ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

大イノシシと六人の僧

2015-04-27 08:12:37 | 日記



昔、布教と修行のため、托鉢をしながら全国を行脚している六人の僧がいました。
ある村に着くと、何やらピリピリと張り詰めた気配が漂っていました。思いつめたような
表情で竹槍や弓矢を作ったり、畑の作物を大急ぎで収穫する村人たち。
怪訝に思った六人の僧は詳しい事情を聞いてみることにしました。

一の僧: 村全体に異様な緊張感が漂っているようですが、どうなさったのですか?

村人A: お坊様方、ここは危険です。本来ならば、ひと休みして頂きたいところですが、
     この村には、まもなく大イノシシの集団が作物を奪いにやって来そうなのです。
     気が荒く、隣村では多くのケガ人が出たとの知らせがありました。
     次に狙われるのはこの村です。私たちは畑を守るために戦う準備をしています。
     どうか、早く逃げてください。

二の僧: 大きいといっても、たかがイノシシでしょう?こんなに大げさなことをしなくても大
      丈夫だと思うのですが・・・

村人B: とんでもない!被害にあった隣村からの知らせによると、首領の大イノシシは尋
     常ではない大きさで、しかも凶暴なのだそうです。侮るわけにはいきませんよ。

三の僧: 異常に大きくて凶暴?もしかすると、異界のモノがこの世に迷い出てきてイノシ
      シの体に入り込み、悪さをしているのかもしれないぞ。

村人C: 私たちはこの村の開墾に全精力をつぎ込んできました。やっと安定した収穫が
     得られるようになったばかりなのです。
     何が何でも戦って畑を守らねばなりません。

村人D: お~い、山にノロシが上がったぞ!大イノシシの集団を見つけたらしい。
     いよいよこの村に向かって来そうだ。お坊様方、一刻も早くお逃げください。

四の僧: いや、我々がここに来合わせたのも何かの縁だと思います。我々にも大イノシ
      シの退治を手伝わせてください。

村長 : お坊様方、私はこの村の長(おさ)です。伝えられた隣村の被害状況から想像
     すると、私たちの手に負えない相手のようですから、正直なところ、かなり悲観
     しているのです。良いお知恵がございましたら、お教え願えませんでしょうか?

五の僧: 分かりました。大急ぎで相談して対策を考えましょう。

六の僧: やはり、大イノシシの正体は異界のモノだと思う。
      さあ、知恵を絞ろうではないか。

六人の僧はノロシが上った山との距離を見定めた後、輪になって座り相談を始めました。
村人がイノシシ対策の作業を続ける中、六人の僧は討議を終えると村長を呼びました。
説明を聞いた村長は何度も大きく頷いたあと、村人を呼び集めました。

村長 : みんな、聞いてくれ。お坊様方によると、首領の大イノシシは集団が大きくなれ
     ばなるほど、群れのイノシシから精気を吸収するので体が巨大化し、一段と凶
     暴さを増すらしい。
     だから、首領の大イノシシを他のイノシシから遠ざける必要があるのだそうだ。
     誰かイノシシについて詳しい者はいないか?

村人A: それなら、与一じいさんが適任だな。村一番のイノシシ狩りの名人だから。

竹槍を地面に立てて、防御用の柵を作っていた与一じいさんが呼ばれて、やって来ました。

与一 : ワシなんかの知恵が役に立つのかな?全く自信がないよ。困ったな~。

村長 : 与一じいさん、村の存亡の危機なのだ。なにか思い当たることはないか?

与一 : そう言われてもな。う~ん、そうだ!イノシシの奴は食べ物に貪欲だから、畑の
     ように一ヶ所にたくさん食べ物がある時は徒党を組んで行動するかも知れんが、
     食べ物が四方八方に散らばっているとテンデンバラバラに動くのではないかな?
     こんなことしか思いつかんが・・・

一の僧: 与一じいさん、お手柄です!今のお話で首領の大イノシシを孤立させる方法を
     思いつきました。大急ぎでイノシシの好物を持ち寄って広場に集まってください。

村人は各家庭からイモや大根などの食料を持ち寄って広場に集まりました。土の中から
たくさんのミミズを掘り出して「これ、使えないかな?」と持ってきてくれた子供もいました。

二の僧: 食べ物を束にして縄で縛ったり、外から中身が見える竹カゴに入れてください。
     そして、時間稼ぎのためイノシシたちが届きそうで届かない高さの木の枝に吊る
     したり、道端に置くのです。村の入口につながる道の左右に、決して一ヶ所に固
     まらないようにバラまいてくださいよ。ミミズも道の上に撒き散らしてください。

三の僧: 首領の巨体イノシシは食欲もずば抜けて旺盛だろうから、道沿いに置かれた少
      しずつの食料より、一度にたくさん食べられるこの村の畑に突進して来ると思い
      ます。でも、他のイノシシたちは食べ物に気付けば、すぐに食べようとして足が
      止まるはずです。

四の僧: そうやって一頭ずつ、バラまいた食べ物で足止めさせて、首領のイノシシと引き
      離すのです。

村長 : 首領の大イノシシだけでも村を破壊できるほどの力があると聞いていますが・・・

五の僧: 大丈夫です。首領の大イノシシは徒党を組んだ周囲のイノシシたちの精気を取
     り込んでいますから、呼び寄せたイノシシたちが離れてしまえば、精気が徐々に
     失われ、その体はドンドンしぼんでいくと思いますよ。

六の僧: おそらく一頭だけになってこの村にたどり着く頃には、少し体が大きい程度のイ
      ノシシになっていると思います。さあ!早く取り掛かりましょう

村人は野菜だけではなく、木の根やドングリなども集めて、六人の僧の指示通りに配置す
ると急いで村に戻り、家の戸をしっかりと閉じ、息を潜めて待ちました。六人の僧と村長が
村の入口で様子を見ていると、山のノロシが一段と高く太く上がりました。
大イノシシの集団が村に向かい始めたようです。六人の僧と村長も屋内に身を隠しまし
た。ところが、それから一刻ほど経っても、徒党を組んで突進してくるはずのイノシシの足
音が一向に聞こえてきません。
不思議に思った村長がソロリソロリと戸を開けて外を見ると、広場の木の下で少し大きめ
のイノシシが1頭だけ、鼻を使って地面に穴を掘っているではありませんか。

村長 : オ~イ、みんな、もう大丈夫だぞ!村は救われたんだ。六人の僧さま、皆様方は
     村の恩人です。何とお礼を申し上げて良いやら。ありがとうございました。

一の僧: いいえ、与一さんの経験や知識がこの村を救ったのです。私たちは、それを手
     がかりに、ほんの少し手をお貸ししただけです。

二の僧: 首領のイノシシも本来の姿に戻ったようです。あの表情を見れば判ります。
     みなさん、もう安心ですよ。良かったですね。

三の僧: イノシシの体に宿っていた異界のモノは我々が供養しますから安心してくださ
      い。

六人の僧が立ち去ったあと、村人は広場に六地蔵尊を祀って、感謝の心を後世に語り継
いだそうです。
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浅草界隈の文学散歩 & 幻となった花魁道中見物

2015-04-20 08:30:38 | 日記




首都圏に住んでいる高校時代の同級生3人が喜寿を迎えたことを機会に始めた街歩き。
魅力に富んだ文学や歴史探訪の第2弾は「浅草」です。

ヒデ: 今日は「樋口一葉」と「池波正太郎」を中心に浅草の文学散歩をするよ。

ノブ: 案内役のヒデが雨男だから心配だったけど、やっぱり降っちゃったね。吉原の花
    魁(おいらん)道中が目当てだったのにナ~。

ヒデ: 雨男でゴメン。ホームページで確認したら、花魁道中は明日に順延なんだってさ。

ヤス: 仕方ないよ。でも、心配するな。明日、この近くに来る用事があるから、花魁道中
    を写真に収めてメールで送るよ。こういうこともあるさ。ドンマイ・ドンマイ。

ヒデ: それはありがたいな。せめて写真だけでも見たいから。

つくばエクスプレスの浅草駅に集合した3人は最初の訪問地「池波正太郎記念文庫」に
向かいました。

ヒデ: この台東区中央図書館の中に「池波正太郎記念文庫」があるんだ。普通は生誕
    地に記念館ができることが多いよね。でも、より多くの人に知ってもらいたいとい
    うことから、ここに決まったそうだよ。

館内には文机や愛用の遺品をはじめとして、映画の台本や多くの著作本が所蔵されて
います。「剣客商売」「鬼平犯科帳」「仕掛け人・藤枝梅安」などのお馴染みシリーズの
コーナーや自筆原稿、自筆絵画、食・映画・旅・人生に関するエッセイなど、どれもこれ
も興味深いものばかりです。

ノブ: 彼の作品は本だけでなくテレビでも親しんでいるから、どれを見ても楽しいね。

ヤス: 若い女性にも人気があるみたいだな。見学者が結構多いよ。

ヒデ: 記念品を販売しているからよかったらどうぞ。次は鷲(おおとり)神社に向かうよ。

浅草の鷲神社は「おとりさま」として江戸時代から親しまれてきました。参拝を済ませた
3人のおしゃべりも弾みます。

ヒデ: 樋口一葉の代表作「たけくらべ」でも、ここの祭礼「酉の市」の様子が記述されて
    いるんだ。だからここは外せない場所さ。

ノブ: 初めて来たけど、大きいんだね。文学からは外れるけど、あの正面にある「おでこ
    を撫でれば賢くなる」という「なでおかめ」は面白いね。ここは一葉の時代にも、
    さぞかし賑わったんだろうな。次は是非「酉の市」の日に来ようよ。

ヤス: そうだね。それがいい。

ヒデ: 次は樋口一葉記念館に行くよ。

雨の重みで垂れ下がった桜の花を愛でながら、「樋口一葉旧居跡」を確認した後、一葉記
念公園が併設されている「一葉記念館」に入りました。

ヒデ: ここには一葉の少女時代、萩の舎時代、小説家を志した頃の竜泉寺町時代、一葉
    文学が花開く本郷丸山福山町時代それぞれの資料や直筆の「草稿」「書簡」等が
    多く展示されているんだ。また、当時の竜泉寺町や駄菓子屋の模型などもあるよ。
    24歳6ヶ月という短い生涯だったけど、せめて彼女の息遣いを感じ取ってみよう
    よ。

ヤス: 生活に苦しみながら、「たけくらべ」「にごりえ」「十三夜」といった秀作をわずか1年
    半で発表したのに、若くして肺結核で死去したのが本当に惜しまれるね。

ノブ: 付け加えてもいいかな?五千円札には一葉の肖像が描かれているけど、
    A000002A番の紙幣がここにあるはずだよ。1番は日本橋の「日本銀行金融研究
    所貨幣博物館」、4番は王子駅近くの「お札と切手の博物館」にあることまでは確
    認済みだけど、3番がどこにあるのかは調べきれなかったよ。
    知っている人が居たら教えて欲しいな。

ヒデ: ノブは前回、日本銀行を担当しただけに詳しいね。さてと、次は昼ごはんだ。

3人は「フーテンの寅さん」で有名な渥美清さんをはじめ、浅草の芸人さんがよく来たとい
う「ますみ寿司」でチラシ寿司を注文。店内にある昔の写真を見ながらの昼食です。

ヒデ: 本来なら、このあと花魁道中を見学する予定だったけど、雨で順延になっちゃった
    からせめて花魁道中が行われる通りと花魁の街「吉原」の今を紹介するよ。
    その後、池波正太郎生誕碑のある「待乳山聖天(まつちやましょうでん)」に向か
    うことにする。

ノブ: 確か、この店の向かいの商店街は漫画家ちばてつやさんの「あしたのジョー」が
    活躍した山谷だよ。漫画も文学のうちだ。立ち寄ってみるべきだな。

ヤス: 「あしたのジョー」はテレビでも見たな。主題歌も良かった。僕も行きたいよ。

3人は「あしたのジョー」が活躍した「いろは商店街」を散策後、「一葉桜通り」「吉原大門」
「振り返り柳」を見て、待乳山聖天に着きました。

ヒデ: ここに「池波正太郎生誕碑」があるんだ。彼が下町生まれであることも作品の内容
    に影響を与えているのだろうね。この階段の上が待乳山聖天。歌川広重画にも描
    かれていて、心の毒を清める「大根」と財宝・商売繁盛の「巾着」が特徴的だね。
    大根を奉納する姿は浮世絵にも描かれているんだよ。

ノブ: 台東区全体で「池波正太郎」を支えているんだね。こうした応援があれば後世にも
    彼の作品はしっかりと残っていくだろうな。

ヤス: ここの庭園は綺麗だし、スカイツリーもよく見えるね。

ヒデ: 今日の文学散歩はここまでだけど、浅草寺をお参りしてから解散することにしよう
    よ。ここまでの歩数は8,000歩。前回よりは距離が短かったね。

ヤス: 案内、どうもありがとう。次回は僕が担当するよ。

ノブ: それは楽しみだ。よろしく頼むな。

ヒデ: ヤス、花魁道中の写真を必ず送ってよ。待っているからね。
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サルコペニア症(筋肉減弱症)を知ろう

2015-04-13 09:01:35 | 日記



永 : 美井さん、相変わらず寒暖の差が激しいですが、足の骨折は順調に回復してい
    ますか?

美井: お陰で日常生活には支障がなくなりました。そういえば、私が入院した時に体
    験した「廃用症候群」について、以前、説明したことがありましたよね。
    それに似た症状の「サルコペニア症」という病名が最近頻繁に報道されている
    のをご存知ですか?

永 : 「廃用症候群」は年齢には関係なく、入院などによって過度に安静にしたり、あ
    まり身体を動かさないでいると、筋肉が衰えたり関節の動きが悪くなったり、最
    悪な場合には、寝たきりとなってしまう症状でしたね。
    サルコペニア症とは何ですか?

美井: 花のような名前ですが、れっきとした病名なのですよ。
    サルコペニア(Sarcopenia)とは、骨格筋・筋肉(Sarco)が減少(Penia)すること
    です。「加齢による筋肉量減少」 を意味する用語なのです。
    当初は骨格筋肉量の減少を定義としていましたが、徐々に筋力低下、機能低
    下も含まれるようになったようですね。

永 : 僕たち高齢者にとっては切実な話じゃないですか。筋肉量は加齢に伴って、どの
    くらい低下するのですか?

美井: 20歳の時を100とすると、一般に70歳で半分の50になるそうです。

永 : 半減ですか?そんなに減るとは意外ですね。

美井: もちろん、運動する量と質によって減り方には個人差がありますから、同年齢で
    も70に抑えられる人がいれば30まで低下してしまう人もいるようですよ。

永 : サルコペニア症だと診断される基準は何なのですか?

美井: 例えば、握力計器で男性30kg以下・女性20kg以下、筋肉量が男性7kg/平方メ
    ートル以下・女性5kg/平方メートル以下、歩行速度が0.8m/秒以下という基準が
    あるのだそうです。

永 : サルコペニア症になる原因は何なのですか?

美井: 4つが知られています。第一は狭義のサルコペニアで、加齢のみが原因の場合
    です。原発性サルコペニアと言われています。老化が原因で筋肉合成能力や代
     謝機能が低下する症状です。
    第二から第四は加齢以外が要因で、二次性サルコペニア症と言います。第二は
    入院患者に多く、主に運動不足が原因で筋肉量が減ることにより体重減少が生
     じる症状です。第三は適切な栄養管理抜きでのダイエットや偏食により、エネル
    ギーとタンパク質の摂取が不足する場合で、第四は感染症やガン等の疾患によ
    るものです。

永 : なるほど。それでは、低下した筋肉量を回復させるにはどうしたらいいのですか?

美井: 原因に見合った治療が必要になります。第一の高齢化の場合は、筋力トレーニ
    ングが有効です。第二の運動不足では必要以上の安静や食事制限を避けます。
    第三は意識した栄養管理です。栄養を考慮しないで筋力トレーニングをすると逆
     効果になり筋肉量がかえって減少することもあるようですね。第四の疾患に関連
    する場合は適切な栄養管理とリハビリの併用が大切だと言われています。

永 : サルコペニア症は高齢化が進む日本では大きな社会問題なんですね。僕も気を
    付けなくちゃ。予防法について教えていただけませんか?

美井: 先ずは体を十分に動かすことが予防の鍵です。例えば、片足立ちやスクワットが
     お勧めですね。買い物へ行く時もダラダラと歩くのではなく、大股の早歩きを心が
     けるといいです。筋肉量を増やす食事も大切ですね。

永 : 具体的にはどんな食事がいいのですか?

美井: 筋肉の主な組成はタンパク質だから、タンパク質を多く含む肉・魚・卵や大豆製品
    と牛乳・ヨーグルトなどの乳製品を欠かさず摂取することです。もうひとつ大切なこ
    とがあります。エネルギー不足の状態では摂取したタンパク質がエネルギー源と
    して 使われてしまうのです。だから、エネルギーを生み出す糖質、すなわちごは
    ん・パン・麺などの炭水化物も適度に食べる必要があるんです。

永 : 女性と男性とではどちらがサルコペニア症になりやすいのですか?

美井: 圧倒的に女性ですね。理由は美容のためだとか言って、偏った食事をしてタンパ
    ク質やカルシュウムなどの摂取が不足気味の人が多いからです。日本人の女性
     は世界一長寿ですが、健康な人の割合は決して誇れるものではないようですよ。

永 : サルコペニア症には自覚症状がありますか?

美井: つまずきやすくなったり、転びやすくなった時には要注意ですよ。筋肉量が減少し
    たり、筋力が低下することによって靭帯・腱・半月板などが炎症をおこし、膝など
    に痛みが出ることがあります。慢性の腰痛もサルコペニア症が原因である例がと
    ても多いそうです。

永 : そうした痛みをとる方法はありますか?

美井: サルコペニアによる痛みの特効薬は筋肉トレーニングです。ちょっと膝が痛い程
    度なら、しっかり歩くだけでも痛みを解消できます。筋肉を蓄え、減らさない「貯
    筋」のためには、活発な全身運動と栄養バランスの良い食事をすることです。

永 : これからは運動するのに良い季節になります。サルコペニア症の予防を意識した
    運動や食事を心がけたいと思います。またしても、いろいろと教わりましたね。

美井: 日本の男性はメタボリックシンドロームが怖い。そして、女性はサルコペニアや
     ロコモティブシンドローム(運動器機能低下症候群)が怖い、といったところで
     しょうか。

永 : ロコモティブシンドロームについてはノルディック・ウォーキングを紹介していただ
    いた時にお聞きしたから、よく覚えています。

美井: サルコペニア症になるのを予防することは、高齢期を楽しく過ごすことにつなが
    るので、常に意識して、快適な日常生活を長く続けられるようにお互い頑張りま
    しょう!

永 : そうですね。元気な老人でいるためには日々の積み重ねが大切ですから頑張り
    ますよ。
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うたた寝石仏とスミレ

2015-04-05 20:11:36 | 日記



うららかな春の陽射しを浴びて開花した一株のスミレ。目の前に座っている石仏が気
になって仕方がありません。しばらくは声を掛けることをためらっていたのですが、我
慢できなくなって呼びかけてしまいました。

スミレ: あの~、そこの石仏さん。ちょっといいですか?モシモシ、石仏さん!

石仏 : ン?誰かが私を呼んだみたいですけれども、気のせいですね、きっと。

スミレ: 呼んだわよ。私が呼んだの。ここよ、ココ。振り向いて、こっちを見てよ。

石仏 : こっちとはどちらでしょうか?振り向いてみたものの、やはり誰もおりませんね。

スミレ: チョット~、こんなにキレイな色で可愛く咲いている私が目に入らないの?ココ!

石仏 : ア~、何だ、花ですか。

スミレ: 「何だ、花ですか・・・」ってひどい言い方ね。ズ~ッと寝てばかりいたから、
     寝ボケているんじゃないの?

石仏 : あなたの言い方も失礼ですよ。私は寝ていたのではなく、思索しておったので
     す。

スミレ: 「シサク」ですって?何、ソレ。

石仏 : ア、失礼!ついつい難しい言葉を使ってしまいました。要するに、いろいろと考え
     を巡らせておったということです。

スミレ: ホントに?まぁ、いいか。私はスミレよ。アリさんが私をここに運んでくれたの。

石仏 : オヤオヤ、アリがあなたを連れて来たのですか。こんなに大きなものを運ぶと
     は、アリもご苦労でしたね。さぞかし疲れたことでしょう。かわいそうに。

スミレ: フフフ、何も知らないのね。アリさんが運んだのはタネよ。私がまだ小さなタネの
     状態だった時に、ここまで運んでくれたの。

石仏 : ということは、変身したのですね。タネから今の姿に。

スミレ: あなたって、オモシロイことを言うのね。これまで、花を見たことは無いの?
     そうか!寝てばかりいるから、周りのことを全然見ていないんだ。怠け者なのね。

石仏 : 次から次へとヒドイことを言うものですね。先程から申しておるように、私は寝て
     いたのではなく思索・・オッと失礼、考え事をしておったのです。怠け者呼ばわり
     は止めていただきたい。

スミレ: 言いすぎたかな?だけど、あんなに長い間、ズ~ッと考え事をしていたの?

石仏 : いろんなことについて考えて、考えて、考え抜くことが私の勤めなのです。
     まだまだ未熟者だから、修行をもっと積まねばならないのです。

スミレ: 「シュギョウ」って何?わかんない。

石仏 : ウ~ン、困りましたね。「勉強」と言えば解ってもらえるのでしょうか?

スミレ: アッ、そうなの?勉強中だったんだ。とてもくつろいだ格好に見えたから、てっき
     り、うたた寝をしていたんだと思っちゃったのよ。私、お勉強の邪魔をしちゃった
     ってこと?声を掛けてしまって、ゴメンナサイ。

石仏 : 誤解なさっているようですが、この格好は私が物事を考えるときの姿勢なので
     す。決して、くつろいでいるわけではありません。しかし、たまにはこうして他者
     と話をすることも、私にとっては修行・・ではなく勉強になるかもしれません。

スミレ: ホント?そう考えてくれると嬉しいな。私、退屈だったから、ズ~ッとあなたのこと
     を眺めていたのよ。そしたら、おしゃべりをしたい気分になっちゃったの。
     さてと、何の話をしようかな?

石仏 : 私はかなり昔からここに座っておりますが、花に声をかけてもらったのは今日が
     初めてなのですよ。良い機会だから、私の知らぬことを話していただけません
     か?

スミレ: そんなことを言われても、あなたが何を知っていて、何を知らないかなんて私に判
     るはずがないでしょ。それよりも、あなたの堅苦しい話し方はなんとかならない?
     もうちょっと気楽に話してくれないかな~。肩が凝りそうよ。

石仏 : 困りましたね~。昔からこのような話し方をしているものですから、今さら変えるこ
     とは無理です。我慢してください。

スミレ: ウ~ン、仕方がないか。そのうちに慣れるかもしれないから、今のままでいいわ。

石仏 : ありがとうございます。ところで、私が知りたいことはですね・・・

石仏とスミレは周りが薄暗くなるまで、おしゃべりを続けました。時々、話が噛み合わな
い場面もありましたが、スミレは退屈しのぎができたし、石仏はスミレの話を聞きながら、
大切なことに気付きました。

石仏 : ある時から、思索こそが修行の道だと思い込んで、考え抜くことだけに没頭して
     いたのですが、それは間違っていたようです。ここのところ、考えが堂々巡りを
     するばかりで行き詰まりを感じていたのです。原因は私が見聞を広める努力を
     怠っていたからだと、あなたと話しているうちに気付きました。
     これからは一木一草を含め、周囲にある全ての声に耳を傾け、眼力も生かして
     知識の幅を広げることにも力を注ぐことにします。新たに得た知識も駆使して思
     索に励めば、今の場所から更なる高みにたどり着けるかもしれません。
     スミレさん、あなたに声を掛けていただいて本当に良かった。ありがとうございま
     した。

スミレ: 今の話の半分以上、私には理解できないんだけど、私に感謝してるって言った
     の?

石仏 : そうですよ。その通りです。ひとつ告白しますね。あなたに声を掛けられた時、実
     は私、うたた寝をしておりました。図星を突かれて慌てたものですから、正直に認
     めることができませんでした。反省しております。申し訳ありませんでした。

スミレ: エ~ッ、やっぱりそうだったの。きっと考え込みすぎて、疲れちゃってたのね。
     フフフ、恥ずかしくて誤魔化そうとしたんだ。あなたって可愛いところがあるのね。
     おしゃべりできて楽しかったわ。私の方こそ、本当にありがとう!また、声を掛け
     るわね。

石仏 : ぜひ、お願い致します。
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