ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

大雪とカワセミと

2014-02-24 08:25:04 | 日記





かつて経験したことがないほど降り積もった大量の雪がほとんど溶けて、日陰の場所に

だけ雪かきで集めた塊が残っている、そんなある日の午後。お気に入りの場所である

「自然観察の森」の樹木や鳥たちの様子が気になり始めた老夫婦は、デジタルカメラと

ビデオカメラを手に出かけることにしました。車中では夫婦の会話が弾みます。

      
妻:我が家の片流れ型の駐車場は雪の重みで支柱が曲がり、危うく車に被害が出るとこ

   ろだったわ。早めの雪落としと塩ビパイプでの補強で、屋根の傾斜が進むのをか

   ろうじて食い止めることができたけど、車まであと3cmという危機的状況だった

   わね。庭木も数本折れてしまったし。

夫:最初に降った雪が思いのほか大量だった上に、続いて降ったのが水分を多く含んだ

   重い雪だったからね。

妻:雪かきで酷使した腕と腰がまだ痛いけど、「自然観察の森」の状態がとても気がか

   りだわ。鳥さんたちは大丈夫だったかしら。

夫:久し振りにカワセミに会えるといいな。

妻:私は植物の冬芽の状態や、梅の開花状況を確かめるために3週間前にも行ったけ

   ど、今年は冬鳥たちの数が少ないような気がしたわ。それに、常連さんの話に

   よると、カワセミの姿を目にするのは稀だそうよ。

   よほどラッキーじゃなきゃ、会えないわね。

夫:元気な姿を見たいんだけどな。ところで、野鳥撮影の心得は頭に入っているよね。

妻:心得?ピントが合っていれば、それでいいんじゃないの?

夫:もちろんピントが合っていなければ、話にならないさ。そもそも、君はどこにピント

   を合わせてるの?

妻:鳥の眼よ。

夫:ほらほら、そこから間違ってるね。鳥を撮影する時は眼の後ろの耳羽にピントを合

   わせるんだ。その方が顔も体もクリアに写るそうだよ。

妻:ヘ~ェ、そうなの?覚えておくわ。他にも心得があるの?

夫:ウン。背景の選び方だ。主役を引き立てるためになるべくスッキリした背景を探す。

   空を入れると白っぽくなっちゃうよ。もちろん、構図も大切だね。いつも真ん中

   に被写体を置くのではなく。鳥が向いている方向に空間をあけて撮ってごらん。

   できればISO、絞り、シャッタースピードなども色々と変えて撮影しておくとイイよ。

妻:フ~ン、いつ飛んでいくかもわからない鳥を写すのに、そんな余裕があるかしら?


 目的地の駐車場で車から降りた二人は早速、カワセミがいそうな池に向かいました。

途中、雪の重みで折れてしまった木の枝や無残にも裂けてしまった木の幹を見て、何

度ため息をついたことでしょう。これらの木々に足を止めて休んでいた鳥たちは、い

つもの場所を失い、困っているのではないかと心配です。


夫:思った以上の被害だ。葉が茂っている常緑樹ほど、枝が折れちゃったようだな。

   後片付けも大変だ。

妻:あら、マンサクの花よ。あまりの寒さに縮こまって震えているようだわ。

夫:早春に先ず咲くから「マンサク」という名になったという説があるけど、

   ホントかな?

妻:さあね。ようやく池に着いたわよ。

夫:オッ、あそこの木の枝に止まっているのはカワセミじゃないか?

妻:ホントだ、居るよ!


 池の手前に設置されたハイド(観察用の壁)の穴から覗き、カワセミを目視した妻

は大急ぎでカメラを構えました。ハイドからかなり離れた枝に止まったアイドルは美

しいブルーの背中をこちらに向けて、悠然としています。しかし、ものの2分もすると

軽やかに飛び去ってしまいました。あとに残ったのは虚しく揺れる細枝だけです。


夫:ア~ァ、つかの間の出来事だったな。だけど、出会えて良かったよ。

   元気そうだったね。

妻:無事だったのね、よかった~。さっき聞いた撮影の心得を実行する間なんて、全く

   なかったけど、姿を見ることができたのはラッキーだったわ。慌てて3、4回は

   シャッターを切ったけど、ちゃんと写ってるのかな~。

   恐いから確認するのは家に帰ってからよ。

夫:恐いなんて、柄にもない発言だな。

妻:エッ、何か言った?

夫:いや、別に。僕のビデオカメラは出番なしだったよ。

   もう少し園内を回ってみようか。


 足を伸ばした園内のあちこちでも、枝がポッキリと折れた木々を目にしました。

毎年、濃いピンクの花を咲かせていたハナモモの大木も、特にたくさんのツボミを付

けた枝が幹から裂けた状態で、痛々しい限りです。梅園の老木にも今回の降雪は厳し

過ぎたようです。木々のかわいそうな様子を目にして、カワセミに出会えた喜びも半減。

今回の大量降雪により、今だに孤立したままの集落があるようです。

自然災害が次々に襲ってきている昨今。これらの脅威にどう向き合えばいいのか・・

カワセミの美しい羽色を心の目に焼き付けながらも、自然と共に生きている我々人間

の心構えについて考えざるを得なくなった老夫婦。

帰路の車中では交わす言葉もありませんでした。
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光の正体に迫れ!

2014-02-17 08:25:20 | 日記



ここでの光とは主に可視光を指します。可視光は人体に全く無害であり、全ての生物

を生み、そして育てています。


1.光って何?

  光とは人間の目を刺激して明るさを感じさせるものですね。この光は電磁波という

   波の一種です。そして、粒子つまり「物」としての性質も持ちながらも質量(重さ)

   を持たない不思議な存在です。すなわち波の形で前に進む重さのない粒子なので

   す。波には振幅と波長があります。私たちが光の強さ(明るさ)を感じるのが振幅

   で、色を感じるのが波長です。

2.光の速さは?

  現在光より速いものは宇宙全体を見てもありません。光の速度は約秒速30万kmで

   す。(1秒間に地球を7周半です)速度が一番早い理由は重さがないからです。

   少しでも重さがあると高速になるほどその物質の重さが増すので、無限のエネル

   ギーを加え続けなければ光速に近づけることはできません。それでも光速に近づ

   くだけです。でも光は質量(重さ)がゼロなので、無限のエネルギーを加えなくとも

   光速が出せるのです。

3.本当に光より速いものはないのか?

  宇宙戦艦ヤマトの波動砲やタイムマシンなど、SF作品にはしばしば超光速を扱った

   作品がありますが、実は最近になって、宇宙から届く不思議な素粒子が見つかり、

   それを「タキオン」と名付けたとの報告がニュースになりました。

   光よりもちょっとだけ速いというのです。でも、まだ正式には確認されていません。

   これを利用すれば、SF作品の世界も現実性をもつことになります。

   将来見つかるかもしれませんよ。

4.太陽光について

  太陽の光は白色光のように見えますが、プリズム(ガラスの三角柱)で分けると、赤

   から紫まで、きれいな虹色に分けることができます。実は太陽の光はたくさんの

   色が混ざってできています。色の違いはその光の波の幅(波長)の度合いで決ま

   り、波長が狭いほど紫色に近づき、広いほど赤色に近づくのです。

   昼間の空が青い理由は光の色の性質の差にあります。頭上の太陽光が空気層を

   通って私たちの目に届くまでに、空気中の小さい粒やちりに当たって、いろんな

   向きに反射され拡散します。波長の短い紫系はちり以外にも空気中の窒素や酸素

   分子に対しても反射されるために無限に拡散されて地上の私たちの目に届きませ

   ん。また、波長の長い赤系は全てのものに反射されずに通り抜けて空に留まらな

   いため、地上の私たちの目には空の色として認識されません。しかし、中くらい

   の波長の青系は空気中の粒子やちりに反射された後、空中に拡散されて留まりま

   す。これが繰り返されることで青い光が空じゅういっぱいに広がって見えるのです。

   夕日が赤く見えるのは、夕日の太陽は地平線にありますから、太陽の光は私たち

   の目に届くまでに、昼間より空気層の中を長く移動してきます。すなわち、太陽光

   は空気中の粒やちりに当たる回数が昼間より多くなります。すると青い光は紫系と

   同じように、私たちの目に届く前に拡散されて見えなくなります。その結果、太陽光

   の中で波長の幅が最も広い(散りにくい)赤やだいだい色の光だけが空に留まり私

   たちの目に届くのです。

5.宇宙論も光のスペクトルから

  銀河の星の波長の分布(スペクトルと言います)を調べると、遠いところにある星ほ

   ど、スペクトルが赤の方向にかたよっています。救急車のサイレンが、近づく時と

   遠ざかる時で音の高さが変わる経験をしたことがあると思います。これは、音が空

   気の振動の波であるために起きる現象です。一定の波を出すものが近づいてくる

   時、聞いている者には(波長が短くなるため)音が高く聞こえ、遠ざかる時はこの

   逆で、(波長が長くなるため)音が低く聞こえるのです。ドップラー効果と呼ばれ

   る現象です。

   光も波ですから星のスペクトルが赤い方、つまり波長の長い方にかたよっていると

   いうことは、その星がものすごいスピードで遠ざかっていることを示します。そして、

   遠い星ほど赤の方向へのかたよりが大きいということは、遠いものほどそのスピー

   ドが速いということがわかるのです。このことから宇宙が膨張しているということが

   考えられ、そして宇宙の始まりにビッグバンというできごとがあったという、現在の

   宇宙論ができあがっていったのです。

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氷上の舞姫

2014-02-10 08:08:12 | 日記



厳しい寒さが続く時期に、冬眠をしない動物村の子供たちが楽しみにしているのは、

村のはずれにある小さな池に張った氷の上で遊ぶことです。


ミミ :池の氷が十分な厚さになったから、今日から使用できるようになったんだって。

ポン吉:ようやく許可がおりたんだね。待ちかねてたよ。

コン太:早朝に行けば、僕たちだけで氷の上を独占できるぞ。

     行くのは明日だ。いいね。


翌朝、3人組はまだ薄暗いうちに出発しました。池に到着したミミたちの目に飛び込

んできたのは、全面に氷が張り詰めた池の真ん中で、きれいな衣装をまとって、くる

くる回りながら軽やかに踊っている人間たちです。


ミミ :大変!人間がいるわ。早く村に戻って、皆に知らせなくっちゃ。見つからな

     いように、ソ~っと動くのよ。

ポン吉:ちょっと待って、何だか変だよ。姿は人間のようだけど、ちっちゃ過ぎないか

     い?僕たちよりもかなり小さいよ。

コン太:それに空中に浮いてるぞ。人間は宙に浮いたり飛んだりすることはできないと

     長老が言ってたじゃないか。変だよ。このまま隠れて、しばらく様子を見よう。

ミミ :確かに人間とは違うみたい。だったら、あれは何なの?

ポン吉:ねえ、以前、早朝の花畑で出会った花の妖精さんに似ているとは思わない?

ミミ :そういえば、なんとなく雰囲気が似ているわ。透き通るような青い衣装が素敵ね。

コン太:僕はもっと近くで見たいな。

ポン吉:コラ、コン太、背中に乗るな!押すな、危ない。ワ~ッ!


3人組は凍った池の上に転げ出てしまいました。氷上の踊り子たちは突然現れたミミた

ちの方を不思議そうな顔をして、じっと見つめています。


ミミ :ごめんなさい。踊りのじゃまをするつもりはなかったの。あなたたちが本当にきれ

     いだから、もっと近くで見たくなっただけなの。怒らないでね。

舞姫A:あら?!私たちのことが見えるの?それに、私はあなたの言葉を理解できるわ。

     あなたには私の言葉が通じているのかしら?

ミミ :ええ、ちゃんと通じているわよ。

舞姫B:それは不思議ね。私たちの言葉は仲間以外にわかるはずがないのだけど。

舞姫A:もしかしたら、あなたたちは動物村の仲良し3人組じゃない?雪ダルマの

     レイニーからあなたたちのことを聞いたわよ。

ポン吉:水の精のレイニーを知っているの?

舞姫C:もちろん知ってるわ。私たちも水の精だから、レイニーは仲間なの。あなたたち
   
     は彼を助けてあげたんですってね。

舞姫A:私たちは「氷上の舞姫」って呼ばれているのよ。あなたたちに会えて嬉しいわ。

コン太:うわ~、照れちゃうな。はじめまして、僕はコン太です。よろしく!

ミミ :今、空中に浮かんで踊っていたでしょ。どうしてそんなことができるの?

舞姫B:私たちの体はとても軽いのよ。日が昇り、温度が高くなると、上昇気流が生まれ

     るから、その気流に乗って空中に浮くことができるの。私たちは踊るのが得意な

     のよ。

ミミ :もっと踊っているところを見ていたいな。

舞姫C:見ているだけじゃ、つまんないでしょ。一緒に踊りましょうよ。

     さあ、こちらへいらっしゃい。

ポン吉:よ~し、転ばないように頑張って、池の中央まで行くぞ。みんなも行こうよ。

舞姫B:私たちの念力であなたたちを浮きあがらせてあげるから、ちょっとだけ飛び

     上がってごらんなさいな。

    
3人組が「イチ・ニのサン!」と掛け声をかけてジャンプすると、驚いたことに軽々と舞姫

たちの高さまで浮きあがったではありませんか。

3人組は大興奮です。宙に浮いたのは初めてです。その時、どこからともなく音楽が流

れてきました。3人組は舞姫たちと手をつないで、優雅なワルツの調べに合わせて一緒

に踊り始めました。


ミミ :夢みたい。私は舞踏会のお姫様だわ。もっと毛づくろいをしてくればよかったな。

舞姫C:日が高くなり始めたから、そろそろ私たちは帰らなくちゃならないわ。

     またいつの日か会いましょうね。

ポン吉:もっと踊っていたいな。こんな経験、初めてなんだもの。いいのかな?

舞姫A:いいわよ。3人で手をつなぎ、輪になってごらんなさい。

     どんな踊りでもできるわよ。私たちはこれで帰るわね。

     じゃあ、さようなら。

コン太:ちょっと待って!僕たちは宙に浮いているんだよね。どうすれば降りられるの?

舞姫B:心配ないわよ。踊りながら、つま先をじっと見つめればいいの。じゃあね。


しばらくして踊り疲れたミミたちは舞姫に言われた通り、つま先をじっと見つめました。

すると突然、大きな笑い声が聞こえてきたのです。慌てて周りを見回すと、動物村の子

供たちが3人組を指さして、大笑いしているではありませんか。

誰もいないとばかり思っていた3人組はビックリしました。しかも、自分たちは池のほとり

の土の上に尻もちをついていたのです。氷の上で優雅に踊っていたはずなのに、一体

何が起きたのでしょう?

ついさっきまで、舞姫たちと一緒に空中で踊っていたのが本当のことだったのか、はたま

た夢だったのか、全くわからなくなってしまいました。

状況をよく呑み込めないまま、その場にいたたまれなくなった3人組は池に向かって走

り、氷の上に思いっきり体を投げ出して、それぞれ別々の方向へ散って行きました。
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鬼は外!

2014-02-03 08:05:46 | 日記



オニオ:おいおい、どうして耳を隠しているんだい?寒いのか?

オニコ:それもあるけど、今日は耳を覆っていたいのよ。

     「鬼は~ソト!」って声があちこちから聞こえるのが嫌なの。

オニオ:なんだ、そんなことを気にしてるのか。

オニコ:お兄ちゃんは気にならないの?あんなに私たちを目の敵にして、硬い豆を投げ

     つけているのよ。どうして私たちは追い払われなきゃいけないのかな~

オニオ:ウ~ン、よくわかんないね。お父さんに聞いてみようか。

     ねえ、お父さん、どうして人間達は今日、「鬼は~ソト~」って豆を投げるの?

オニ父:そうだな~、私達にとって今日は厄日だよな。説明するのが難しいけど、こう

     いうことじゃないかと思ってるんだ。君達も何か嫌なことや、うまくいかない

     ことがあると、誰かのせいにした覚えはないかい?

オニオ:そういえば、思い当たるよ。

オニ父:だろう?そいつがいるから、いけないんだ。そいつがいなくなれば嫌な事は起き

     ないで、平穏に過ごせるのに・・・と思ったことがあるはずだ。

オニコ:あるある、私もそう思ったことがあるわ。

オニ父:人間だって、自分達の家に不幸や不運を入れたくないし、もしも、すでに家の中

     にそういうものが入り込んでいるとしたら、追い出したいはずさ。苦の種を

     「鬼」というものに仮託して、自分達の家から追い出そうとしてるんだよ。

オニコ:嫌なものを追い出そうとしたり、入ってこないように願うのはわかるけど、どう

     して、それが「鬼」なんだろう?

オニ父:そこのところは謎だな。人間に聞いてみるしかないよ。まあ、人間には人間の考

     え方があるし、鬼には鬼の考え方がある。価値観が違う者がすることを、完全

     に理解するのは困難だということだな。今日のところは、人間が厄災と考えて

     「鬼」と呼ぶものになりきって、硬い豆を受け止めてやろうよ。

     この豆は厄災の芽が出ないように炒ってあるようだから、「美味しい食料を手

     に入れてラッキー!」くらいに考えたら、気持ちが楽になるさ。

オニオ:そうだね。人間達が鬼をやっつけるつもりで投げた豆を粉々に噛み砕いて、飲み

     込んじゃえばいいんだよね。

オニコ:うん、うん、それがいい。この豆、結構美味しいよ。どんどん投げて~。

オニオ:う~ん、ウマイ!!もっと投げていいよ~ ほら、こっちだよ~
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