ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

幻の赤いバレーシューズ

2013-09-23 07:06:01 | 日記





あれから何年経ったのだろう。思い起こせば、ひと昔も前の話だ。


窓を全開にして、信州の爽やかな空気を楽しみながらのドライブ中。

突然、霞か霧がかかったような白い群落が目に飛び込んできた。

近くの空き地に車を止めて、カメラ片手に駆け寄った。


ソバ畑のようだ。

初めて見るソバの花。小さな白い花がたくさん付いている。

これが実になって、あの旨い蕎麦に変身するのか・・・

米や麦など穀類の花は全く目立たないのに

ソバの花はどうしてこんなに可愛くてきれいなのだろう。

もしかしたら、科目が異なるのかもしれないな?

そんなことを考えながら、カメラを向けていると

白い花々の中に、チョコンと小さなバレーシューズが。


何? これは何だ?

どう見ても赤くて可愛いバレーシューズだよ。

アングルを慎重に決めて3枚だけ写した。

何しろフィルムカメラだ。残り枚数が気になる。



他にもあるのかな?実になる直前の姿かもしれない。

目が届く範囲を探してみるが、見当たらない。

いとおしいものを発見した高揚感を引きずりながら、走り去る。

すると、今度は赤いジュウタンが見えてきた。


またしても車を止めて、歩み寄る。

さっき見たソバの花とそっくりだけど、赤い。

これも初めてだから、しっかり写しておかなくちゃ。

探してみたけど、あのバレーシューズは見つからない。


近くの蕎麦屋に入店すると、「赤ソバの十割蕎麦 有ります」の張り紙。

迷うことなく注文し、初めての赤蕎麦をじっくりと味わった。


今でも、蕎麦を食べるたびに思い出すのが、あのバレーシューズだ。

あれから一度も出会えていないせいで、恋しくて仕方がないんだよ。

あの「幻の赤いバレーシューズ」が・・・・・
コメント
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