6月18日、NHKのニュースで今年の風疹患者が1万人を超えたと報道されました。
風疹の怖さは度々報道されていますが流行は広がるばかりです。なぜなのでしょうか?
1.風疹のおさらい
(1)風疹とは・・・風疹ウイルスによっておこる急性の発疹性感染症で、春先から初
夏にかけて流行します。潜伏期間は2-3週間(平均16-18日)、ウイルスの排
泄期間は発病前後各1週間です。主な症状として発疹、発熱、リンパ節の腫れ
が認められます。
(2)風疹感染の怖さ・・・風疹の最大のリスクは胎児への影響です。妊娠初期の女性
が風疹に感染すると、生まれてくる赤ちゃんが目や耳、心臓に障害が出る「先
天性風疹症候群」になる可能性があります。去年から今年にかけ、すでに8人
の「先天性風疹症候群」の赤ちゃんが生まれています。
(3)風疹の予防と診断・・・風疹ワクチン(弱毒性ワクチン)によって、予防するこ
とができます。抗体を持っているかどうかは血液検査で調べられます。
風疹に過去にかかった事があると、抗体価は32~256倍。予防接種を受け
た人の抗体は8~32倍。最近風疹にかかった人は256~2048倍。抗体
がない人は8倍未満です。
2.今年大流行の理由
(1)接種行政の対応のまずさ。
患者のほとんどは成人男性です。昔は女児だけが予防接種の対象だったので、
風疹の抗体を持たない成人男性が多いからです。1979年~1987年生まれ
(26歳~34歳)の方は風疹の予防接種を受けていない確率が高く“空白世代”
と呼ばれています。こうした接種行政の対応のまずさが要因になっています。
(2)職場感染で広がっている。
風疹は、喋った時に飛ぶ唾液などで感染します。いわゆる「飛沫」感染です。
人が長時間一箇所に集まる職場が感染源のトップとの報告があります。
(3)ワクチンの接種費用が高額である。
6,000円から1万円くらいが相場のようです。保険が適用されないので高額な
のです。しかし、最近は費用を助成している自治体も多くなってきました。
3.風疹ワクチンとはどんなものか?
弱毒化を行った「種」 ウイルス(弱毒株ウイルス)を培養・増殖させ、凍結乾
燥したものです。弱毒株ウイルスを接種した場合、通常の風疹感染と違ってほと
んど症状はでませんが、風疹ウイルスに対する免疫を得ることができます。
現在は、麻疹ワクチンと混合した麻疹風疹混合ワクチンが定期の予防接種に用い
られています。
4.風疹ウィルスとはどういうものか?
「他の生物の細胞を利用して、自己を複製させることのできる微小な構造体で、
タンパク質の殻とその内部に入っている核酸からなる。 生命の最小単位である
細胞をもたないので、生物学上は非生物」(wikipediaより引用)です。一方、
細菌は細胞膜を持つ原核生物と定義されます。すなわち、ウィルスは単独では
増殖が出来ないので、感染先の宿主の細胞に進入し機能を奪って増殖します。
5.抗ウイルス薬について
ウイルスは細胞膜がなく人の細胞に寄生しているため、治療薬は少ししかなく、
開発段階のものが多い。現在使われている抗ウイルス薬には、ウイルスに直接
作用するものと、免疫機能を調節するものがある。一方、ワクチンとしてはポ
リオ、麻疹、風疹、おたふくかぜ、日本脳炎などが確立しているが、その他の
さまざまな深刻な感染症のウイルスについては開発中のものが多い。
6.なぜ日本だけがこんなに大流行しているのか
アメリカなどではワクチン接種をしないと集団生活を送れない社会システムに
なっていると聞いています。すなわち、個人の利益のためでなく、集団の利益
のためにワクチンを打つという考えが定着しているのです。日本では、昔、イ
ンフルエンザワクチンの副作用を巡って、ケンケンガクガクの議論になったこ
とが、厚生労働省の大きなトラウマになっていたからではないでしょうか。
今は子ども達への予防接種が定着しているので、風疹の大流行は少なくなるで
しょう。