まろの陽だまりブログ

顔が強面だから
せめて心だけでもやさしい
陽だまりのような人間でありたいと思います。

真鶴の巨人

2023年12月05日 | 日記

長年、美術番組を担当してきたせいか
ときどきリアルに「絵」の夢を見ることがあります。
絵にも描けないような美しい夢の話ではなく
画家が実際に描いた「絵画の作品」がリアルに登場する夢です。
そんな夢を見る人があるのかなあ・・・思うのですが。

文化勲章画家・中川一政の「福浦突堤」という風景画がです。
神奈川県真鶴町の美術館で初めてこの絵を観た時は
思わず「なんじゃ、コレは!」と叫んだことを覚えています。
絵の具をぶ厚く何層にも塗りこめた図面。
風景画とは思えぬ大胆な筆致で描かれたデフォルメの痕跡。
風景画とは「美しいもの」と思い込んできた私の安っぽい常識を
根本から否定し突き崩すような力感に溢れていました。
「こんな風景があるのか・・・」と呆然自失。
以来、中川一政さんの絵にすっかり魅了されその名を心に刻みました。
俳優の緒形拳さんは中川さんを「真鶴の巨人」と呼んで敬愛し
作家の向田邦子さんは念願かなって作品を手に入れた時は
感激で「死んでもいい」と叫んだとか。
私も「ぜひ一枚」と願ったものの未だに叶わぬ夢のままです。(笑)
絵はもちろん彫刻も塑像も書も洒脱なエッセイも。
残された作品はいずれも中川さんらしい
大胆さと力強さと味わいにあふれた作品ばかり。
夢で逢うのがせいぜいでしょうか・・・