ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

あ~ァ! メガ・ソーラー畑になっちゃった!

2020-05-25 07:34:18 | 日記


私の住む街にはスポーツクライミング界の第一人者、「野口 啓代(のぐち あきよ)」さん
の実家、野口牧場があります。牧場内にはトレーニング用のクライミングジムがあるそうで
す。牧場とありますが牛舎飼育です。周辺は広く平たんな田園で、近くに行くと牛舎特有の
匂いがしますのでわかります。我が家からは3000歩ほどの距離にあり、散歩に行くときの目
的地に野口牧場を設定して歩くことも多いです。

好天に恵まれた日、歩数計を胸ポケットに入れて野口牧場に向かって歩き始めました。今回
の目的地は野口牧場を通り過ぎた先にある雑木林です。この時期ですと、春に咲く林床の花
たち(キンラン・ギンラン・ハルリンドウなど)は花の最盛期を過ぎて、眠りに入っている
でしょう。見どころはツツジ、ガマズミ、ヤマボウシなどの樹木の花たちになっているはず
です。この雑木林は野口牧場を経由して2倍ほどの遠距離にあるため、過去に1度しか行った
ことがありません。その時は秋で、落葉樹の紅葉がとても綺麗でした。春にこの雑木林へ行
くのは初めてです。樹木の花たちを愛でて、ウグイスなどの野鳥のさえずりを聞くことが楽
しみです。

中間の距離にある野口牧場まで来ました。すると広い敷地から車が出てきて私の目の前で止
まり、女性が降りてきました。私と目が合うと「こんにちは!」と明るく挨拶をしてくれま
した。容姿からこの方は野口選手のお姉さんだろうなと想像できました。私も慌てて挨拶を
返しました。オリンピックの開催延期で野口選手の心情に思いを馳せる地元フアンの一人と
して、お姉さんを介して頑張れと心の中で叫んでいました。

そろそろ遠くに目的の雑木林が見えてもよい距離に近づきましたが全く樹木が見えません。
一瞬、久し振りなので道を間違えたのかな?と思いました。それでも周りの畑の雰囲気や特
徴的な屋敷森に囲まれた大農家の建物には見覚えがありました。更に近づいて行くと、異様
な光景が目に飛び込んできました。電信柱が密集して整然と並んで何本も立っているのです。
嫌な予感がしました。

雑木林があった場所に着きました。懸念したとおり、そこに広がっていたのは環境破壊の元
凶であるメガ・ソーラーパネル群でした。行儀よく林立していた電信柱はソーラーパネルで
集めた電気を送電線に送るためのものでした。かつてあった雑木林はその面影も残さず、更
に匂いのかけらもなく、無機的で大きなソーラーパネル畑の景観に変わってしまっていまし
た。一瞬、足が止まってしまいました。なんと表現したらよいのか分かりません。

昨年(2019年7月22日)のブログで「環境破壊で甦った、大正時代の竹内農場西洋館」と題
して、廃屋となった赤レンガ西洋館の存在を紹介しました。その内容は、隣接地の雑木林が
伐採されてメガソーラーパネルが施設されたことで、西洋館の敷地にも手が加わり、覆い隠
していた竹藪や樹木の一部が取り払われ、簡易的な整備がなされたことで森の中から廃屋と
なった西洋館の姿が現れた様子を記しました。そして今年(2020年4月27日)のブログで、
この蘇った廃屋の赤レンガ西洋館が「市民遺産」に認定されたことを記しました。

私は思いました。広い雑木林が伐採されて、メガソーラーパネルが設置されることが決まっ
たことが引き金になって、旧赤レンガ西洋館の存続を願う市民団体の活動が活発となり、市
政を動かして「旧赤レンガ西洋館の市民遺産」が誕生したことは間違いないのだろうと。
もし、樹林を伐採したメガソーラーの設置が無かったならば、あの廃屋の赤レンガ西洋館は
今も森の中で佇んでおり、ただ朽ちていくのを待つ身だったのでしょう。あの時はメガソー
ラーの設置も、たまには良いことに貢献することがあるものだと思いました。

でもこの場所にあった雑木林が伐採されて、ここがメガソーラーパネル畑となったのは悲し
いです。生み出されたものが何もないように見えるのです。ただただ雑木林が破壊されただ
けとしか評価ができないのです。雑木林を破壊しない新発想のソーラーパネルが早く開発さ
れることを切に願っています。私はメガソーラーパネルの前で佇み、歯をくいしばり、強く
こぶしを握りしめました。

私が歩いた時期はキンラン・ギンランの花の最盛期は過ぎていましたが、まだその痕跡は残
っていたかもしれない。もしかすると遅咲きが1輪ぐらい残っているのではないかと期待し
ていたのですが、このソーラーパネル畑では痕跡を探すこともかなわず又、この雑木林の中
に花の咲く木々たちがどれだけの種類そして数があったのかどうかもわからないままとなり
ました。あ~ァ!野鳥のさえずりが聞きたかったな。
家に戻ったら、前回ここに来た時のアルバムを広げて追悼しようと思いました。

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里山の野生ラン、「キンラン」「ギンラン」

2020-05-11 07:30:03 | 日記


<里山>
昔の日本はエネルギーを薪や木炭に頼りました。クヌギ、ナラ、ブナそしてカシ類がその
原料です。人々はその原料を再利用するため、根から切らずに途中から木を切り再生させ
ました。そして、木の生育環境を整えるために下草を刈りました。こうしてできた里山や
雑木林は燃料と堆肥の供給源でした。その後、エネルギー革命や肥料革命が進行し、里山
の役割が減少し、その結果として、下草の手入れがされなくなった里山は藪化していきま
した。人口増による大規模団地の開発も藪化に拍車をかけました。

<冬から春にかけての里山>
よく手入れがされた里山では、雪解け後から桜の咲く4月ごろにかけて一斉に咲くスプリン
グ・エフェメラル(春の妖精たち)と言われる、福寿草、カタクリ、二輪草などが林の樹
木の若葉が出る前に、自分の葉の大きさに負けない大きな花を咲かせます。そして太陽の
光を十分に浴びて、わずかな昆虫たちを呼び寄せ、子孫を残して静かに土の中で眠りにつ
きます。
5月に近くなると、春の妖精たちが眠りについてから地上に顔を出し、咲き始める一群の
花たちがいます。この花たちが咲くころはすでに、雑木林の樹木には若葉が出ており、地
上へ降り注ぐ陽の光はかなりさえぎられています。こんな環境下で咲く花たちには大きな
特徴があります。それは花の大きさが春の妖精たちと比べてとても小さいことです。こう
した仲間たちには「キンラン」「ギンラン」の他に「春リンドウ」「シュンランなどのエ
ビネの仲間たち」などがいます。

<里山の野生ラン>
ラン科の植物は世界に1万種以上の種があり、被子植物では最も進化した植物の一つとさ
れます。花を特徴付けるものは、雄しべと雌しべが合体したずい柱を持ち、外花被3枚、
内花被3枚が左右対称に開くことですが、何より不思議な生態は発芽や生育に菌類と複雑
な関係を結ぶことです。樹木は光合成で得られる炭素源(糖)を菌根菌に与え、菌根菌は
アミノ酸合成に必要なチッ素などのミネラルを樹木に与えます。キンラン・ギンランはそ
の共生関係に割り込み、両方から炭素源とチッ素源を分けてもらい生活をするのです。

<里山のキンラン・ギンラン>
キンラン、ギンランは日本の野生ランのひとつです。一昔前は雑木林の中や、里山の縁の
何処にでも見られた花でしたが、里山の藪化の進行で、明るい雑木林を生育条件とするキ
ンランは、急速に数を減らしています。それでも、どっこいキンラン・ギンランはたくま
しく生きています。私が散歩する蛇沼水路の遊歩道の雑木林では、今年もキンラン・ギン
ランが咲きました。花は5月中旬ごろまでが見頃です。「キンラン」の茎の高さは40cmほ
ど、「ギンラン」は20cmほどですが、花は共にとても小さいです。採集して移植しても、
上記の理由で栽培することはできません。ギンランによく似た仲間として、ササバギンラ
ンやクゲヌマランがあります。私はこの花たちを愛でながら歩くことを、この時期の一番
の楽しみにしています。

<キンランとヤブキリ>
花たちはチョウやハエ・ハチなどを蜜で誘って花粉を運んでもらいますが、春に孵化した
昆虫の幼虫たちにとっては、花粉は大切な食糧源です。散歩中に藪の中にいるキリギリス
が名前の由来である、「ヤブキリ」(キリギリスの仲間ですが違うバッタです)の幼虫が
キンランの花粉にむしゃぶりついているのを見つけました。ヤブキリの幼虫は姿かたちの
かわいさという観点から見ると,この時期一番のかわいさだと思うのですが、どっこい、
成虫したヤブキリは自分より大きいカマキリをも餌とするどう猛なハンターになります。
そんなヤブキリですが幼虫の期間は長くかなりの期間,花の上で過ごしているようです。

<来年も会いたいね!さようなら!>
神の領域を「山岳」といい、人が暮らす場所を「里」といいますね。里に隣接する山は、
人の暮らしの影響を永続的に受けます。人と共に暮らす里山が好きなキンラン、ギンラン
は光エネルギーと水、二酸化炭素で光合成をしますが、地下に張り巡らされた樹木根と菌
類の複雑な生態系に割り込み、ちゃっかり栄養をもらって暮らします。人工的に森の複雑
系を再現できません。見つけても栽培はできませんので野に置いておきましょう。
そうすれば必ず来年も私たちの目を楽しませてくれます。

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旧赤レンガ西洋館に住む白いカエル

2020-05-04 07:52:51 | 日記


先週、「茨城県龍ケ崎市の蛇沼のほとりにある大正時代に建設されて、現在は廃屋となっ
ている赤レンガ西洋館が、「旧竹内農場赤レンガ西洋館及び竹内家文書」の名称で市民遺
産として保全管理されることになった」ことを紹介しました。私はそのレポートのために
西洋館へ出かけましたが、その折り、西洋館が建つ敷地内で主のように胸を張り、私を見
上げる白いカエルを見つけました。直ぐにニホンアマガエルだと分かりました。でも、ア
マガエルと言えば「緑色」のはずです。白いアマガエルとは珍しいぞ!それにこの白色は
アルビノによる脱色素によるものではない、これはスクープ写真になるぞ!と気持ちを高
ぶらせながらカメラを向けました。

白いカエルはとても静かにしていました。上から、横からとカメラを向けてシャッターを
押している時、岐阜県在住時代、我が家の庭で空色のアマガエルを見たことが思い出され
ました。白いカエルを見つけた時には忘れていましたが、アマガエルの体色変色すなわち
擬態化はそれほど珍しいものではないのかもしれないと思い直して調べることにしました。

その結果、ニホンアマガエルは環境に合わせて擬態化することはよく知られており、白色
への変化もさほど珍しいものではないという記述を見つけました。旧赤レンガ西洋館の敷
地内は古いレンガやコンクリートの破片などが残されており白っぽい環境の場所もありま
す。どうやら、コンクリートに合わせて白く擬態化したようです。私は白いカエルとは大
変珍しいもので、「見つけたぞ、やった!」と、内心は興奮していたのですが、自分の無
知をさらけ出すだけの結果となりました。恥ずかしい限りです。せっかくなので、ニホン
アマガエルの体色変化すなわち擬態化について調べました。

<日本のカエルで体の色を変えられる種類>
ニホンアマガエル、モリアオガエル、シュレーゲルアオガエルの3種類です。この中でも
ニホンアマガエルの擬態は抜きんでています。

<ニホンアマガエルの体色変化>
ニホンアマガエルは体長3~4 cmの小さなカエルで,おもに樹上で暮らしています。体色
変化には限界があります。白、灰、茶、緑くらいの範囲内です。葉の上にいる時には鮮や
かな緑色をしていますが,地面に降りると数十分のうちに黒っぽい色に変化します。カエ
ルの皮膚には3種類の色素細胞があって,それぞれ黄色素胞,虹色素胞,黒色素胞と名づ
けられています。黄色素胞と黒色素胞は,細胞内にある粒状の構造(色素顆粒)にそれぞ
れ黄色と黒色の色素をもっています。虹色素胞は,グアニンの結晶(反射小板)が規則正
しく並んだ構造をもち,光の散乱や干渉によって青色を発色します。カエルの体色はこれ
らの色素細胞の働きあいによって生み出されており,カエルのからだに緑色の色素が存在
するわけではないそうです。
もう少し詳しく記します。体色の変化は、それぞれの色素細胞における色の濃淡の変化に
もよります。たとえば,カエルを黒い背景の上に置くと,黒色素胞の色素顆粒が細胞全体
に拡散し,虹色素胞の反射小板が細胞の中心に凝集します。すると,黒色素胞の色が黒く
なり,虹色素胞から反射される光の量が減るため,カエルの体色は暗くなるのです。白い
背景ではこの逆の現象が起こり,カエルの体色は明るくなります。又、この虹色素胞は他
の素胞では吸収されない緑の色を反射するので、カエルは普段緑色なのです。カエルなど
の両生類の場合,色素顆粒の凝集と拡散はホルモンの働きによって調節されているようです。

旧赤レンガ西洋館のように壁やコンクリートなど、白っぽい部分がある場所では全身が真
っ白になることもあるそうです。土の上では茶色になったり、灰色にもなります。草の上
でも濃い緑だったり明るい緑だったり、模様が出てきたりと見ていると面白い変化が観察
できます。ちなみに、色を変えるのは周りの色だけに反応している訳では無いようで、同
じ場所に居ても昼と夜だと色が違っていることもあり、又、個体差もあるようで、ずっと
緑のままのものや茶色のままのものもいるようです。
それから、青いアマガエルや黄色いアマガエルはアルビノ(色素欠損)で、先天的に黄色
の色素が欠けていると青になり、青の色素が欠けていると黄色になると記述されていました。

<一般的には体色変化は普遍的なもの>
複数の色素細胞を操って体色を変える現象は,両生類やは虫類・魚類など,さまざまな生
物に見られます。ところが,私たちヒトには1種類の色素細胞(黒色素胞)しか存在せず,
皮膚の色を素早く変化させるしくみも備わっていません。ほ乳類はからだが毛に覆われて
おり,皮膚の色を変えるメリットは小さいと考えられます。そのため,長い進化の途中で
皮膚の色を調節するしくみの一部を失ってしまったのでしょう。体毛の多くを失った今と
なっては,少し惜しい気がします。こんな記述もありましたので紹介します。

皆さんは新型コロナウイルス拡散防止対策での自粛生活を頑張っておられると思います。
私もこんな状況下ですから旅行に出かけることはしていません。暫くはこうして散歩道の
行動範囲内で起きた出来事を題材とします。


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