鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

町田市立国際版画美術館・企画展「北斎と広重 きそいあう江戸の風景」について その5

2012-11-18 06:39:32 | Weblog
Ⅱは「風景版画の大成─北斎『冨嶽三十六景』と広重『東海道五拾三次』。この両作品については、今までいろいろな展覧会や本などで見ているので、時間をかけずにざっと観覧しました。興味深かったのは、広重の「真景続画 東海道五十三駅」という保永堂版東海道絵袋。作品解説によると55枚を揃いで購入すると、この絵袋に包んでくれたらしい。タイトルに「真景」とあるのが面白い。この絵袋は天保7年(1836年)以降のものですが、「真景」という言葉からは、渡辺崋山の『四州真景図』(文政8年〔1825年〕)を想起してしまいます。崋山は『毛武游記』の旅においても「真景図」を残していますが、「松岸より銚子を見る図」や「常陸波崎ヨリ銚子ヲ見ル」、また雷電山(現在の水道山公園)から桐生新町およびその周辺を写生した絵をみる時、それらはまるでパノラマ写真のようであり、広重の浮世絵風景画と比較した時、どちらがより写実的であるか(「真景」に近いか)と言えば、崋山の描く風景画の方に軍配が上がるものと思われます。浮世絵画家を含めて風景を描く画家たちが「真景」を追求したのはなぜか、またその風景画の購入者たちがなぜ「真景」を求めるようになったのか(それは大久保純一さんによると、19世紀に近づいた頃からだとのこと)、といったことをこれからも考えていきたい。さて、Ⅲは「きそいあう江戸の風景」であり、主に江戸および江戸周辺の名所を中心に、北斎や広重などの浮世絵風景画が展示されていました。 . . . 本文を読む