ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

「オシドリの飛来地」とは知らなかったなあ~!

2019-03-25 14:07:19 | 日記




老夫婦の住む住宅地の周辺には手入れの行き届いた雑木林や公園として整備された沼があり
ます。二人はそんなバードウォッティングに適した場所を目的地として、四季折々の風情の
変化を楽しみながら散歩を楽しんでいます。冬季の時期の楽しみは何といっても探鳥です。
今年はフクロウ、ベニマシコ、カシラダカなど、これまでじっくり観察ができなかった鳥た
ちを見つけることができました。ここで取り上げるのは「オシドリ」群団との出会い!
オシドリが身近な沼に飛来していることを知らなかったのです。



夫:沼に着いたけど、昨日、オシドリを見つけたのはどの辺りだい?

妻:ここからだと遠いので見つけにくいけど、ホラ、向こう岸の樹木を見て。枝で日陰にな
  っている場所の水際よ。手前の明るい水面はカモたちだけど、奥の日陰にいるのがオシ
  ドリよ。

夫:遠~いい。おォ~確かにいたぞ。オシドリだ!この沼では初めて見るね。

妻:遠くて日陰だから、あんなに派手な姿でも見つけられなかったのね。後で聞いたことだ
   けど、もう何年も前からここに来ているそうよ。

夫:この沼がオシドリの飛来地とは知らなかったな~!この公園にはよく来ているけど、あ
   の場所じゃ見つけられなかったわけだ。それにしても、今回は良く見つけたね。

妻:珍しいカモがいないかなと、300㎜の望遠カメラでしっかり観察したのが良かった。

夫:なぜ、これまで知らなかったのかな~?この地域にも探鳥会のグループがあって観察し
  た結果をブログで発表しているから、「地域名+オシドリ」で検索すれば、この沼の名
  前が出てもおかしくないと思うんだけどな。

妻:探鳥会の人がオシドリを守るために発表を抑えているんじゃないの?

夫:そうカモね。この沼がオシドリの飛来地であることを、自分たちの目で確認できたこと
   がこの冬の収穫だね。オシドリは冬にしか見かけないから、オオハクチョウのように、
   冬季にシベリア方面から渡って来る「冬鳥」かなと思ったこともあるけど違うようだ
   よ。

妻:そうね、冬の使者「オシドリ」が飛来!なんてニュースは聞いたことないわね。私も冬
   にしか見たことがないわ。夏はどこで暮らしているのかしら?

夫:鳥の「渡り」という生活習慣で分類すると、まず「冬鳥」だね。北方から南下してきて日
   本で冬を過ごすタイプで、ツグミ、ジョウビタキ、オオハクチョウ、マナヅルたちだ。
  「夏鳥」は南方から北上してきて夏を日本で過ごすタイプで、ツバメ、オオルリ、キビタ
   キ、サシバなどだ。そして「旅鳥」と言って、渡りの途中、春・秋に定期 的に姿を見せ
   る鳥たちで、日本ではシギ、チドリ類に多い。そして何といっても一番多いのは「留鳥」
   として一年中同じ地域で生活していて、季節による移動をしないタ イプでスズメ、キジ、
   カラス、フクロウなどがいる。でも、「留鳥」の中には、山地から平地に移動するなど、
   日本国内を比較的近距離を移動するタイプがいて、それを「漂鳥」と分類する人もいる。
   ウグイス、ヒヨドリ、ホオジロ、そしてこのオシドリもここに分類されている。ただ、留
   鳥と漂鳥は同一の鳥でも住んでいる緯度や高度という環境の違いで区別が難しい場合があ
   り、漂鳥という分類をしない図鑑もあるそうだ。

妻:日本でのオシドリの生活はどうなの?

夫:日本では北海道や本州中部以北で繁殖し、冬季になると本州以南(主に西日本)へ南下して
   越冬するそうだ。でも、オシドリの中には冬期に国外から渡って来るのもいるらしい。

妻:この沼は関東圏にあるから東北・北海道辺りからやって来たのかもしれないわね。

夫:主には山地で繁殖するのだろうけど、都会の庭園などで繁殖している写真を見たことがある
   から、臆病なくせにしたたかな奴もいるんだな。

妻:滋賀県の三島池で見たけど、オシドリはカモなのに木の枝に登るのが得意よね。あれも臆病
   が生んだ技ね。

夫:オシドリのきれいで複雑な羽根色は婚姻色だ。オシドリの繁殖期は、ちょうど梅雨時にピー
   クを迎えるんだ。ひなは雨に非常に弱く、梅雨時の雨量によって、その年の育成率も左右
   されると書かれていた。繁殖期が終わると雄の羽は生え替わり、派手な姿から、雌と似た
   あまり目立たない姿に変わる。これを「エクリプスへ変化する」と言うそうだ。なんだか
   不思議な表現だけど、エクリプスとは英語で「日食」を意味するそうだ。この現象はカモ
   類共通なので、この時は一時飛べない時があるんだって。

妻:カモにも飛べない時期があるのね。初めて知った。ところで、エクリプスだっけ、その時
   は雄と雌の区別は一目でわかるの?

夫:メスはくちばしと羽根が同じ灰色系統だけど、オスは口ばしが赤いので分かる。

妻:主食は?

夫:カシ、ナラなどの"どんぐり"を好んで食べ、水辺近くの大木にできた"うろ"に巣を作る。

妻:なるほどね。あら、オシドリたちが明るい水面に出てきたわ。やっぱり雄と雌が寄り添っ
  ていると、「オシドリ夫婦」の言葉がピッタリね。

夫:余計な事かもしれないけど、実は繁殖の度に雄雌で相手を変えているそうだよ。

妻:そうなの?知らなかった。でも、やはりそうだったのかという感じね。分かるな。

夫:おいおい、変な方に話を持っていくなよ。



二人が中部圏に住んでいた当時の「オシドリ」は身近な池に行けば、必ず見ることができる
鳥でした。しかし、関東圏に住んでからは全く出会うことがありません。おそらくこの辺りに
は飛来していないのじゃないかと思っていたぐらいでした。今回のオシドリ群団の発見は昔
の中部圏時代の生活を思い出す良い機会になったようです。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

早春の雑木林を彩るスプリング・エフェメラルな仲間たち

2019-03-11 07:29:39 | 日記


1.早春の植物たち

雪が解けはじめた森は、広葉樹がまだ芽吹かず、春の日差しがいっぱい地表に降りそそぎ
ます。そこにはつかの間ですが、「スプリング・エフェメラル」と呼ばれる野草たちが姿
をあらわします。
「スプリング・エフェメラル」とは、春先のはかない命という意味です。早春のごく短い
一時期だけに、大きな花、華やかな色彩を持って姿をあらわしますから目につきますが、
いずれもみんな背が低くきしゃ、そしてすぐに姿を消します。そうした姿や生き方から
「春の妖精」とも表現されています。
早春の花たちのほとんどは、マルハナバチの新女王蜂や低温でも活動するハナアブ科のハ
エ類によって花粉を運んでもらう虫媒花です。春の妖精たちはそれほど多くない活動中の
昆虫の目を引き寄せる工夫をしています。一番多いのが花を小さくして、ガク片を大きく
花弁のように変形させて、大きな花のように見せかけるタイプです。大きな花なら蜜がい
っぱいありそうですよね。他にも、カタクリの花はチョウやハチが好む赤色光や青色光を
反射することで、これらの昆虫を誘引していると考えられています。他にも、目立つ鮮や
かな色彩をしているもの、蜜のある場所を工夫しているもの、花の構造が昆虫の止まりや
すいようにできているもの、そして時間差で複数を咲かせるものなど、それぞれに精いっ
ぱいの工夫が仕組まれています。
 一方、種子散布も昆虫、特にアリを利用して行われます。多くの妖精たちの種子には、
先端に白い団子状のものが付いています。この団子状のものはエライオソーム(種沈)と
呼ばれており、その中にはアリの餌となる物質(オレイン酸などの脂肪酸、グルタミン酸
などのアミノ酸、ショ糖などの糖)が含まれています。そのため、種子が熟すとすぐにア
リが集まってきて、その種子を巣の中に運び込みます。運ばれた種子は巣の中でエライオ
ソームの部分だけ食べられ、残った種子そのものは食べカスとして巣の中のゴミ捨て場に
捨てられたり、巣の外に土と一緒に捨てられたりします。いずれにしても、種子は発芽能
力を失うことなく、運ばれたことになります。アリにとっても、餌となるエライオソーム
を獲得できるので、両方が利益を得ることになり、アリと植物は共存共栄の関係にあります。

それでは代表的な妖精の仲間を紹介しましょう。
 
キンポウゲ科:・セツブンソウ・フクジュソウ・ユキワリイチゲ・キクザキイチゲ
       ・アズマイチゲ・イチリンソウ・ニリンソウ・サンリンソウ
       ・サバノオ・トウゴクサバノオウ・サイゴクサバノオ
       ・ミスミソウ(別名ユキワリソウ)

ユリ科:・カタクリ・アワコバイモ・トサコバイモ・コシノコバイモ・ミノコバイモ
    ・カイコバイモ・ホソバノコバイモ・イズモコバイモ・アマナ・ヒロハノアマナ
    ・ホソバノアマナ・キバナノアマナ・ヒメニラ

ケシ科:・ヤマエ

森や林では春の明るい太陽の日差しが、まだ芽吹いていない木々のこずえを通り抜け、地面
を暖めます。春の妖精たちはこの短い期間に葉を広げ、可憐な花々を咲かせその種子を残し
ます。やがて広葉樹が芽吹き、その枝葉を広げて森や林の地面は暗くなる5月には、次の春に
向けて静かに眠りにつくのです。彼らが地上に葉を広げて姿を見せるのは1年のうち、春先の
2ヶ月足らずの期間です。スプリング・エフェメラル(春先のはかない命)とは、このことを
表現しています。

2.早春の蝶

ギフチョウやウスバアゲハ(ウスバシロチョウ)など、春先のみに成虫が出現する昆虫のこ
ともスプリング・エフェメラルという人もいます。ギフチョウの場合、春先(4月始めごろ)
に羽化した成虫は、すぐに卵を産み、卵はすぐに孵化して、カンアオイなどの食草をどんど
ん食べて成長し、夏には蛹になります。その蛹がそのまま翌春まで、落ち葉の下で休眠して
しまうのです。ウスバアゲハの場合は、春に孵化した幼虫は6月初めに羽化し、成虫は落ち
葉などに産卵し、卵は翌春に孵化します。この生活史がスプリング・エフェメラル的だとい
うわけです。


私がそうであるように、一度スプリング・エフェメラルに魅せられた人たちは、生涯「春の
妖精たち」の観察者であり続ける事になるでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする