初夏になると出回る「らっきょう」。カレーライスの付け合わせのイメージが強い野菜ですが、
実は「畑の薬」と呼ばれるほど栄養価の高い食べ物であることをご存知ですか?茨城県は若採
りした小ぶりのらっきょう「エシャレット」の国内シェアが75%の圧倒的な生産県であること、
そして、その味自慢は過去に紹介しました。それでは大ぶりで成熟したらっきょうの生産量は
どうかというと、全国シェアでは8位ですが、東京都中央卸売市場での取扱い額は3位を誇る関
東圏では一番の生産県となっています。エシャレットとらっきょうを合わせると国内ではトップ
クラスのらっきょうの生産県だと言えます。らっきょうの栽培は、私たちが食べるふくらんだ
鱗茎(球根部分)を1つずつ畑に植え付けて育て、その鱗茎が10個ぐらいに分球して増えたも
のを収穫します。茨城県では秋口に親となる鱗茎を畑に植え付け、葉を茂らせ新たな鱗茎に栄養
を蓄えさせ、翌年の5月下旬ごろから7月にかけて収穫がおこなわれます。らっきょうは生育が旺
盛で、収穫後常温で放置しておくと中心部分からすぐに芽が伸びてきますから、市場には茎と根
は1cmくらい残した状態の「根付きらっきょう」や、ほんの少し泥が残っている「泥付きらっき
ょう」、根をきれいに切り取り表面も酢水で洗いすぐに使える状態にした「洗いらっきょう」な
どの姿で出荷され、生らっきょうとして市場に出ることは稀です。今回は今が旬の茨城県産らっ
きょうの紹介です。
<らっきょうの由来>
らっきょうは中国・ヒマラヤ地方が原産のネギ科の植物で、中国では紀元前から栽培が行われ、
薬用として使われていました。日本には平安時代に伝わり、その当時は薬用として用いられて
いましたが、江戸時代ごろになると食用として栽培されるようになったと言われています。
<らっきょうの生産量ランキング>
国内生産量の1位は鳥取県で2,850t 38.5%( 鳥取市、北栄町)、2位鹿児島県で2,190t 29.6%
(南さつま市、曽於市、薩摩川内市)、3位は宮崎県 763t10.3%(都城市、三股町、宮崎市)、こ
の3県だけで国内シェアは78.4%です。・・・そして8位が茨城県で84t 1.1%(行方市、鉾田市、
小美玉市)(2020年)です。
(東京都中央卸売市場での取扱い額ランキング)
1位は鹿児島県産(約359トン)で全体の約45%を占めています。続いて鳥取県産(約269トン:
約34%)、茨城県産(約51.7トン:約7%)となっていて、関東圏では第1位の取扱い額です。
<らっきょうの品種>
らっきょうの種類について意識される方は少ないと思いますが、国内で流通しているらっきょ
うには大きく分けて4つの種類があります。その中でも一番生産量が多いのが「らくだらっき
ょう」です。
(1)らくだ系:全国各地で栽培されていて、在来種であり最も一般的ならっきょうです。
一度に収穫できる数が多く、ほかの種類と比較して大粒なのが特徴です。大粒な見
た目通りのしっかりとした歯ごたえや、シャキシャキの食感が味わえます。
(2)八房系:中型種のらっきょうですが、収穫量は多くありません。シャキッと歯切れよく、
漬物によく使われる品種です。
(3)九頭竜系:九頭竜は品種改良によって最近できたものです。名前は見た目を表していて、
小さい球が10個ほどに分球した状態で収穫されます。福井県在来系の小型種で粒
ぞろいの良さが特徴です。。
(4)玉らっきょう:ほとんどが台湾からの輸入品として入ってくる小粒のらっきょうです。
繊維が細かく、食べるとシャキシャキとした食感と、見た目が綺麗な白で特有の香
りが少ないのも特徴です。甘酢漬けにされた加工品として輸入されます。
(5)その他
①エシャレット:らっきょうを軟白栽培して早採りしたもの。辛みや香りが少なく、
生のまま食べられる。
②島らっきょう:沖縄県の伝統野菜のひとつで、古くから食べられている食材です。
一般的ならっきょうよりも小ぶりで、香りと辛味が強いのが特徴。シャキシャ
キとした歯ごたえがあり、生のまま食べたり、炒め物や塩漬けなどに適する。
③赤ラッキョウ(越のレッド):福井在来のラッキョウと淡路中高黄タマネギを交配し
た世界で初めてのハイブリッド。外皮が透き通った赤紫色でシャキシャキとし
た食感を持ち、とても美味しい品種です。病害虫に強く、栽培は非常に容易。
③越のパール:ラクダ系福井在来らっきょうと浅黄系九条ネギとのハイブリッド。シ
ャキシャキ感に甘みと香りをプラスした新しい味わいです。葉も食べられ、お
つまみにピッタリです。耐寒性が強くプランターでも栽培OKです。
(有名ブランドらっきょう)
1.「砂丘らっきょう」や「砂付きらっきょう」:大玉のらくだ系のらっきょうです。鳥取県
の砂地で栽培され長い根が付いた状態で出荷されることもあります。細かい砂と冬の
寒さにより、身がしまった歯ごたえのよいらっきょうになるそうです。
2.「鳴門らっきょう」:台湾から導入された玉らっきょうです。鳴門市の北東部、鳴門海峡
に面した大毛島では、保肥力・排水性が良い、ミネラルたっぷりの海砂「銀砂」でら
っきょうを栽培しています。銀砂で育ったらっきょうは、小粒で色白、シャキシャキ
の歯ごたえです。
3.「花らっきょう」:福井県坂井市の三里浜の砂地で作られる純白小粒らっきょうは、全国で
唯一、植え付けから収穫まで、足掛け3年もの年月をかけて栽培され、「三年子花らっ
きょ」と呼ばれています。甘酢漬けにしたものが流通しています。
<らっきょうの豆知識>
1.名前の由来:らっきょうの食べる部分は「鱗茎(りんけい)」と言い、「辛くて辛辣な韮(ニ
ラ)」ということから「辣韮(らっきょう)」の名が付いたと言われています。
2.らっきょうの栄養分
〇水溶性食物繊維:食物繊維が豊富であり、らっきょう100gあたり約21gの食物繊維が含
まれています。ごぼうは、100gあたりの食物繊維が約5.7gであることから、らっき
ょうの食物繊維の豊富さが見てとれます。特に、らっきょうの食物繊維はほとんど
が水溶性食物繊維です。水溶性食物繊維は、腸内で膨らんで排泄を促す働きがあり
ます。
〇アリシン:アリシンとは、特徴的な香り・辛みの元となっている成分です。正確には、
らっきょうにはアリインと呼ばれる成分が含まれており、切る・加熱するなどの加
工時に化学変化してアリシンとなります。アリシンには強力な抗菌・殺菌効果があ
ります。アリシンは、ビタミンB1の体内吸収を助ける成分でもあります。
〇カリウム:らっきょう100gあたりには約230mgのカリウムが含まれています。カリウ
ムは、体内に蓄えた過剰な水分を排出する働きがある成分です。
〇硫化アリル:血清を防止し、血行を促進する作用があり、冷え性の改善、動脈硬化の予
防効果が期待されています。
3.らっきょうの1年掘り・2年掘り
らっきょうは秋に芽吹き分球しながら生育し、越冬後は再び春に分球しながら株を大き
く生長させます。らっきょうは花を咲かせますが、種子は作らずに鱗茎の状態で夏の休
眠期を過ごします。植えて1年後に収穫すると、一つの種球から10~15個の大粒のらっ
きょうが収穫できます。これを1年掘りらっきょうと言います。しかし、更に1年間寝か
せて植えてから2年後に収穫する、すなわち2回の冬越しを経験させると、分球が更に進
み1つの種球から30個~50個もの小粒のらっきょうが収穫できます。これを2年掘りら
っきょうと言います。福井県の高級らっきょうである花らっきょうはこの2年掘りです。
4.らっきょうを食べるタイミング
らっきょうは食前に食べるのがおすすめです。なぜかというと、食前に食べることで食
中毒の防止や消化の促進。さらに、血糖値上昇の抑制が期待できるからです。
5.食べ過ぎにご注意
らっきょうに含まれるアリシンの抗菌作用はかなり強いです。多く食べすぎると、腹痛
や下痢・嘔吐といった症状が現れることもあります。らっきょうを食べるのは1日4粒ま
でがおすすめです。
6.ラッキョウの選び方
できれば土が付いていて、粒の揃っているものを選びましょう。芽が伸びていたり、緑
色がかったものは育ちすぎているので避けましょう。
7.ラッキョウの保存方法
生らっきょうは生育が旺盛で、常温で放置しておくと中心部分から芽が伸びてきますの
で、なるべくすぐに甘酢漬けや醬油漬けなどにしましょう。時間を置く場合は、表面が
乾燥しないようにポリ袋に入れ冷蔵庫で保存します。ただし生ものですので、なるべく
早めに使い切るようにしましょう。
<らっきょうの栽培>
今ではイセキの「らっきょう植付機[4条]」など、機械に乗ったまま、2つのターンテーブル
に苗を供給するだけの簡単操作で女性や高齢者でも余裕をもって作業ができる農耕機がありま
す。これは4条分の植付けができるので効率良く作業ができて、能率は手植えの3倍と言われて
います。
(1)らっきょうの種球(球根)を準備する:らっきょうは種で蒔きません。種球で増やして
いく野菜です。らっきょうの食べる部分が球根ですからそれを植える感じです。
(2)らっきょう栽培に適した土を作る:らっきょうは痩せた土地でも育つ野菜です。PHを
5-6あたりに調整すると、らっきょうを育てる最適の土壌になります。石灰などで適
した土壌にします。
(3)らっきょうを植え付ける
①株間10-15センチで深さは3cmぐらいが基本です。
②らっきょうを植える時期は8月下旬から9月中旬あたりにすることが一般的です。寒冷
地だともう少し早め、温暖地だったらもう少し遅めにします。
③らっきょうの種球はくっついていることもありますので一つ一つバラします。植え付
ける方法は先っぽが細いほうが上になるようにして、3cmぐらい土を覆土します。
④らっきょうの植え付けといえば「1球植え」「3球植え」があります。1球植えだと普
通のらっきょうが栽培できますが、3球植えだと小さならっきょうがたくさん採れる
傾向があります。
(4)追肥をする:らっきょうはあまり肥料を必要としない野菜です。基本的にらっきょうは
8月~9月に植え付けをしてそのまま収穫まで放置していても育つ、手のかからない植
物なのです。但し、大きならっきょうを育てたい!たくさんらっきょうを収穫したい!
なら1~2回の追肥は必要です。
(5)土寄せをする:土寄せをすることで真っ白で綺麗ならっきょうが出来ます。らっきょう
は基本的にそのまま放っておいても育つ野菜ですが、少しでも美味しそうならっきょ
うを育てたい場合は土寄せが必要になります。土寄せとは基本的にらっきょうの根本
に土を寄せる行為です。何故土寄せが必要かと言うとらっきょうは育つに連れてどん
どん上の方に出てきてしまい日光をあびることによりらっきょうの食べる部分が緑色
になってしまいます。売っているらっきょうって真っ白でとても綺麗ですよね。緑色
になるのを防ぐ為に土寄せをしているのです。土寄せは3月~4月の春の時期に一番成
長する時期にすることが良いです。
(6)らっきょうを収穫する
1年掘りらっきょうでは大体6月~7月ぐらいになると葉が枯れてきます。それが収穫
の目安です。らっきょうの旬もこの季節なのですが、3~4月に早採りするらっきょう
もあります。これをエシャレットと言い、茨城県がシェア1位です。
<連作は可能なの?>
らっきょうは連作障害が起こりにくい野菜なのでそのまま連作しても問題ないそうです。来
年も美味しいらっきょうが食べたいならば土を整えて植えることをオススメします。
<らっきょうの変わった食べ方について>
(1)らっきょうタルタル:酢漬けのらっきょうを細かく刻んで、ゆで卵やマヨネーズと混
ぜてタルタルソースにする。
(2)らっきょう入りつくね:らっきょうをみじん切りにして、ひき肉や調味料と混ぜてつく
ねにする。
(3)砂丘らっきょうのおかず:砂丘らっきょうは鳥取県の特産品で、甘酢漬けになっていま
す。これをエリンギやにらと一緒に炒めたり、チーズやベー
コンと巻いて焼いたりするとおいしいそうです。
カレーのお供が定番の「らっきょう」。漬物として販売されている商品しか購入したことがない
という人も多いかもしれませんが、らっきょうの栄養素は熱や水分に弱いので、生で食べるのが
おすすめなのです。生のらっきょうと言えば茨城県産のエシャレットですね。エシャレットは春
が旬ですが、初夏の時期は夏バテ防止に茨城県産のらっきょうですね。エシャレットの次はらっ
きょうを食べて、活き活き生活を送りましょう。
是非、茨城県のらっきょうをご賞味あれ!