とんびの視点

まとはづれなことばかり

東京新聞より2014.1.3~1.5

2014年01月06日 | 雑文
始めてみたのはよいが、思ったより時間がかかる。そして何が目的なのかも分からなくなってくる。ただ手応えはある。こういうとき、賢ぶってやめるための合理的な理由を探してはいけない。愚かにやりつづければそのうち良い風が吹くだろう。

1月3日(金)東京新聞

1、【地位協定の不平等 神奈川で顕著 米兵ら起訴わずか5% 性犯罪すべて不起訴 08~12年】

『沖縄の次に米兵らの犯罪が多い神奈川県で、2008~12年の5年間に一般刑法犯として起訴された米軍人・軍属とその家族は、送検された122人のうち、わずか7人だった。強姦などの性犯罪では16人全員が不起訴だった。』

→僕は日米関係についてどのくらい知っているのだろうか。そこそこの量の断片情報は持っている。それらすべてをかき集めれば全体像らしいものは作れる。それらしい意見も述べられる。積極的に情報を集めていない一般人が相手なら、いろいろ知っていて、けっこう考えているように見せられる。よく考えたら、危険な状態だ。おそらくバランスを欠いている。自分の好悪が基準り前提となり、無自覚にそれに合った情報を集め、自分の意見を強化する。無自覚に意見を述べようとするとそうなる。

少なくとも、この問題を考えるには、サンフランシスコ講和条約、日米安保、地位協定、この案件に関する「密約」について調べることが必要だろう。サンフランシスコ講和条約の影響は日米関係だけではない。戦後の日本の世界的な位置づけを考える際にもきちんと抑えておかねばならないことだ。首相の靖国神社参拝に対するアメリカ、EU、ロシアの批判の理由もこの辺りを抑えていないと見えてこないらしい。また、米軍基地などの沖縄の問題も同様だ。

「誰もが、どんなことに関しても、意見らしいものが述べられる」というのが問題だと思う。「首相の靖国参拝についてどう思うか」と尋ねれば、誰もが自分の意見を述べることができる。しかし「首相の靖国参拝について意見を述べるために抑えておかねばならないことを挙げてください」と尋ねた時にどれほどの人がきちんと説明できるだろうか。


2、【家計に負担増の荒波】
『六月には東日本大震災の復興費用のために住民税が引き上げられる』

→震災からの復興のために多少の金銭的な負担をするのは仕方がない。しかし、そのお金がどのように使われているのか、詳しくは知らない。現在の日本では、そのあたりまで市民がウォッチしなければならないのかもしれない。
「税と社会保障の一体改革」から消費増税の話も始まったはずだ。日本の市民は長期的にものを見る力がないと見くびられているのかもしれない。


3、【こちら特報部 新日本原発ゼロ紀行 伊方編】
『原発に近づくと、再稼働を望む声は多くなった。……町の年間約100億円の収入のうち、電源三法交付金や固定資産税などを合わせると、原発関連で3割を占める。原発施設内の警備や飲食などで数百人の雇用があると見られる。』

→原発の問題もさまざまな要素がある。原発問題として一括りにしなければならない時と、要素の一つ一つを整理して考えねばならない場合がある。3.11後に原発問題を考える時に基本としなければならないのは、それ以前とは違った前提で問題を考えねばならないということだ。例えば、原発は安全だとは言えないこと。専門家の言葉はそれほど当てにならないということ。他人事として文句を言うのではなく、自分のこととして発現することなどだ。

この問題は原発立地の地域の問題だ。原発は必ずしも地域を活性化しないようだ。原発を誘致することで経済的には豊かになる。電源三法交付金や固定資産などが入るからだ。また原発作業員としての雇用も発生するし、定期点検に訪れる作業員向けの宿泊施設や飲食店も出来る。しかし、それは原発があることによって可能となる。原発が古くなれば回らなくなる。だから新しい原発を誘致する。(その危険性から新たに誘致を受け入れる自治体も少ないのでちょうど良い)。

だから、再稼働しないと地域経済が疲弊するというのは分かる。しかし再稼働したとしても、いつまでも原発を作り続けることは出来ない。厳しい言い方だが、再稼働を求めている地元自治体に現在、原発がなかったと仮定したらどうだろう。はたして、自分の自治体に誘致するだろうか。「しない」というのであれば、やはり再稼働もやめた方が良い。それは原発問題ではなく、地域経済の問題だからだ。期間をきめて財政的な援助をし、同時に新たな産業を育てることに力を入れた方が良い。


4、【本音のコラム 佐藤優】
『沖縄で生じている事態は、国際基準で見れば、民族問題の初期段階だ。沖縄情勢が緊迫すれば日米安保体制の基盤が揺らぐ。』

→沖縄を本土(とくに東京)から見ているだけではダメなのだろう。それらしい意見は持てるだろうが、現実に届かない言葉になるだろう。沖縄で生じていることを国際基準で見る、という視点はなかった。「何を見るか」も大切だが、「どこから見るか」はもっと大切だ。自分が無自覚にものを見ているその場所を特定する習慣を身につけること。


1月4日(土)の東京新聞

1、【未来の食卓 紙パック液卵で即席だし巻き】
『卵は壊れやすいため、割って液体にした「液卵」を冷凍させて入ってくることになりそうだ』

→これは純粋に驚いた。「液卵」か。同じ黄色のスクランブルエッグは作れるだろうが、黄身と白身が絶妙に混ざり合ったオムレツは作れないだろう。でもTPPはそういう変化をもたらすのだろう。


2、【社説 福島への想い新たに】
『ベース電源とは、二十四時間、しかも安価に稼働させられる電源です。震災前は、原発と揚水発電以外の一般水力、そして石炭火力がそうでした。……原発は出力調整が極めて難しく、一度運転を始めたら、二十四時間最大出力で、突っ走るしかありません。……政府によれば、福島の賠償と除染、さらに廃炉や汚染水対策に、少なく見積もって約二十兆円の費用がかかります。』

→原発はベース電源にふさわしいか。一つの事故で事故機以外の発電所がすべて止まるのだから不安定だろう。高レベル核廃棄物の処分も決まっていない。廃炉技術も確立されていない。ウランは石油より早く枯渇する。核燃料サイクルも夢のまた夢。原発を推進する姿勢は、原発が出力調整が難しく一度運転を始めたら突っ走るしかないのと同じだ。福島での賠償や除染の費用は、結局、私たち市民が負担することになりそうだ。もちろん原発により利益を得られる人たちもいるだろう。利益を得る人と負担する人、これを峻別しなければならない。「日本国の経済が……」などという雑駁な言葉で括ってはダメだろう。


1月5日(日)の東京新聞

【未来の食卓 余った道産乳 海峡越え流入】
『乳牛が乳を出すためには妊娠して子牛を産まねばならない。北海道の子牛の多くは本州などの酪農家に買い取られ、乳牛や肉牛用に飼育されている。谷野さんは「(北海道牛乳の流入で)競争力の弱い本州などの酪農家が廃業すると、子牛の買い手がいなくなる。本州の酪農家が消えれば北海道も倒れる」という。』

→TPPが決まっても乳製品などでは北海道は生き残れる、ということはよく見聞した。この記事によればそれも怪しい。ものごとが有機的に繋がることで一つのシステムが回っているとき、効率を求めて部分的な改造を加えると全体が壊れることがある。TPPにはそういう問題がある。堤美香著の『(株)貧困大国アメリカ』を読むと、そのあたりに繋がる怖い話を読むことが出来る。