ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

宏太くんの季節がやって来た

2014-03-31 07:46:15 | 日記





小学2年生の梨絵ちゃんが同じ団地内に住む同級生の宏太くんのおウチの前を通り

がかった時のことです。生垣の向こう側から歌声が聞こえてきます。宏太くんが歌っ

ているに違いありません。恥ずかしがり屋の宏太くんにしては珍しいと思い、ちょっと

声をかけてみることにしました。


宏太:♪ ブンブンブン ハチが飛ぶ~ ♪

梨絵:宏太くん、コンニチハ。

宏太:なんだ、梨絵ちゃんか。

梨絵:今日はご機嫌ね。

宏太:そりゃそうさ。庭にいろんな昆虫がやって来たんだもん。

梨絵:昆虫?急に暖かくなったからなのかな?

宏太:理由なんて、どうでもいいんだよ。昆虫に会えれば、僕はそれでいい。

梨絵:虫博士で有名な宏太くんの季節がやって来たってことね。今日は何を見つけ

    たの?

宏太:ホラ、ここに来てご覧よ。

梨絵:あら、この花はサクラかな~。

宏太:違うよ、サクランボの花だよ。

梨絵:そうなの?カワイイ花ね。

宏太:だから~、花じゃなくてハチだよ、蜂。

梨絵:どこよ、どこ?アッ、見~つけた。花の真ん中に頭を突っ込んでるよ。

宏太:ネ、花よりカワイイだろ。よくみてごらん、体に花粉をつけてるのがわかるかな~。

梨絵:ホントだ。黄色い粉がいっぱい体についてるよ。

宏太:真面目にお仕事中ってことさ。これからは花粉集めに大忙しなんだよ。

梨絵:サクランボの花が終わったら、次は何の花にハチさんは来るの?

宏太:梨絵ちゃんのおウチの庭にも、これからいろんな花が咲くだろ?

    毎日、庭で観察してたらハチはどんな花が好きなのか判るよ。

    人に聞くんじゃなくて、自分の目で確かめるのが楽しいんだよ。

梨絵:フ~ン、そういうものなのかしらね。でも、ちょっとだけ教えてよ。この庭の中で

    ハチさんが大好きなのはどの花?

宏太:全く、しょうがないな。まだ花芽が硬いけど、梨絵ちゃんの目の前にあるリンゴの木

    に花が咲いたら、ハチがいっぱい来るよ。この庭で一番人気なんだ。

    あのね、ハチだけじゃなくて、今日はてんとう虫とバッタみたいなのも見つけたよ。

梨絵:どこにいるの?私も見たいな。


梨絵ちゃんは虫たちにとても興味が湧いてきたようです。きっと、明日からは毎日、おウ

チの庭で「昆虫はいないかな?」と探し続けることでしょう。新たな昆虫博士の誕生かも

しれません。

宏太くん、虫仲間が出来て良かったね。
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 小さな庭は千客万来

2014-03-24 08:32:07 | 日記
吹く風 まだまだ冷たいけれど
そろそろ 庭を春色に
変身させてみたくなり
じいさん ばあさん 土いじり

花壇の土を掘り返し
ひと汗かいた そのあとは
部屋に入って ひと休み

紅茶 飲み飲み 庭を見た
そこへ一羽のジョウビタキ
ヒラリ 舞い降り 餌探し
ここかと思えば またあちら
我が物顔でお散歩だ



すると今度は モズ登場
枝に止まって 尻尾振る
ジョウビタキくん 大慌て
逃げるが勝ちと 飛んでった

窓からじいさん ばあさんが
見つめているとは つゆ知らず
邪魔者いないと 見定めて
モズは地面に降り立った

掘り返された土の上
何かを探す目が光る
小首かしげて 思案して
急に小枝に飛び移る
警戒警報 キャッチかな?



やはり 次なる来客だ
ツグミがス~ッとランディング
好みのものが見つからず
滞在時間は ごくわずか


そのあと再び ジョウビタキ
ここは自分の庭だよと
言わんばかりの態度です


じいさん ばあさん 窓際で
楽々 バードウォッチング
今日は良い日だ 千客万来
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越冬トンボを探せ

2014-03-17 08:28:46 | 日記

わかりますか?



冬にトンボの話?時期外れだと思われそうですね。ところが先日、「自然観察の森」での

定期勉強会に参加している永さんから面白い情報を得たのです。


永:前回の勉強会で、成虫の姿で越冬するトンボがいることを教えてもらったんだよ。

   最初は半信半疑だったが、実物をこの目で見て納得したね。

私:エッ!トンボが成虫のまま越冬するの?

永:ビックリだろ。勉強会のあと、仕入れた知識を披露すると、アキアカネなどのアカネ

   類とアオイトトンボは卵で冬を越す。幼虫(ヤゴ)で冬を越すトンボが最も多くて、

   オニヤンマ、シオカラトンボなどよく知られているトンボ類のほとんどはこのタイプ。

   そして成虫で冬を越すトンボはオツネントンボ、ホソミオツネントンボ、ホソミイト

   トンボというイトトンボの仲間の3種類だけらしい。これらは夏に羽化した成虫が未

   成熟な状態で冬を越し、翌春、交尾・産卵するから、成虫での生存期間はとても長

   くて、9~10ヶ月になるそうだよ。

私:今回、見てきたトンボは?

永:ホソミオツネントンボ。「越年トンボ」と書いてオツネンと読むんだってさ。

私:できれば、私も実物を見たいな。

永:越冬中なのでまだ同じ場所にいると思うよ。これから見に行こうか。


こうして「自然観察の森」へ連れ立ってやって来た二人は、ホソミオツネントンボが越冬

しているという林に向かって歩き始めました。


永:ここだ。ここらあたりの樹木をよ~く見ると、越冬中のホソミオツネントンボが見つ

   かるはずだ。しばらく時間をあげるから探してご覧なさい。

私:突き放されてしまったな。イトトンボの仲間だから細いんだよね。鳥などに見つから

   ないように擬態しているんだろうから、見つけるのは難儀そうだな。

永:前回見た小枝にそのままいるから、私はもう見つけたよ。

私:懸命に探しているけど、まだ見つけられないよ。何かヒントが欲しいな。

永:透き通った羽根を折りたたんで枝にしがみついているんだ。

私:トンボの羽根がついた小枝を見つければいいということだね。

永:そういうこと。

私:さっきから一本一本の小枝を確認しているけど、見つけられない。ギブアップだ。

永:フフフ。実は、君のすぐ目の前にあるこの小枝にしがみついているんだよ。

   わかった?

私:これか。体長が4cmぐらいだね。本当に小枝のように茶褐色で動かないよ。確かに

   透き通った羽根が見える。それにしてもうまく小枝に擬態したもんだな。

永:冬でも暖かい日には少し動くようだね。前回見た時とは位置が少し違っている。

私:いや~、本当にいるんだね。土壌の中や木の裂け目に隠れるのではなく、寒空に身

   をさらして越冬する昆虫たちにとって、擬態は不可欠だろうけど、見事なもんだ。

永:この間の大雪にも負けないで、こうして生きているのは奇跡的だと思わないかい?

私:愛おしくなっちゃうよ、あの大雪に一番もろかったのは人間だったりして・・・ネ。

   ところで、トンボは益虫と言われているよね。日本脳炎を媒介するコガタアカイ

   エカの主な発生源が水田で、昔の人はトンボが蚊を退治してくれることを見抜い

   ていたんだね。お正月の羽子板遊びはトンボを型取った羽根を羽子板でお正月の

   空へ飛ばして、健康を祈ったのが起源だと言われているよ。前進するのみだから

   勝ち虫と呼ばれたりするし、トンボは人間には親しみのある生き物だ。

永:「自然観察の森」にはまだまだ知らないことがいっぱい隠れていると思うよ。

    このホソミオツネントンボは成虫なので、春になって暖かくなると、トンボの仲間

    の中で一番早く飛び始めるそうだ。このホソミオツネントンボとホソミイトトンボ

    の2種は春になるとブルーのきれいな色に変身するけど、オツネントンボはこの地

    味な茶色のままらしいね。

私:越冬トンボは「春の先駆けトンボ」ということか。飛んでいる姿も見たいから、もう少し

   暖かくなったら、また二人でここに来たいね。

永:ああ、ぜひ来ような。


大雪で無残にへし折られた樹木に心を痛めながらの帰り道で、目の高さにあるカマキリ

の巣を見つけました。今年の大雪を予想してこんな高いところに産み付けたのでしょう

か。昆虫たちも精一杯の知恵を出して生き抜いているんですね。
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春待ち峠

2014-03-10 08:02:58 | 日記





木立ちばかりの山の中

峠に立って見渡せば

枝先光る木がひとつ

あの木の近くへ行ってみよう


和紙をハサミで細く切り

一枚いちまい貼り付けた

そんな黄色の花びらが

先っちょ、くるりと巻き込んで

和菓子の飾りみたいだな


こうしてマンサク咲き出せば

「我も負けじ」と周りの木々が

次から次へと花ひらく


キブシ・ミツマタ・ウメ・サクラ

山は一気に春模様


今はマンサクだけだけど

近づく春の足音が

聞こえはせぬかと耳澄ます


どこかでギフチョウ目を覚まし

まもなくひらひら舞うでしょう


春待ち峠は希望の峠
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ひな祭り

2014-03-03 07:55:02 | 日記



男雛:久々に明るい場所に出されて、いささか眩しい思いをしておったが、ようやく慣れ

    てきたぞ。そなたはどうじゃ。

女雛:眩しさには慣れてまいりました。ですが、暗い場所に置かれている時は退屈な

    らものんびりと気ままにしておりましたのに、このように晴れがましいところに

    出されてすまし顔を続けるのが、少しばかり苦痛になっているところでございま

    す。

男雛:そなたの気持ちも解らぬではないぞ。しかしながら、そう長いことではない。また、

    近いうちに暗い場所に連れて行かれるはずだから、今しばらくの辛抱じゃ。

女雛:さようでございますね。では、とびきりのすまし顔を続けることに致します。

男雛:それにしても、あそこに座って我らを見ている女の子の笑顔には降参じゃ。

女雛:ほんに、あどけなく可愛らしい笑顔でございますこと。私どもはあの娘の母親に連

    れられてこの家にやって参りましたが、あの娘は母親以上に私どものことを気に

    入ってくれているようでございますわ。

男雛:母親も我らを大切にしてくれたが、あの娘はさらに大切にしてくれそうじゃな。

女雛:あのつぶらな瞳をご覧下さいませ。純真無垢な眼差しが美しゅうございますね。

    あの娘には辛いことが降りかからないように祈りとうございます。

男雛:そちはすっかり母親の気持ちになっておるようじゃ。だがな、人生、良いことばか

    りではないはず。むしろ、辛いこと・悲しいこと・苦しいことに出会った時にこ

    そ、逃げたり取り乱すことなくきちんと向き合って、冷静な判断をし、くじけな

    いで前に進もうとする芯の強さを、あの娘には身につけて欲しいと思うぞ。

女雛:さすがでございます。まことにご立派なお考えで。まもなく私どもはまた暗い場所

    に連れて行かれますが、再びあの娘に会う日が楽しみでございますね。

男雛:そうじゃ、その時はどのような表情を見せてくれるのであろう。次に会う時のことが

    今から待ち遠しくてたまらぬわ。肩が凝ってきたが、あと少しの間、威厳のあるす

    まし顔を続けることにしようぞ。

女雛:ハイ、頑張ります。
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