GOVAP便り

プノンペンからモンドルキリに、その前はTAY NINH省--AN GING省--HCM市GO VAP

もっとしたたかに

2007-08-31 02:29:53 | 新聞・書籍
ここ二日ばかり小説を読んで夜更かしをしてしまい、今朝は家の前を通る廃品回収の声に慌てて飛び起きました。桐野夏生の小説を読むのはこれが初めてで、文庫本のカバーの写真を見て初めて女性だと知りました。「リアルワールド」との題名ですが、ベトナムの現実に沈殿している身には何処がリアルなんだよとの思いもしますが、ベトナムの現実ですら自分が感じてるところ以外に在って、自分が触れられずにいるだけだ、ということも考えてみるべきなのかも。

読み掛けの「毛沢東の私生活」はまだ上巻の途中なのですが、内容以上にそのワイドショー的タイトルが気に入りません。自分のことで手一杯、他人の私生活を気にする暇はないわけだし・・・それにやっぱ医者の書いた本は共感できない溝があるよなー・・・などと訳のわからぬことを呟いていたところだったので、「リアルワールド」を読み始めた時はかなり夢中になりました。が、初めの高揚は徐々に尻つぼみ。そして、何んだ、また最後は自殺で終わるのかよー、と不貞腐れ。

べトナムでは死刑判決を受けても妊娠している女性は執行されないそうで(日本はどうなのか知りません)、先日死刑判決後に収監先で妊娠した死刑囚がいました。看守が死刑囚の妹と仲良くなり、他の受刑者と死刑囚との数回に渡る妊娠作業を手伝ったのだとか。死刑囚の姉は美人(かどうかは知りませんが)のお陰で命拾い。日本と比べれば、死刑判決も執行も格段に多いベトナムのようです。交通事故や凶悪犯罪の多さは「命の軽さ」にため息が漏れるほどです。バイクの対人賠償保険も10万か20万円程度だし。

だけどそういう命の軽さだからこそ必死に生きようとするのかも知れません。日本は社会と人間の精神が複雑化することによって却って死が安易に選択されてしまっているような気がします。かつて日活映画の「もっとしなやかにもっとしたたかに」を観に行ったことがあります。ストーリーは忘れましたが。ベトナムの風土と社会が生み出した「したたか」と「しなやか」さを自分も見習うべきなのでしょうか。