あれから何年経ったのだろう。思い起こせば、ひと昔も前の話だ。
窓を全開にして、信州の爽やかな空気を楽しみながらのドライブ中。
突然、霞か霧がかかったような白い群落が目に飛び込んできた。
近くの空き地に車を止めて、カメラ片手に駆け寄った。
ソバ畑のようだ。
初めて見るソバの花。小さな白い花がたくさん付いている。
これが実になって、あの旨い蕎麦に変身するのか・・・
米や麦など穀類の花は全く目立たないのに
ソバの花はどうしてこんなに可愛くてきれいなのだろう。
もしかしたら、科目が異なるのかもしれないな?
そんなことを考えながら、カメラを向けていると
白い花々の中に、チョコンと小さなバレーシューズが。
何? これは何だ?
どう見ても赤くて可愛いバレーシューズだよ。
アングルを慎重に決めて3枚だけ写した。
何しろフィルムカメラだ。残り枚数が気になる。
他にもあるのかな?実になる直前の姿かもしれない。
目が届く範囲を探してみるが、見当たらない。
いとおしいものを発見した高揚感を引きずりながら、走り去る。
すると、今度は赤いジュウタンが見えてきた。
またしても車を止めて、歩み寄る。
さっき見たソバの花とそっくりだけど、赤い。
これも初めてだから、しっかり写しておかなくちゃ。
探してみたけど、あのバレーシューズは見つからない。
近くの蕎麦屋に入店すると、「赤ソバの十割蕎麦 有ります」の張り紙。
迷うことなく注文し、初めての赤蕎麦をじっくりと味わった。
今でも、蕎麦を食べるたびに思い出すのが、あのバレーシューズだ。
あれから一度も出会えていないせいで、恋しくて仕方がないんだよ。
あの「幻の赤いバレーシューズ」が・・・・・
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