ホントは教えたくないんだけど、負けず嫌いな私にも弱点はあるのよ。笑わないで聞い
てね。自尊心があるから、少しだけカッコつけて話すわ。
その1 カミナリ
ピカピカ、バリバリ、ドカン!「ミャ~~~オ」。もう、怖いのナンノって。カミナリほど
恐ろしいものはないわね。突然、平穏を乱すこの光と音が来たら、まずは安全な場所に
駆け込むことにしてるの。というより、思わず飛んで逃げてるだけなのだけどね。
ひとまず隠れる場所は冷蔵庫と壁の間が一番多くて、たまに下駄箱の中も使っている
わ。最近は洗濯機の後ろに逃げ込むこともあるの。なんてったって相手が見えないんで
すもの。何か得体の知れないものが襲いかかってくる感じで身の毛がよだつわ。
気ままなマンション生活は快適なのに、雷鳴が聞こえると、パニックになってしまうのよ。
飼い主夫婦も怖がっているようだから、全く頼りにならないの。とにかく窓から離れた場
所に避難するのよ。
最近はカミナリの回数が増えているから、このマンションのどこかに住み着いているんじ
ゃないかと心配だわ。えっ、住み着いていないって?本当?それなら安心なんだけど。
あの光と音、勘弁して欲しいわね。
その2 インターホン
マンションでは1階のエントランスに呼び出し用ボタンがあって、それが押されると私の
住む部屋のチャイムが鳴り、モニターテレビが映るの。このチャイムの音が嫌なのよ。
突然「ピンポ~ン」と大きな音がするでしょ。びっくりしてパニックになっちゃうの。
モニターの下を何気なく歩いていた時に、急に頭の上でチャイムが鳴ると、飛び上がる
ほどびっくりするわよ。予告無しなんだもの、驚いて当然よね。訪問者があるたびに鳴
るの。
地震の揺れと同じで、この音にもなかなか慣れないわ。お~、嫌だ!
その3 お皿
先日のことよ。私、台所で食事の後片付けをしていた女主人の足元で、うたた寝をして
いたの。そしたら“ガシャン”と大きな音がして、私のすぐそばにお皿が落ちてきたの。
「寝ぼけまなこ」の私は女主人の大きな声とお皿の割れる音、さらに飛び散る破片でパ
ニックになっちゃった。私はその場から逃げようとしたんだけど、足がすくんで動けなか
ったわ。
仕方なしに危険を感じた時の奥義。例の死んだ真似をしたのよ。そしたら、女主人がや
さしく私を抱き上げたの。彼女は私に破片が刺さったのじゃないかと心配したのね。
危険な場所からは脱出できたけど。続きがあるのよ。実は私の体に血がついていたの。
女主人は慌てて怪我の場所を探してくれたけど、私は怪我などしていなかったわ。
血は女主人の指から出ていたのよ。大した怪我ではなかったから良かったけど、こんな
の初めての経験でしょ。ほんとに私、ビビッてしまったわ。
それにしても、平穏な日常の中にも恐怖を覚える悪夢の瞬間は潜んでいるのね。
まさに「恐怖は突然、やってくる」クワバラ、クワバラ。