うてん通の可笑白草紙

江戸時代。日本語にはこんな素敵な表現が合った。知らなかった言葉や切ない思いが満載の時代小説です。

おそろし~三島屋変調百物語事始~

2012年05月06日 | 宮部みゆき
 2008年7月発行

 不幸な出来事で傷心のおちかは、叔父の袋物屋の三島屋伊兵衛に引き取られ、不幸な過去や不思議な出来事を体験した人たちの話に耳を傾ける。
 神田袋物屋三島屋の黒白の間で、明かされる不思議な話。
 物の怪や妖、霊ではなく、人の心に巣喰った悪の怖さを、これでもかと投げ掛ける。悲痛な人生が、心に染みる。
 そして、最終話を全ての総集とし、序章からの登場人物の魂が解き放たれるといった壮大なラスト。大人のホラーと言えるだろう。宮部みゆきさん、お見事です。

曼珠沙華
 大好きだった兄の吉蔵が人を殺め島流しとなった。待ちに待った赦免だったが、殺人者の家族としての月日の流れは、藤吉(藤兵衛)へ残酷な選択をさせる。

凶宅
 辰二郎一家6人は、1年暮らせば百両をやると言われ、得体の知れない屋敷に移り住む。だが、そこから生きて出られたのはおたかと言う娘の身体だけだった。魂は屋敷に捕われていたのだ。

邪恋
 幼馴染みとの縁組が纏まったおちかの目の前で、その相手の良助が刺殺された。下手人は、おちかの父親が引き取って育てた捨て子の松太郎。
 おちかの家族は松太郎を、家族同様と言いながらも都合良く奉公人として扱っていたのだった。おちかに思慕を抱きながらも己の立場を自覚していた松太郎だったが。

魔鏡
 死んだ姉の形見の鏡を、兄から持っているように渡されたお福。奥深くに仕舞い込んでいたのだが、ある時、兄の市太郎が持ち出した後に、嫂のお吉の様子ががらりと変わり。

家鳴り
 「凶宅」語りをしたおたかを引き取った、越後屋の若旦那の清太郎が、おたかの乱心を告げに訪った。前後して、川崎からはおちかの兄の喜一が、松太郎の亡霊を見たと、おちかを安じて江戸を訪ねる。
 そして、おたかと対面したおちかは、小石川の安藤坂にある曰く付きの屋敷へと踏み込むのだった。

主要登場人物
 おちか...川崎宿旅籠丸千の娘
 伊兵衛...神田三島町袋物屋三島屋の主、おちかの叔父
 お民...伊兵衛の妻
 八十助...三島屋の番頭
 おしま...三島屋の女中
 新太 三島屋の丁稚
 清太郎...堀江町草履問屋越後屋の若旦那
 おたか...錠前直し辰二郎の娘 
 喜一...川崎宿旅籠丸千の跡取り、おちかの兄

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