ。

 

<「ピュア茨城」の日本酒かどうかを見極める2つの方法>

1)正面のラベル上部に貼ってある青色『ピュア茨城』シール!

2)「純茨城の酒」と書かれたボトルの首にかけられたネックタグ!タグはクラフト紙、紐

  の部分が藁っぽい仕様になっています。

「ピュア茨城」が誕生した当初は、硬質なお米であるひたち錦の特性から、味のりの薄さが

指摘されたこともあったそうです。誕生から二十年近い歳月を経て、米質を使いこなす各蔵

の技術も向上し、使い慣れてきたこともあって、蔵ごとの個性が際立ってきた「ピュア茨城」。

茨城っぽさが滲み出る「ピュア茨城」。

 

茨城県に立ち寄った際のお土産として、選んでもらえると嬉しいな!!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする