ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

ゴキブリ天使の詩

2018-04-30 07:29:09 | 日記


ある家に長年住んでいるゴキブリ家族は人間たちに見つからないようにコソコソと生活
することに疲れていました。これからは犬や猫のように明るい場所で、人間と仲良く暮
らしていける生活がしたいと思い、人間に好かれるための挑戦をすることにしました。

1.立ってみよう

  人間たちは立って歩いている。この家の犬も前足を持ち上げられて、2本足で歩く練
  習をさせられている。きっと立っているものが好きなんだろうな。

  ゴキブリ君はその日から立って歩く練習を始めました。でもどんなに練習しても、
  立って歩くことができません。しかし、努力の甲斐があって、コップの淵に手をか
  けて立ち上がることができるようになりました。

  よし、まだ歩けないけど、これで人間の前に立ってみよう。きっと喜んでくれるだろう。
  あっ!人間が来た。「どうです。僕は立っているよ、可愛いでしょう!」

  「あっ!俺のコーヒーカップにゴキブリがくっついている。動くな」バシッ!

  アぁ~アぁ~、立つだけではダメなのかな~、ご昇天だ~!アァーメン!」

2.色を変えよう

  同じ甲虫なのにテントウムシやタマムシたちは人間に好かれているし、カナブンも
  それほど嫌われていないようだ。彼らのようなキラキラしたきれいな色に変身すれ
  ば好かれるかもしれないな。

  回りを見渡すと紅しょうがの入った瓶から、ピンク色の液体がこぼれ出て液だまり
  を作っていました。そうだ、このピンク色を体の羽に擦り付けよう。ピンク色なら
  きっと喜んでもらえるに違いない。ゴキブリ君は紅しょうがの液体を体中に擦り付
  けました。

  あっ!人間が来た。「どう!ピンク色に変身したんだ。きれいで可愛いでしょう」

  「あっ!ゴキブリが紅しょうがの液を舐めている。汚いな!」バシッ!

  アぁ~アぁ~、ピンク色に変身してもダメなのかな~、何色に変身したら好かれる
  ようになるのかな~。ご昇天だ~!アァーメン!」

3.羽音を立てずに飛んでみよう

  人間に好かれているトンボや蝶は音を立てずに飛んでいる。きっとあのように羽音
  を立てずに、静かに飛べるようになればいいのかもしれないな。

  ゴキブリ君はその日から音が出ない飛び方を練習しました。でもどんなに練習して
  も羽音をバサバサさせずに飛ぶことはできません。しかし、努力の甲斐があって羽
  音をたてずに滑空で着地ができるようになりました。よし、これで人間の前で羽音
  をたてずに滑空で着地してみせよう。きっと喜んでくれるだろう。

  あっ!人間が来た。「どうです。僕は羽音をたてずに滑空ができるでしょう。」
  「見直してくれましたか」

  「あっ!ゴキブリが目の前を飛んだ。やな奴だ叩き落としてやる」バシッ!

  アぁ~アぁ~、上手に滑空ができたのになぜダメなのかな~、ご昇天だ~!
  アァーメン!」

  この家に住むゴキブリ君たちはこれからも人間たちに好かれる努力を続けていくそ
  うです。いつの日か人間に好かれるようになるといいですね。
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せんべいの街 草加宿を歩く

2018-04-16 07:26:01 | 日記


首都圏に住んでいる高校の同級生3人が古稀を迎えたことを契機に始めた街歩き。
首都圏を中心に歴史探訪・文学散歩を楽しんでいます。今回は草加せんべいで有
名な草加市が舞台です。3人は草加駅の東口にあるおせんべい伝説の「おせんさん
像」の前に集合です。

ヤス:草加市は江戸時代の草加宿がルーツ。日光街道の江戸から二番目の宿場と
   して、大川図書が近隣の人々と力を合わせて街道の整備をしたのが始まりで、
   やがて幕府公認の日光街道の宿場となり、綾瀬川の舟運を利用した産業を通
   して賑わった。開宿400年を迎えて、宿場町や草加松原遊歩道が整備されて
   いるので歩こう。

ノブ:この周辺は戦後まで水田地帯だったけど、団地の造成や東武伊勢崎線と営団
   地下鉄との相互直通運転で人口が爆発的に増え、都市化したところだよね。

ヒデ:僕は草加せんべいしか知らないけど、そのせんべいは江戸時代の草加宿で売
   り出した団子の売れ残りを「おせんさん」が団子を平たく伸ばして、天日干
   しにして焼いて売り出したのが起源と書かれている。それが大きな地場産業
   となって現在でも草加市の特産品であり続けているなんてすごいことだね。

3人は「今様・草加宿のまちづくり」事業として整備された「草加宿エリア」と
「草加松原エリア」を歩く史跡と文学碑の探訪に向かいました。

ヤス:先ずは草加宿エリアから歩く。最初に案内するのは八幡神社。ここは龍の天
   井絵と雌雄一対の大きな獅子頭が有名だから見てくれ。
   次は藤城家だ。かつて味噌屋だった豪商の町屋建築で、軒先の出桁造と縦格
   子が往時の風格を伝えている。

ノブ:畳敷きの帳場がガラス越しに見えるけど、内部が非公開なのが残念だね。
   草加には古い建物は残っていないと聞いていたけど、あることはあるんだな。

ヤス:この辺りが草加宿の真ん中で本陣跡の石碑や道路元標もある。そして、目の
   前の建物は埼玉県内初の鉄筋コンクリート校舎だったもので、今は市立歴史
   民族資料館になっている。解説員がいるから展示品を紹介してもらおう。

見学を終えた3人は近所のせんべい屋さんで、天日干しをしていると聞いて出かけ
ることにしました。天日干しのせんべいは真っ白でした。
当然、おせんべいを購入しました。

ヒデ:草加市の地場産業は「せんべい」「皮革」「ゆかた染め」と教えてもらった。
   せんべいの天日干しを見たから、他の地場産業の現場も見たくなったよ。

ヤス:今回は草加宿に絞るよ。ここが東福寺だ。大川図書の墓がある。本堂・山門
   ・鐘楼は江戸後期のものだ。特に本堂の彫刻欄間はすごいよ。山門の彫刻や
   弘法大師ゆかりの「三鈷の松」なども見どころだ。この松の葉は3本なんだよ。
   拾って持っていると縁起がいいと言われている。

ノブ:松の葉は通常2本だよね。確かに3本葉の松は珍しい。拾って持って帰るよ。

ヤス:ここが神明宮で草加宿の鎮守さまだ。隣接する神明庵は安政年間の古い町屋
   建築だ。今は観光案内所になっている。そしてここが草加宿の終わりの場所
   になる。

草加せんべい発祥の地と書かれた大きな石碑や芭蕉の弟子「曽良」の像がある「お
せん公園」で休憩後、「草加松原エリア」に入りました。宿場町から景色は一変し
ました。

ヤス:ここからは草加松原エリアだ。最初に紹介するのは高さ11mの火の見やぐら
   「望楼」だ。五角形が珍しい。中に入って登ると眺望ができるよ。
   そして、ここが舟運で栄えた草加宿時代からの荷揚げ場所であった「札場河
   岸」だ。船着き場の石段が復元されている。

ノブ:どこの河岸も大正までは発展していたけど、鉄道などの陸上輸送の発達で衰
   退し、昭和30年代で姿を消している。我々にとって河岸の賑わいは遠い昔の
   話ではないんだよね。

ヤス:草加松原遊歩道を歩こう。ここは江戸時代から千本松原と言われた景勝地だ
   った。今は日本の道100選に選ばれた1.5Km・634本の松並木の遊歩道として
   整備されている。ここにはこの地を歩いた人たちの石碑がある。先ずはこの
   松尾芭蕉像だ。奥の細道で草加宿が最初に宿泊した場所だからだろうね。
   顔は名残惜しいのか江戸の方を振り返っている。そして、正岡子規・高浜虚
   子の句碑がある。彼らもここにきて草加の地名が入った句を詠んでいる。

ヒデ:ここから松並木の遊歩道が見える。本当にきれいな景色なので歩くのが楽し
   みだ。

ヤス:初期の日光街道は千住と越谷間の沼地のために大きく迂回していたんだ。
   そこで茅野を開き沼地を埋め立てて真っすぐな新道を開いた。沼地の造成に
   沢山の草が用いられたことから草加と呼ばれるようになったそうだ。この遊
   歩道には矢立橋、百代橋という大きな和風太鼓橋がシンボルとして架かって
   いる。

ノブ:今日は天気が良いから松が映えて、空気までおいしく感じるね。松並木と太
   鼓橋はとても良くマッチしている。ところでここにあるモダンな橋は?

ヤス:ハープ橋だ。草加市は毎年国際ハープフェスタを開催し、音楽と文化のまち
   づくりをしている。この橋はそのことから名付けられたものだ。欄干にはハ
   ープの銅像が18個あるよ。そしてこの遊歩道には奥の細道の旅順路の石碑や
   芭蕉の研究もしていた日本文学者のアメリカ人、ドナルド・キーン氏の手植
   えの萩などがある。散歩を飽きさせない工夫なんだろうね。
   これで今回のせんべいの街・草加案内は終了だ。

ヒデ:ありがとう。草加のことは知らなかったけど、ここを歩いてかなり理解した
   よ。江戸から二番目の宿場町として賑わったのだろうね。

ノブ:せんべいの天日干し現場は初めてだった。そして都市化によって古い町屋屋
   敷はなくなって、看板やプレート表示だけだと思っていたから、古い建物が
   残されていることが嬉しかったね。

3人の学びの心と行動力は衰えを知りません。次回はどんな場所を探して旅をするの
でしょうか。
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都内へ桜満喫ツアーに出かけました

2018-04-02 14:23:53 | 日記


「今年は例年より10日早く都心の桜が満開です」の報道を聞いて、桜の名所めぐりに
出かけました。良く知られたところを選んで行ったので、どこへ行っても人・人です。
これまでは人混みにもまれての桜見物なんかへ行くものかと、混雑する名所を避ける
方でしたが、人生の終末期の扉の存在を遠くに感じるようになった年齢が後押しして
くれました。

<飛鳥山公園の桜>

ここの桜見物には縁がなくて初訪問。飛鳥山は標高25mの都内で一番低い山。かつて
徳川8代将軍・吉宗が桜をこの地に植え、庶民に開放したことに始まる桜の名所です。
園内には約600本の桜の他、約1万5000株のツツジと約1300株のアジサイも植えられ
ています。無料のモノレール「アスカルゴ」が人気。園内は広く、午前中でしたので
ゆっくりと桜見物を堪能できました。お弁当を広げるのに最適な公園です。昼近くに
なった帰り際にはアスカルゴに長蛇の列ができていました。児童公園があるので子供
たちの元気な声が聞こる桜見物です。

<皇居・乾門の通り抜け>

ここは混雑を嫌って来ていませんでした。2年ぶりに一般公開された皇居「乾通り」
の桜。およそ600mの並木道で、4年前に天皇陛下の傘寿を記念して、サクラやモミ
ジが美しい時期の一般公開が始まりました。ここでは30品種を超える100本余りの桜
を楽しむことができます。手荷物検査、身体検査で長い行列ができました。歩いてみ
ると確かにここは桜の種類の多さと、桜と皇居との景観のマッティングが良かったで
す。又、皇居内を歩くことは普段あり得ないので、内堀の景観や宮内庁の施設など桜
以外でも見るもの全てが新鮮でした。でも検査待ちから乾門の出口までトロトロと進
むのでかなり疲れます。

<千鳥ヶ淵緑道の桜>

ここは桜満開時に来ています。皇居西側の千鳥ヶ淵に沿う全長約700mの遊歩道です。
ソメイヨシノやオオシマザクラなど約260本の桜は遊歩道を歩く人の頭上に咲き、ま
るで桜のトンネルの中を歩いているようです。魅力は緑道から眺める石垣と可憐な桜
の対比がなんともいえず美しい場所、そしてお堀にせり出す枝先に咲く桜が印象的な
ところです。夜になるとライトアップされ、お堀の水面に桜が映し出されるのも情緒
があります。それにしても、やたらと外国語が私の耳を行き交う緑道でした。

<上野恩賜公園の桜>

ここも桜満開時に来ています。何といっても春に限らず一年中、耳障りな外国語が耳
に入って来る場所です。上野公園一帯には約1200本の桜があります。約400年前に、
寛永寺を創建した天海僧正が吉野山から桜を移植させ、以来、江戸一番の桜の名所と
して今日に及んでいます。公園内には800個ものぼんぼりが灯され、夜桜も堪能でき
ます。開花状況にあわせて不忍池周辺で骨董市が催されるなどイベントが多いこと、
歴史的建造物と桜のコラボレーションも楽しめるなど、桜以外の楽しみが多いのがこ
この特徴です。

<六義園の夜桜>

ライトアップの夜桜を見物しようとやってきました。徳川5代将軍徳川綱吉の側用人、
柳沢吉保が7年の歳月を費やして完成させた回遊式築山庭園。六義園のシンボルであ
るしだれ桜は、高さ約15m、幅は約20mに及び、滝のように流れ落ちる花の様子が圧
巻。春の陽光に照り映える昼の姿と、夜空に浮かび上がる姿、どちらも見ごたえ十
分です。しだれ桜の寿命は300年、この木はまだ60年でとても若い木です。これま
で桜満開のピークを外していましたが、今回はバッチリでした。ここでも入園まで
にかなり待たされました。しだれ桜の周辺はそれほど広くないので大変な混雑でした。

今回は五ヶ所の都心の桜めぐりをしました。こんな桜見物ツアーはこれが最初で最後
になるでしょう。人生の思い出とは「ひたすら歩き、汗をかいて得るものなり」と考
え、重い腰を上げた一日でしたが、良い桜見物の思い出になりました。
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