ひよりの音楽自己満足

自分の好きなアルバムやアーティストを紹介させていただきます。

一噌幸弘トリオ  咲くシャク

2012-01-03 08:22:55 | World Music
 <一噌幸弘さん>。一噌さんは、能楽の一噌流笛方、一噌家に生まれ、9歳で初舞台を踏んで、以降笛方として活躍し大曲も演奏。91年からは能の古典や、オリジナル曲や、クラシックまで幅広いレパートリーを独自の解釈で演奏するコンサート<ヲイヤリ>を定期的に開催しています。“能”での“笛”という固定観念を破ってジャンルを超えて“能笛”の可能性をおおきく広げて、様々なジャンルのミュージシャンと競演もされています。しかも和楽独特の“間”も素晴らしいのですが、信じられないくらいの超高速の指使いによる奏法も驚異です。ずっと以前、自分はそのときまだ一噌さんのことを全然知らなくて、ギタリスト<鬼怒無月さん>目当てで一噌さんのライブを観に行ったんですけど、鬼怒さんのギターもさることながら、一噌さんのギタリストの早弾きみたいに高速で吹く演奏家に超ビックリ!信じられませんでした。圧倒されちゃいましたね。もちろんただ早いだけでなく独特の“間”も絶妙でした。ちなみにそのときはタブラの<吉見征樹さん>とのトリオ編成でした。たしかそのときは予定されていたヴァイオリニストが急に参加できなくなったために、偶然にも一噌さん・鬼怒さん・吉見さんのトリオ演奏になったんですね。
2011年10月、そのトリオでのアルバム「咲くシャク」が発表されたと知ってビックリ!すぐ一噌さんのHPの通販で注文して手に入れました。メンバー皆さんのサイン入りで嬉しいっす。ライナーノーツによれば、タイトルの“咲くシャク”とは“桜咲く”と言う意味だそうで、東日本大震災のあとも季節のままに咲く満開の桜のもとでこのアルバムの構想を練ったそうです。そして復興への思いと、その桜を見ることなく天国へ旅立ったお母様への思いを込めて制作されたそうです。
 アルバム1曲目は「返シしゃく上」。郷愁ただよう尺八とギターの音色がしっとりと響いて、それが徐々に盛り上がって。そしてタブラのゆったりとしたリズムがはいって笛の音色が哀愁たっぷりに。その後アップテンポのタブラのリズムと軽快なギターのカッティングリフにのって笛の音色が力強くながれ、そしてギターリフから笛の2本吹きの力強いフレーズから、ギターとのテクニカルなユニゾンリフがスリリングに展開し、掛け合いも。中盤ではギターの哀愁ただようリフにのって笛のエモーショナルなソロが。それが徐々にパワフルにテクニカルに盛り上がっていってアグレッシブに。テーマフレーズとテクニカルユニゾンリフのあと、アップテンポのタブラのリズムをバックにギターソロが。序盤はエモーショナルに、それが徐々に盛り上がっていってエネルギッシュに。その後テーマフレーズ&ユニゾンリフに戻り、今度は叩きまくりのタブラソロが。終盤ではテーマフレーズに戻ってギターのメロウなリフから笛2本吹きのリフへ。そしてテクニカルなユニゾンリフがスリリングに。ラストは激しいギターのカッティングをバックに力強い笛の音色がゆったりと響き、盛大にFin。
 2曲目は「らそらとんび」。尺八のテクニカルなソロからはじまって、ギターのカッティングリフとタブラの軽快なリズムにのって爽やかで雄大な感じのメロディがながれて。まるで草原を駆け抜けているかのようです。そしてギターの軽快なカッティングソロ、笛の爽やかで心地よいメロディのソロが。もちろん超テク早吹きも。中盤では笛の3本吹きのソロも。タブラも叩きまくって。その後テーマフレーズに戻って、ドライブ感たっぷりのカッティングソロが。清清しく爽快感たっぷりで楽しい曲、最高ですね。
 3曲目は「まごたろう」。笛の力強いソロからパワフルにはじまって、ミドルテンポのタブラのリズムがはいって、ストラトの太いヘヴィなサウンドが響きますが、イメージとしては伝統的な雅楽とハードロックの融合のような感じですね。中盤には笛のアグレッシブなソロが。そしてタブラをバックにヘヴィサウンドのギターソロが。そこに笛も入ってパワフルなソロを。終盤では徐々にテンポアップして激しくエネルギッシュに盛り上がって。ラストは吹きまくりでFin。 4曲目は「たて笛乱舞之序」。笛3本吹きのメヌエットのような感じからゆったりとはじまって、そして笛のめっちゃテクニカルな早吹きソロが。その後力強い5本吹きのリフが。2分弱の序奏です。
 5曲目は「せまりくるホンホ」。ミドルテンポのブギー調のギターリフからはじまって、笛の哀愁ただようリフが力強くながれ、笛がもう1本加わってハモって。そしていきなり超テクユニゾンリフが炸裂したあと、テンポアップしてギターリフをバックに笛の哀愁ただようフレーズが。ブレイクリフから超テクユニゾン、そしてエモーショナルかつテクニカルなギターソロへ。中盤では超テクユニゾンから笛のソロへ。寂しげなフレーズを奏でたあと、早吹きのアグレッシブな感じに。終盤ではギターリフから笛の哀愁ただようフレーズがながれ、そして徐々に力強く盛り上がっていって、ラストは超テクユニゾンをキメてFin。
 6曲目は「稚児舞」。笛のカン高い力強い音色が響きわたり、そしてギターの音色がゆったりと琵琶のようなイメージでながれ、鼓や小太鼓のような音色のタブラの音も印象的に響いて。伝統的な雅楽の世界でしょうか。月夜のようなゆったりしっとりとした暗く厳かな雰囲気です。
 7曲目は「つの笛即興曲第3番」。オカリナのような響きのつの笛のしっとりと寂しげなフレーズがギターとともにながれ、そしてタブラがはいってミドルテンポでゆったりと郷愁ただようフレーズがながれて。そしてつの笛とギターのテクニカルなユニゾンと掛け合いからアップテンポになってスリリングに展開し、アグレッシブなギターソロへ。中盤ではテクニカルユニゾン&掛け合いからつの笛ソロへ。しっとりとはじまってアグレッシブに。さらにはパワフルな2本吹きも。終盤では郷愁ただようテーマフレーズに戻って、スリリングなユニゾンリフをキメてFin。
 8曲目は「乱序めじ羽」。笛の力強い音色が響き、そのままテクニカルな早吹きソロへ。そしてアップテンポのリズムがはいって、ストラトのヘヴィリフも。ノリノリでめちゃめちゃかっくいいっす。そして笛とストラトの追っかけリフが展開し、アグレッシブな吹きまくりの笛のソロへ。中盤では笛とストラトの伸びやかなリフからスリリングなユニゾンリフが。その後ノリノリのリフからヘヴィでエネルギッシュな弾きまくりギターソロへ。終盤では笛とストラトのユニゾンがゆったりとはじまって徐々にテンポアップして激しく盛り上がって。かっくいいハードロック雅楽ですね。
 9曲目は「天を駆ける風-母へ」。ギターのしっとりとしたリフから笛の抒情的な音色がゆったりとながれて。中盤ではエモーショナルな哀愁ただようソロが。とても切なく哀しく、ウルッときてしまいそうな情感こもった曲です。
 最後の曲で涙が出そうになりましたが、超絶テクたっぷりの凄まじい曲や、爽快感たっぷりのとっても楽しい曲、平安時代を思い浮かべてしまう伝統的な雅楽の世界、さらには伝統楽器とヘヴィギターのハード雅楽など、様々なタイプの曲をたっぷりと楽しませてくれ、聴き所満載の素敵なアルバム、日本をとても強く感じさせてくれますね。ぜひともライブも観に行きたいっす。