ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

セイタカアワダチソウとススキのバトル

2014-10-27 08:27:32 | 日記





久々の秋晴れ。カメラ片手に団地近くの田んぼが広がる一帯を散歩する老夫婦。

夫:桜並木の葉っぱが色付き始めたね。足元にはドングリがいっぱい落ちてるよ。
   黄金色に実っていた稲もとっくに刈られ、今では二番穂が伸びて、田んぼも
   再び緑色になっちゃったな。
   秋は色調の変化を楽しめるから、同じ場所を何度歩いても飽きないよね。

妻:ネエ、ここは去年、ススキとセイタカアワダチソウの勢力争いで、ススキが少し
   優勢だと話していた場所よね。今年はススキが更に増えているわ。ススキの
   勝利ね。

夫:外来種のセイタカアワダチソウは「在来植物が駆逐されるのではないか」とか、
   「花粉症の犯人だ」とマスコミが大キャンペーンを張って撲滅運動をやったけど、
   あっという間に勢力が広がったね。

妻:セイタカアワダチソウはブタクサとも呼ばれていたけど、ブタクサは別物で、それ
   が花粉症の犯人だったのよね。今ではセイタカアワダチソウ犯人説は間違い
   だったと認知されているけど、どうやって冤罪を晴らすことができたのかしら?

夫:簡単なことだったんだよ。ブタクサは風によって花粉が運ばれるのに対して、セ
   イタカアワダチソウは虫が花粉を運ぶんだ。花粉症は花粉が風に乗って飛散
   することで人間の体内に入り、アレルギー症状を引き起こすんだよね。
   セイタカアワダチソウは花粉を飛ばさないのだから犯人ではないのさ。
   まあ、花粉自体が重いうえに生成量も少ないので、風で飛ぶには不向きな形
   状をしているということだな。

妻:へェ~、なるほど。とんだヌレギヌだったわね。この場所もそうだけど、最盛期に
   は野山や河川敷を席巻していたセイタカアワダチソウも、いっときの勢力は完
   全に影を潜めたと私には見えるわ。「ススキに負けた」からかしら?
   もし、秋の七草として日本人が愛でるススキが外来種を押さえ込んでいるのだ
   としたら、チョットだけ嬉しいかも。

夫:セイタカアワダチソウが全国に蔓延した理由は、地下50cmぐらいまで根を張る
   強靭性と繁殖力の強さ、そして密生して群生する成長形態などが挙げられる
   けど、もうひとつ大きな理由があってね。「アレロパシー作用」というものなんだ
   けど、他の植物の種子が発芽するのを抑制する天然の化学物質を分泌して、
   周りの植物を攻撃するんだ。植物は動けない分、様々な方法で自分を守ったり、
   勢力を伸ばしているんだよ。

妻:強い繁殖力と攻撃力を持っていたら、鬼に金棒ね。だったら、今も繁殖しているは
   ずなのに、どうして衰退したように見えるのかしら?

夫:実は、他のものを攻撃するために地中に出した物質は、敵を撲滅して攻撃対象が
   いなくなると、今度は自らを攻め始めたんだ。

妻:何だか恐ろしい話ね。それじゃあ、何もしなくても自滅する道を歩むってこと?

夫:だから、絶滅しないためにセイタカアワダチソウは常に新天地を開拓して、移動
   しなければならない宿命を背負っているんだよ。

妻:わかったわ。だったら、ススキとの戦いに負けたと考えるのは間違いなの?

夫:戦いに勝った負けたというのではなく、ススキが耐性を獲得したんだよ。ススキは
   株が大きくなるのに、けっこう時間がかかるけれど、その分、しっかりとした株を
   作るんだよ。そして繁殖する時期は秋深くなった頃で、野草の中では遅いんだ。
   それにススキは他の植物よりも効率よく光合成をするので、劣悪な環境でも生き
   ていけるんだ。
   セイタカアワダチソウの群生の中に割り込んで生長する強い力があるんだね。

妻:成長がゆっくりなのと繁殖時期が遅いことが、どうして強さの秘密になるの?

夫:セイタカワダチソウが自滅を始めると、地中に溜まっているアレロパシー物質は
   微生物の酵素などによって弱体化されるらしいよ。そういう状態で、ゆっくり成
   長するススキの体内に取り込まれ、攻撃物質ではなくなるんだ。
   すなわち、ススキはアレロパシー物質を中和するという免疫力を獲得したんだ。
   こうして一度は追いやられていたススキが再び芽を出し始めて、勢力を盛り返
   してきたんだよ。

妻:ススキの勢力復活で、何かいいことは起きるの?

夫:ススキはセイタカアワダチソウの出す化学物質に荒らされた土壌を浄化し、再び
   栄養を与える土地改良を始めたんだよ。一度はセイタカアワダチソウに席巻され
   た日本の野山や河川敷は再びナデシコなどの日本古来の植物が共生する姿に
   確実に戻りつつあるんだ。ここまでに70年位かかっているみたいだね。

妻:では、セイタカアワダチソウの運命はどうなるの?

夫:今、セイタカアワダチソウはススキやコスモスなどと共生する日本型の植物に変化
   しているんじゃないかと思うよ。昔は2mクラスの草丈のものが多かったけど、だん
   だん小粒なって、大きいのは滅多に見られなくなったな。
   これも環境に合わせた進化の一つかもしれないね。

妻:北米原産のセイタカアワダチソウも日本の風土に合った姿に変化しているのかしら。
   植物たちも生き延びるために、いろいろな工夫をしているのね。

夫:健気だな。ところで、日本では嫌われているセイダカアワダチソウだけど、アメリカ
  ではゴールデンロッド(金の鞭)と呼ばれ、アラバマ州では州花なんだってさ。片や、
  ススキはアメリカでは外来種として嫌われ、駆除対象植物に指定されているんだよ。

妻:初耳よ。今日はいい勉強になったわ。こうして、ほぼ毎日散歩していると、植物生態
   の小さな変化にも気が付くものなのね。アラッ、あそこを見て!トンボの行列よ。

夫:どこ?ハハハ、電線にはスズメかハトが止まるものだと思っていたけど、ここではト
   ンボが並んで止まっているよ。面白い光景だね。早速、写真を撮っておくとするか。
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2 コメント

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近所でも・・・ (takm)
2016-04-27 10:33:04
そういう理由だったんですね。

かつて憎憎しげに蔓延っていたセイタカアワダチソウが、近年徐々に隅っこに追いやられてきたなと感じていました。

背まで小さくニッポン化させるとは・・・。

ニッポン・ススキ 恐るべし
返信する
Unknown (na)
2021-04-03 13:25:44
興味深かったです。

色々とご自分で調べてまとめていらっしゃるのでしょうか。他の記事もぜひ読みたいですね。
現在でも更新されているようでうれしい、、
返信する

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