ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

雪だるま・レイニーの天体ショー

2018-02-19 07:37:40 | 日記


動物村が一面の銀世界になりました。広場では仲良し3人組が大きな雪だるま作りに
奮闘しています。とても真剣です。遊びには見えません。どうやら訳がありそうです。

ミミ :やっと大雪が降ってくれた。レイニーに会えないのかと心配したわよ。早く
    レイニーを呼べる大きな雪だるまを作りましょう。

コン太:しっかりと固い雪だるまにしよう。柔らかいとレイニーは来てくれないぞ。

ポン吉:レイニーは水の精だから、どんなものにでも姿を変えられるのに、僕たちと
    会うには雪だるまの姿でしか会えないなんてよくわからないね。

ミミ :雪だるまが私たちとレイニーを繋ぐ扉だと言っていたじゃないの。頑張るわよ。

3人組は水の精・レイニーに早く気づいてもらおうと、秋に貯めておいた葉っぱを使
った帽子とマフラーで着飾った雪だるまを作りました。そして、声を揃えてレイニー
を呼びました。暫くすると、雪だるまがモソモソと動き始め、一年ぶりにレイニーの
声が聞こえてきました。

レイニー:や~、随分とおしゃれな雪だるまを作ってくれたんだね。よく目立ったぞ。
     こうして今年もみんなに会えて嬉しい。

ミミ :レイニーさん、来てくれたのね!会えて嬉しいわ。

コン太:僕も嬉しいよ。僕たちレイニーに相談したいことがあって、大雪が降るのを
    待っていたんだ。

ポン吉:動物村の一大事なんだ。力を貸してください。

レイニー:久し振りの出会いを喜ぶことは後回しだね。まずは話を聞かせてもらおうか。

3人組は数日前に夜空に浮かぶ白い月が突然欠け始め、暗くなると今度は赤色の月にな
り、そして少しずつ元の月に戻った月の変化のことを話しました。長老は何か災いが
この動物村に起きるのではないかと、断食をして村のために祈っていること。長老の
体が痩せてきて村の住民たちが心配していることを伝えました。仲良し3人組は空のこ
とはレイニーに相談するのが一番だと思って、大雪が降ることを待ち望んでいたのです。

レイニー:まん丸い月が突然欠け始めて、やがて赤黒くなり、そして再び月は丸い姿に
    戻っていく現象は「皆既月食」と言うのだよ。雨や雪が降るような自然現象の
    一つだから、動物村に災いを起こす前兆ではないんだよ。早く長老と住民たち
    に知らせて安心させてあげなさい。でも、月が欠けて消えていくのって驚くよ
    ね。

ミミ :あ~、良かった。悪いことは起きないのね。お父さんも、お母さんも心配して
    いたの。

コン太:どうして、月が欠けたり元に戻ったりするの?

ポン吉:分かるように教えてください。それじゃないと長老に説明できないよ。

レイニー:この地球の明るさは太陽から届く光で照らされているんだ。でもこの光の
    明るさは私や君たちの体があると遮断されてしまうので、その後ろは影とな
    るんだ。ミミ、私の影の中にゆっくり入ってごらん。ほら、欠けていくよう
    に見えるね。それと同じことが月の夜空でも起きているんだ。あの日に起き
    たことは、太陽と地球と月が一直線に並んだので、地球の影が月に映った現
    象だ。言い換えると、地球の長い影の中に月が入ったということだ。だから、
    月が地球の影から出れば元のように明るくなるのさ。稀にしか見られない珍
    しい現象だよ。

ミミ :空のことはよくわからないけれど、安心していいのね。やっぱりレイニーに
    相談してよかった。

レイニー:長老も心配したように、人間たちも大昔はこの皆既月食が災いをもたらす
    前兆だと考えていたことがあったんだよ。でも人間たちの科学の進歩のお陰
    で、皆既月食が起きる理由が分かったから、今では楽しい天体ショーとして
    歓迎されているよ。だから、動物村のみんなも心配しないで、皆既月食を楽
    しんでいいのだよ。

コン太:長老に今のレイニーの話を伝えてくる。僕たちの話は長老に信用されている
    んだ。きっと安心してくれると思う。ありがとう。

3人組はレイニーの話を伝えるため、大急ぎで長老のところへ走っていきました。そし
て、再びレイニーのいる広場に戻ってきました。

ポン吉:長老が「安心したぞ、お腹が空いた~」と言って、もりもり食べ始めたんだ。
    これで一安心だ。

ミミ :私、まだ理解できないけれど、動物村に災いが起きないことが分かってよか
    った。

コン太:僕たち、長老が「見るな!」と言ったから皆既月食を見てないんだ。
    見たいな~。

レイニー:それでは私のお腹に扉を付けておいたから、開けて中に入ってごらん。

ポン吉:これは僕たちが作った雪だるまだよ。こんな小さな扉に僕らの体は入らないよ。

レイニー:いいから、いいから、騙されたと思って、扉を開いて中を覗いてごらん。
     3人組が入れる広さは十分にあるからね。

コン太:レイニーが言うなら、そうする。まず、僕が扉を開けてみるよ。アレ?近く
    に来たら急に扉が大きくなった。扉が開いたよ。中は明るい。さあ、入って
    みるぞ。

続いて、ミミとポン吉が入りました。どうしてだかわかりませんが、雪だるまのお腹
の中に3人共、簡単に入れてしまったのです。お腹の中は空洞になっていました。

レイニー:どうだい、僕のお腹の中は?これから暗くして皆既月食があった日の様子
    を再現するからしっかり見るんだよ。暗くなったら私の解説で天体ショーの
    始まりだ。

ミミ :レイニーの声だわ。姿が見えないけど、レイニーからは私たちが見えている
    のね。あら、暗くなった。大きなお月様が出てきた。星もいっぱい。きれい
    だわ。

ポン吉:これから、あの日に起きた皆既月食が見られるんだね。しっかり見ようぜ。

コン太:月なんてこれまで関心がなかったけど、なんだかワクワクしてきたぞ。

レイニー:君たちが住んでいるこの地球と言うところは、君たちが知らない不思議な
    ことで満ち溢れているんだよ。地球から見える皆既月食もその一つだね。

雪だるまのお腹から出てきた3人組は、いつも見ている月の大きな変化に大興奮です。
水の精・レイニーに助けられた3人組は、さらにレイニーとの友情が深まりました。

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キジバトたちの「鬼は外、福は内」

2018-02-05 07:40:15 | 日記


居間から見えるフェンスはキジバトたちのデートの場所として評判がいいのです。そして、
庭の紅葉の古木に巣作りをして、ヒナたちが巣立っていったこともあります。今日もフェ
ンスを見るとつがいと思われる二羽のキジバトが寄り添って話をしていました。

雄鳩:今年はがっかりだよ。人間たちは自分たちの年中行事の大切さを忘れているのかな。

雌鳩:何の話なの?人間たちの年中行事なんて、私たちには関係ないでしょ。

雄鳩:関係があるのさ。先日の「節分の日」のことだよ。あの日は一年に一回「鬼は外、
   福は内」と言いながら、お父さんを中心に子供たちと一緒に家の中から外に向かっ
   て豆をまくじゃないか。僕はあの豆が大好きで、毎年いっぱい食べられるから楽し
   みにしていたんだ。

雌鳩:言いたい事がわかった。私も感じていたけど、今年は豆の数が少なかったわね。

雄鳩:そうなんだよ。節分の行事をきちんとしない家が増えたのか、まく豆の数を減らし
   ているのか分からないけれど、庭に落ちている豆の数は少なかったな。

雌鳩:ほら、新しいマンションができたじゃない。もう住民が引っ越しを終えて入居して
   いるから、前庭には豆がいっぱい落ちているはずだよって言っていたけど、行って
   みたらぜんぜんダメだったわね。マンションの住人たちって豆まきをしないのかしら。

雄鳩:節分の行事は人間にとっては邪気を祓う日として、昔から大切に守ってきたものだ
   と思うんだ。それに僕たちにとっても真冬のこの時期としては大切な食糧になるん
   だから、もっと派手にまいてほしいよな。

雌鳩:その意見に賛成、豆まきは私たちにとっても福を与えてくれる良い行事なんだもの
   ね。そこのところ、分かって欲しいわよね。来年に期待しましょう。

そういえば、我が家でも子供たちが同居していた賑やかな家族構成の時は、派手に「福は
内、鬼は外」と大声を出して、景気よく豆をまいていたけれど、今ではご近所に遠慮して、
声を落としているし、指先でつまむ程度の豆しかまかなくなりました。
キジバトさんたちゴメンね。

ここからは新聞ネタを利用した話ですが、私は豆まきでまくのは大豆だけだと思っていた
けれど、全国の調査では、落花生派が17%もいて、ジワリと増えているそうです。
私は鬼の撃退には一番霊力が強い大豆を使うのが本来の姿だと思うのです。しかし、一部
地域では落花生に交代していることをこの記事で知りました。落花生が優位な地域は、北
海道、東北、新潟県、長野県北部、九州南部で九州北部、山口県でも増えているそうです。
理由は「殻付きだから食べて清潔」「大きくて片付けやすい」「いり大豆よりおいしくて
軟らかい」という三つが多いそうだ。大豆の霊力の力も衰えたものです。
そういえば、千葉県成田山新勝寺での豆まきで集めた小さな袋には、大豆と落花生が入っ
ていたことを思い出しました。関東圏にも落花生がジワリと浸透してきているようです。
キジバトさんたちにとってはますます楽しみが減る環境にあるようです。

尚、豆まきの豆をキジバトがついばんでいるところは見たことがありますが、本当に食べ
  たかどうかは確認したことがありません。もし、食べないとしたら、このお話はゴメン
  なさい。
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