ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

茨城味自慢:茨城は自給率100%を誇る「にら」の主要生産地

2023-05-22 07:16:23 | 日記

茨城県は、全国3位の「にら」の生産地です。特に生産量が多いのが小美玉市です。市内

小美玉地区のJA新ひたち野 小川ニラ部会のメンバーが栽培するにらは、通称「小川のにら」

と呼ばれています。現在は年間を通して栽培を行っており、肉厚で葉幅が広く茎も太く、

甘みがあると人気です。露地で栽培され、元気良く育った小川のにらは、収穫後は予冷設備

ですぐ低温状態としているため、鮮度が良いのも特長です。部会では、土壌検査や栽培講習

会を定期的に行い、施肥管理の見直しや有機質肥料の投入など、環境と調和した農業に取り

組んだ結果、生産者全員がエコファーマーの認定を受けています。

他に、美野里地区では、ハウスなどの施設で栽培をしています。環境に配慮し、たい肥を活

用した健康的な土づくりを実践するとともに、土壌中に蓄積された肥料成分を診断してから

施肥量を決定。さらに、GAP(農業生産工程管理)を導入し、安全・安心な生産管理を実

施しています。近年は、できあがったにらのなかでも、特に品質に優れたにらを厳選し、

「美野里緑王」として出荷しています。小美玉市ではこうした各地区のブランドにらをより

多くの人々に美味しく食べてもらうため、日本語、英語、中国語の三か国語版のレシピ集を

作成し、国内外にPRしています。古来、にらはアジア地域を中心に栽培され、日本でも

「古事記」や「万葉集」に名前が出てくるなど古くから親しまれてきた野菜です。長らく薬

用として食されていたにらは、強い臭いの元となるアリシンをはじめ、βカロチンや各種ビ

タミン、葉酸など健康増進に役立つ栄養が多く含まれています。日本のにらは自給率100%

の野菜ですから輸入はしていません。今回は茨城県自慢のにらを紹介します。

 

<にらとは>

にらは野菜のなかでは数少ない多年草です。ニラのにおい成分の硫化アリルやアリシンは、

身体を温める効果や血行をよくする効果があります。にらはこうした生薬として使用され

るほど身体によい野菜ですが、ビタミンAを豊富に含む健康野菜でもあります。比較的寒さ

に強く、夏季、気温が高くなると生育は早くなりますが、葉が細く、薄くなります。土壌

はあまり選びませんが、酸性では生育が悪く、好適土壌pHは6~7です。花芽は長日・高温

条件で分化し、7~8月にトウ立ち・開花します。にらは冬、低温・短日で休眠に入り、地上

部は枯れます。花にらは比較的高温を好み、年中トウが立ち、それを食用にします。種まき

から収穫まで1年掛かりますが、一度植えれば数年収穫することができ、株分けして植え替

えるとさらにまた収穫できるので、家庭菜園に植えておくと重宝します。にらが全国に広ま

ったのは第二次世界大戦後からといいます。

 

<にらの生産量ランキング>(2020年)

1.世界の生産地ランキング

  1 位は中国86万9,839トン(19.1 %)、2 位マリ68万4,653トン(15.0 % ),3 位は日本

  51万2,934トン (11.2 % ),そして4 位韓国42万4,457トン( 9.3 %)です。

2.国内の生産量ランキング

  1位高知(香南市)14,500 (t)(24.9%)、2位栃木(鹿沼市)10,900 (t)(18.7%)

  3位茨城(小美玉市)7,780 (t)(13.3%)となっています。

 

<にらの品種>

食用のにらは葉にら、黄にら、花にらの3種類に大別されます。

(1)葉にら:緑の葉を食べるにら。一般にスーパーに並んでいる葉が緑色のにらを指

       します。葉の太さによってさらに大葉タイプと小葉タイプに分けられま

       すが、現在では大葉タイプが主流で、小葉のにらはほとんど作られてい

       ません。

(2)黄にら:軟白栽培されたにら。岡山県産の黄にらが有名です。葉にらの苗に光を

       あまり当てないようにし育てたものが黄にらです。光合成が阻害されて

       葉緑素が作られにくくなるため、葉が黄色く見えるようになります。

       葉にらに比べてにら特有のアクが少ないのが特徴で、ほのかな甘みもあ

       ります。

(3)食用花にら:花茎を収穫したにら。茎だけでなくつぼみも食べられます。食感は

      葉にらよりやわらかく、甘みがあります。火を通すと花にらの香りと甘み

      がより強く引き出されるため、炒めものやスープなどに適しています。現

      在では、マルイチポールやテンダーポールといった花にら専用の品種が開

      発されています。

(4)行者菜:宇都宮大学農学部が「行者にんにく」とにらを掛け合わせて育成したも

      の。にらのような食感と、行者にんにくのような風味を持つとのこと。

      山形県や青森県、岩手県、北海道など、主に東北地方で栽培されています。

 

※ちなみに、同じ「花にら」の名前で別種の園芸品種が存在しています。私の散歩道で

 も普通に見かけます。花茎の先に白や薄紫、水色の花を一輪ずつ咲かせます。毒を持

 っており食用にはできません。

 

<にらの豆知識>

1.にらにも旬がある。

  今では露地栽培やハウス栽培など1年を通して生産される葉にらですが、本来の旬の

  時期は春の3月ごろをいいます。旬の時期に収穫する葉にらは香りが強く柔らかく栄

  養価も高いので、春の季節に取り入れたい食材です。通年栽培をしていますから、

  4月~10月にかけては夏にらが、11月~3月にかけては冬にらが出回ります。

2.お疲れ様にはにらのお粥・餃子がおススメ!

  生のまま食べると少し辛味を感じると思いますが、あの辛味のおかげで体が温かくな

  ります。ですから、胃の弱い方にはにらのお粥がお勧めです。冷房で体が冷え、夏バ

  テで食欲が湧かない時は、にらを食べることで体を温めて血行も良くなり、胃腸の働

  きも高めてくれます。アリシンはビタミンB1の吸収を高めることが知られていますの

  で、豚肉と一緒に摂取すると疲労回復に効果的です。コロナ禍と長梅雨で、心身共に

  疲弊している方も多くいらっしゃると思いますが、ぜひ餃子などでたくさんのにらを

  食べて、これからの猛暑の時期を健康的に乗り切りましょう。

3.大量消費県が遠い高知県が生産量1位のわけとは!

  パーシャルシール包装技術により遠方へもいきいきと新鮮なにらを届けられることが

  可能になりました。この技術はにらやネギの鮮度を保つ高知県農業技術センターの特

  許技術です。空気をわずかに通す微細な透き間の空いたシールで、袋内を低酸素・高

  二酸化炭素状態にすることで、にらの呼吸作用を抑制し、長期間高い鮮度を保持する

  ことができます。

4.にらの栄養と効果

  切ったときにツンとする独特の香りが、にらの最も注目すべき栄養素であるアリシンで

  す。硫化アリルのアリシンは、糖質代謝に必要なビタミンB1の吸収を促進し効果を持続

  させます。そのためビタミンB1を豊富に含む食べ物と相性がよく、エネルギー代謝を活

  発にして疲労回復やスタミナ増強効果が期待できます。また血行を促進するので、体が

  温まり冷え性改善や肩こり解消につながります。抗酸化作用のあるβカロテンやビタミン

  Cを含むのに加え、強い殺菌作用を持ちます。ナチュラルキラー細胞を活性化させること

  で免疫力を高め、発ガン防止効果があると言われています。カリウムも含まれており、

  余分なナトリウムを排出して血圧を降下させる野菜です。加熱すると香りは和らぎますが、

  栄養・味が共に下がるのでさっと加熱して食べるのがよいでしょう。アリシンは根元に豊

  富に含まれるので、よく洗い除かずに食べることが大切です。花粉症にも良いという報告

  も出ています。

6.にらの選び方

  先ずは根元を持ったときにピンと立つのが上質です。そして葉先がピンと張りみずみずし

  く、葉の緑色が濃く色鮮やかなものを選びましょう。葉先から水分が抜けていくので、古

  くなればしおれて元気がなくなります。また茎の部分が変色しているものや、葉先が濡れ

  て色が変わっているものは収穫から時間が立った証拠です。

7.にらは冷凍保存すると栄養素が9倍にアップする。

  湿らせた新聞紙でくるんで、冷蔵庫の野菜室で保存すれば、2〜3日ほど日持ちします。

  しかし、冷凍保存するとにらに含まれるアリインという栄養素が、なんと9倍にもアップ

  するのです。アリインは、ニンニクやニラ、ネギに含まれる成分で、イオウを含むアミ

  ノ酸の一種。血液をサラサラにし、疲労回復の助けになる効果が期待されています。にら

  を冷凍保存する方法はとっても簡単!ニラを料理に使いやすいように葉先、根元といっ

  た具合に切り分け、チャック付きの保存袋に入れるだけ!その際、袋内の空気を抜くよ

  うに平らに入れるのが上手く冷凍保存するポイントです。

  ※冷凍したにらは生の状態に比べると多少味や風味が落ちてしまうので、解凍して生の

   まま使用せず、冷凍したまま料理に活用してください。

8.にらは部位によって栄養価が少し異なる。

  葉先にはビタミンA、C、Eが豊富で、根元には先ほどご紹介したアリインが豊富です。

  根元に関しては、なんと葉先の約4倍もアリインが含まれており、糖度も高いので甘みも

  感じやすいです。また、根元に多く含まれるアリインは、切る、潰すなどでアリシンへ

  と分解されます。このアリシン、にら特有の食欲をそそる匂いの元となっているため、

  細かく切って使うとお料理の良い風味づけになってくれるかと思います。アリシンはア

  リイン同様、疲労回復や血液サラサラ効果に加え、ビタミンB1の吸収率もアップしてく

  れるので、疲れにくい体作りにも役立ちます。葉先にはビタミン類が豊富なので、根元

  とは違いザックリ大きく切って栄養の流出をなるべく防ぐようにしましょう!

  葉先ザックリ、根元は細かく、にらを切る際はぜひ切り方を変えて楽しんでみてください♪

 

<にらの栽培>

にらの産地として有名な1位の高知県から4位の宮崎県まで一年中生産をされており、5位の群

馬県は主に12月下旬から6月上旬までを主な生産期間にしています。にらは一度植えると年3回

程収穫できる野菜です。主な生産地では通年をとおして出荷できるよう体制をとり生産をして

います。ハウス栽培は3回から4回収穫ができて、露地栽培は2回から3回収穫を目安に生産され

ています。にらは一年中作れるので、安定した収入が得られることから専業農家が多くいるこ

と、そして100%自給率も自慢ですね。

 

「JA新ひたち野 小川ニラ部会 」の農家さんが紹介しているにらの栽培です。

1.種まき

  にらは株分けしたものを植えて増やしてくのが一番簡単で確実な方法ですが、種から育て

  る場合は3月下旬から4月上旬に箱蒔きし保温しながら育てます。10~15日ほどで発芽しま

  すので3ヶ月ほど育てたら苗を畑に植え付けます。

2.植え付け

  植え付けは5月下旬から7月までの間に行い、事前に1㎡あたり100g~150gの苦土石灰を施し、

  堆肥を蒔いて土作りを済ませます。1ヶ所に4~6本まとめて植え株間は20~25㎝とします。

  また植え付け時には水をたっぷりと与えておくと根付きが早まります。

3.追肥・土寄せ

  苗の植え付け後、2週間もすると大きく成長してきますので、追肥をし軽く土寄せしておき

  ます。その後は収穫後を目処に追肥を行います。肥料分が不足すると生育も遅れるため、

  かたく筋っぽいニラとなります。

4.収穫

  夏を越すと一年目の苗でも大分体力を付けていますので収穫が可能となります(ただし植

  え付け2年目から収穫した方が株は元気に大きく育ちます)。収穫は新葉が20㎝ほどに成長

  した株を根元から包丁などで刈り取って行います。根を残しておけば収穫後も数週間もす

  れば再び葉が生い茂り収穫することができます。大まかな目安としては年4,5回収穫するこ

  とが可能です(プロの農家の方は品質を確保する為、収穫を年1,2回としている方が多いです)。

  2年目以降は春先から収穫すことができますが、葉の勢いが弱まってきたら追肥をしたり、

  掘り起こして株分けをします。株分けの大まかな目処は3~4年です。また夏が過ぎた頃に収

  穫を控え、株を休ませ来年に向けて体力を蓄えさせると来年元気に葉を茂らせてくれます。

  なお秋口には白いきれいな花を咲かせますが、花が咲くとそちらの方に体力を消耗してしま

  うので株が弱ってしまいます。花茎が出たら早めに刈り取るようにします。

5.株分け

  株分けは植え付け3年目を目処に行います。こうして株を新しく更新することで、元気で美味

  しいにらを収穫し続けることが可能となります。

 

(にら栽培のポイント)

①一番は土作り:にらの土作りにはチッ素成分がたくさん必要です。小美玉市は養鶏場が多く鶏糞
   にはチッ素が多く含まれているので、地元の鶏糞たい肥を使って土作りをしています。
②生産工程管理:栽培履歴などは全てタブレットで一括管理している。
③にら農家の悩み:機械化(手作業が多い)したい。現在にらの収穫は全て手作業です。その理由は、
   どうしても黄色い葉の部分が出てしまうので、そこの部分は人の目でしっかりチェックして選
   別しながら収穫しているからです。
④袋詰め作業も手作業です。収穫されたにらはまず100gごとにテープで縛って包丁で切ります。それ
   を十派にして秤で1kgを測ってから袋詰めします。すべて手作業な上に再度黄色い葉が混じって
   いないか人の目で確認ししています。

 

現在、葉物野菜類の飲食店納品は減っているのです。しかし、スーパーなど小売り、流通は増産要

請が出ている環境なので安定生産が求められています。現状のニラの市場価格は、冬場の価格が高く、

春から夏場は半値以下になります。「にら農家は、冬場の2ヶ月で稼いで、あとは、トントンか赤字

の経営といわれています。にら栽培の機械化によるコストダウンは必須の課題」なのだそうです。

 

是非茨城県自慢のにらをご賞味あれ!

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茨城味自慢:茨城県の伝統野菜4品目を紹介します!

2023-05-08 07:18:18 | 日記

農林水産省のホームページでは、伝統野菜を「その土地で古くから作られてきたもので、 採種を繰り返していく中で、

その土地の気候風土にあった野菜として確立されてきたもの」と説明しています。ここには「日本に自生していた野

菜」という縛りはありません。一方で今、私達が目にしている野菜はほとんどが、海外から伝播されたもので、それ

を、各地の気温や風土に合うように、数十年の年月をかけ地場の野菜として育ててきたものです。このため、都道府県

で伝統野菜の定義はかなり異なります。今の野菜作りは、遺伝子組み換え品種やF1種が主流になり、スーパーでの販売

・流通に適した、形が均一で生産効率の良い野菜へと変化しています。今回は茨城県内でこうした「儲かる野菜」から

は置き去りにされていますが、どっこい、小じんまりと継承されて、命をつないで生産されている野菜たちを「茨城県

の伝統野菜」として紹介します。

 

<茨城県農業の特徴>

茨城県の耕地面積は約17万haで全国第3位です。農業産出額は1位北海道(1兆2,667億円)、2位鹿児島県(4,772億円)

に次いで、茨城県(4,417億円)が全国3位(令和2年)の農業県です。農地は河川流域の水田地帯、台地の畑作地帯、県

北の中山間地帯といった環境に恵まれており、様々な動植物の南限北限の境となっています。このような気象条件等を

生かし、数多くの農産物が生産されています。茨城県の主要農産物は甘藷(かんしょ)、レンコン、ピーマン、メロン、

ほしいも、みず菜、チンゲンサイ、クリ、セリがいずれも全国1位の農業産出額を誇っています。他にも白菜、小松菜、

レタス、なし、落花生、ねぎ、にら、スイートコーン、ごぼう、かぼちゃ、春菊、しそ、らっきょう、みつば、そらま

め、マッシュルーム、こんにゃくいも等さまざまな野菜を産出しています。茨城県守谷市、取手市からは東京都心まで

40kmであり、長い距離でも160kmに位置しており、大消費地に近いことから重要な食料供給基地となっています。

 

<茨城県内には多様な気候環境があり、地区により適応した農作物が育つ>

茨城県の気候は太平洋側気候で夏季は多雨多湿、冬季は少雨乾燥です。沿岸部は気温の日較差が小さいなど海洋性気候

の特徴があります。内陸部は内陸性気候の特徴を持ち、夏季は、埼玉県に近接する一部地域を除き、北東気流の影響を

受けやすく、比較的冷涼です。冬季は、朝晩は放射冷却により気温が下がります。豪雪地帯に指定されている地域はあ

りませんが、南東部を除く地域、特に北西部山間部は南岸低気圧や北東気流の影響で局地的に大雪となることもありま

す。南東部の海洋や霞ヶ浦等の湖沼があることによって、栃木県や群馬県などの内陸の県と比べ湿度が高くなりがちで、

霧が発生しやすい傾向があります。また、雷も多く、県北部の山沿いや栃木県境での激しい雷の様子は有名です。

 

<固定種・在来種・F1種>

(1)固定種:品種の系統を守るため選抜した野菜の種を取り、その種を蒔いて育てた中からさらに一番よいものを選

    んで、また採種することを何世代にもわたり絶えず繰り返した結果、自然とその野菜の個性が定着し、固定化

    していったものが固定種です。昭和30年代頃までの日本の野菜はほとんどが固定種でした。

(2)在来種(固定種の一種):元は同じ品種であっても、育てる気候や土の質が違えば、野菜の特徴は元の品種から

    段々と変化していきます。気候条件の異なる日本各地の土地で栽培されたことによる「その土地の気候・風土

    に適合した野菜」が生まれます。「伝統野菜」とか「地方野菜」とも呼ばれます。

(3)F1種:現在の多くの野菜が「F1種」となります。人為的に別系統の野菜を掛け合わせて種を作ると、一世代目の

    時だけ雑種強勢によって、両親の優性形質だけが表出します。F1種は野菜の成長が早く収穫量も増大、形や大

    きさも揃うため、大量生産にうってつけの種です。ただ、雑種強勢は一代限りです。農家は毎年種を買い続け

    なければなりません。「一代交雑種」、「ハイブリット種」とも呼ばれます。

 

<伝統野菜に関する豆知識>

1.日本自生の野菜とは:

  昔から日本に自生していた野菜は多くはなく、山菜と言われる品種がほとんどです。「ウド、オカヒジキ、山椒

  (サンショウ)、自然薯(ジネンジョ)、じゅん菜(ジュンサイ)、芹(セリ)、蓼(タデ)、つる菜(ツルナ)、

  浜防風(ハマボウフウ)、菱(ヒシ)、蕗(フキ)、松菜(マツナ)、三つ葉(ミツバ)、茗荷(ミョウガ)、

  白藍(ハクラン)、ヤマゴボウ、ユリ、山葵(ワサビ)、牛蒡薊(ゴボウアザミ)、枸杞(クコ)」などの20種類

  ほどだとされています。これらの野菜は、料理の主役として使われることは少なく、薬味のような位置づけで使わ

  れています。

2.渡来の野菜が日本に定着:

  ヨーロッパや中国、アジア諸国など海外から渡ってきた数々の野菜は、日本各地に広がり、時の流れの中、採種を

  繰り返すうちに、それぞれの土地の気候風土に適した野菜として形質が固定化し、固定種として定着していきまし

  た。40~50年前までは各地で当たり前に食され、地域の食文化とも密接に関係してきました。信州の野沢菜漬けの

  野沢菜は、長野県下高井郡野沢温泉村を中心とした地域で栽培されてきた野菜ですし、名古屋名物の守口漬は、岐

  阜・愛知で栽培されていたホソリ大根や美濃干大根と呼ばれていたもの(現在は、守口大根)が今でも使われてい

  ます。しかし、大部分の固定種や在来種は、儲かる野菜作りの指向の中で、その姿を消しつつあります。

3.固定種。在来種が衰退した背景:

  ①戦後の食糧事情:国民の食糧が安定的に供給されるようになったのは、戦後の1950年代に入ってからで、その頃の

    野菜はほとんどが固定種や在来種でした。

  ②西洋型の食事への移行:やがて、経済の復興に伴い食卓も米・魚・みそ汁の和食からパン・肉・牛乳の洋食に移行し、

    これに合わせて、大根や白菜などの和食野菜から、たまねぎ、キャベツ、レタス、ピーマン、トマトなど洋食野菜

    が伸びていきました。

  ③大量生産時代の到来:高度成長期に入り、大都市への生鮮食品の安定的な供給が求められ、そこでは工業製品のよう

    に一定の量と質という均質化・規格化が求められるようになりました。固定種、在来種の最初の衰退要因と言えます。

  ④F1種(一代交雑種)の台頭:最初に作られたのは大正15年、埼玉県農事試験場で作られたナスで、野菜ではなんと世

    界初でした。この成功を皮切りに全国各地で固定種からF1種の作成が試みられていきます。経済合理性の高いF1採種

    ができた品種は、みなF1種にとって変わっていきました。固定種、在来種は一挙に衰退の道を辿っていくこととなり

    ます。F1種は遺伝子組み換え種ではありません。

  ⑤自家採種から種子購入へ:F1種は種子を購入するため、採種の手間が省けますし、その間の二期作や二毛作も行いやす

    くなります。農業のスタイルは「固定種で自家採種」から「F1種で毎年種子を購入」へと変わっていきました。

  ⑥固定種、在来種の終焉:戦後の食糧不足から脱したのが1950年代後半。それから10年経つか経たないかの期間で、日本

    の野菜はF1種に移行しました。固定種、在来種は、このまま絶滅を迎えてしまうだろうと予想されました。

4.固定種、在来種は衰退したが、どっこい「伝統野菜」として復活:

  1980年代半ば頃からの「地産地消」の流れに加え、2013年に「和食」が無形文化遺産に登録されたことが推進力となり、

  地域おこしの産品として固定種、在来種の掘り起こしが活発になされました。ここでは固定種、在来種は、新たに「伝統

  野菜」、「地方野菜」と呼ばれるようになり、単なる「地産地消」の農産物だけでなく、地域の特産品、そしてスローフ

  ード(※)という新しい切り口での需要喚起がなされています。その他にも、F1種は一代限りの収穫で、農家は翌年以降、

  継続して種を種苗会社から買い続けなければなりません。伝統野菜を作り続ける農家さんは、種子販売ビジネスから自分

  たち自身を守るためにも、自然と時間の経過の中で歩んできた伝統野菜を守り、そして育むことがこれからは重要だと考

  え始めているのです。

こうして伝統野菜として復活したのは、かつての固定種、在来種のうちの一部だけです。消滅してしまった品種も多くありま

すが、それはもう取り戻せません。日本におけるスローフードとは伝統野菜を守り受け継ぐ文化のことなのかもしれません。

伝統野菜とは「各地で脈々と受け継がれる野菜で、しかもずっとつくり続けなければ伝承することのできない、博物館に簡単

に展示できない文化遺産だ」と書き添えている方がいました。

 

 ※スローフードとは伝統的な食文化を見直し、食への関心を高める運動のこと。「早い・安い・便利」な、ファストフード

  (fast=早い)に対する言葉としてよく使われています。ファストフードは「食材の生産地や調理・加工方法が不明」「大

  量生産によるコスト削減が最重要」といった側面から、人体への安全性が疑問視されてきました。これに対し、「地元の

  生産者によって丁寧に育てられた、土地に適した食材を使ったきちんとした食事をしよう」という考え方が、スローフー

  ドです。

 

<茨城県が誇る伝統野菜>

今回、茨城県の伝統野菜として紹介するのは、レッドポアロー(赤ねぎ)、浮島だいこん、貝地高菜、里川かぼちゃの四品目で

すが、ほかにも地区の伝統野菜として、まだまだ埋もれている可能性があります。探していくつかまとまりましたら紹介します。

 

■赤ねぎ(レッドポアロー・ひたち紅っこ)

 葉鞘部分が深い赤色をした赤ねぎが、城里町(旧桂村)にはあります。旧桂村の中でも圷地区で明治時代から作られていたのが

 「赤ねぎ」。特に加熱すると甘みが増し、とろりとした食感に。その美しい色は、長時間煮込めば退色してしまいますが、軽い

 加熱ではそのままです。在来種ゆえ、種は代々自家採取。在来種は、品種改良がされていないので、虫や病気にも弱く、また赤

 い皮を傷つけてしまうことから機械での収穫はできません。また、9月下旬に播種し、翌年3~4月に赤ねぎの特徴がはっきりして

 いるものを選別して仮植。さらに5月に本植をし、10月から収穫期を迎えるというから、その長さたるや驚きです。約1年がかり

 の作業なのです。これでは販売向きではありません。現在はこの赤ネギを品種改良したもの(F1種だと思う)が、11月~3月の旬

 の時期に「レッドポアロー」や「ひたち紅っこ」の商品名で、スーパーや道の駅などで売られています。値段は白ネギと同じくら

 いです。品種改良は赤ねぎを知ってもらいたい、そして多くの人に食べてもらいたいとの想いから生まれています。在来種の赤ね

 ぎ、そして、普及用に品種改良された赤ねぎ、どちらも茨城育ちの赤ねぎには違いないのです。茨城県産の赤ネギは、食の世界遺

 産「味の箱舟」に登録されている伝統野菜です。

 

■浮島だいこん

 現在の稲敷市・浮島地区で、現在30軒ほどで作られているのが浮島だいこん。ほとんどが自家消費で、流通にのることはありません。

 葉は青首だいこんの葉に比べて黄味が強く、やわらかな色合いが畑をふわりと覆います。根の上部はすらりと細く、下ぶくれ。果肉

 はやわらかいので、漬けものなどに最適で、独特の甘みとやわらかさが際立ちます。その反面、煮物にはあまり向かず、さらには下

 ぶくれの形ゆえに抜きにくいこともあり、徐々に現在主流の青首だいこんに変わり、生産する農家も減ってきてしまったという背景

 があります。この地域でしか浮島だいこんは作れません。ほかでもこの味を作りたいと、他の地域で種を蒔いてみたものの、浮島だ

 いこんの形にはならなかったそうです。だいこんが属するアブラナ科は、ほかの種類と交雑しやすいです。同じ種を蒔いた畑のなか

 でも、青首だいこんの特徴が出るものがあるほどです。種は、浮島だいこんの特徴が顕著なものを選んで畑の端に植えかえておき、

 春になり種ができたら採取。この瞬間「浮島だいこんは在来種だったのだ」と当り前のことに気づくのです。種を作って蒔いて、実

 り、また種を採るという循環は、在来種だからできることなのです。生産者の宮本さん「最近の青首だいこんのおいしさは、浮島だい

 こんに少し近づいてきたわね」とおっしゃる。宮本さんにとって、浮島だいこんこそが真のだいこんなのです。そして、決して浮島だ

 いこんを守り続けているのではないよ、「おいしいから作るだけよ」とも続きます。伝統野菜の名にふさわしい野菜ですね。旬の時期

 は12月ごろです。購入は直接農家さんへ!

 

■貝地高菜

 高菜という漬け物用葉物野菜をご存知ですか?ピリッとした辛みが特徴の高菜漬けは、野沢菜や広島菜と並ぶ日本三大漬物菜のひとつ

 ですね。高菜は産地ごとに種類がある地域密着の野菜です。福岡の「三池高菜」、熊本の「阿蘇高菜」、三重県の「赤大葉高菜」、岩

 手の「南部芭蕉菜」、山形の「山形青菜」・・・そして茨城県の「貝地高菜」などなど、高菜が産地ごとに種類がある理由は、漬物が

 日本の食卓には欠かせない食材だったことが考えられます。貝地高菜は主に石岡市貝地地区で生産されています。江戸時代から漬物と

 して利用されていました。とうが立つ前に収穫して塩漬けすると、辛さと風味がよく、漬けても緑色が濃く残ります。現在では自家消

 費程度の生産量となっていますが、宅配での購入はできます。収穫の時期は3月ごろです。本種は耐病性強く、耐寒性にすぐれ、どんな

 土地でも良く生育し、作り易いですから、種を購入して家庭菜園で育てても収穫できますよ。

 

■里川かぼちゃ

 里川カボチャは、常陸太田市の里見地区の里川町で栽培されているピンクオレンジ色が特徴の在来種のカボチャです。標高600~800m

 の高地という環境が生みだす寒暖の差により、非常に甘味のある、舌触りのなめらかなカボチャです。昔から「里川の土手カボチャ」と

 して地域で作られてきましたが、長い歴史の中で様々な品種のカボチャと交雑して原種が失われつつあったため、平成21年度から里川カ

 ボチャ研究会(22名)を中心に、里川カボチャの品種の復活と固定化に取り組んでいます。旬の時期は9月~12月下旬。道の駅や県内の

 イオン店舗で購入できます。

 

近年は、農家の自家需要などで生存していた品種を、産地の地域おこしとして取り入れ、近傍の都市向けには地産地消商品、大都市圏向け

にはスローフード商品として売り出す戦略に注目が集まっています。農業大国茨城県もこの戦略を牽引しています。

 

「伝統野菜とはずっと作り続けなければ伝承することのできない文化遺産」だという言葉がありました。是非、茨城県の伝統野菜に触れる機

会がありましたら、茨城県の文化遺産だと想って手に取ってくださいね。

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